BtoBマーケティング戦略策定のおける効果的なフレームワークとは

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BtoBマーケティング戦略策定のおける効果的なフレームワークとは
目次

コロナ禍におけるデジタル化の加速は、多くの企業にとってビジネスの存続や成長において重要な転換点となりました。顧客の行動パターンの変化により、デジタルマーケティング戦略が顧客にリーチし、関与する上で重要な役割を果たしてきました。アフターコロナでは競争が激化し、デジタルマーケティングはブランドの知名度向上やリードジェネレーション、顧客ロイヤルティの構築に欠かせない手段となりました。アフターコロナではデータを活用したマーケティング戦略を策定することがより重要になるでしょう。
そこで本記事では、BtoBデジタルマーケティング戦略策定における、効果的なフレームワークをご紹介いたします。



マーケティングフレームワークとは?マーケティング活動におけるフレームワークの役割

「マーケティングフレームワーク」とは、マーケティング戦略を策定する際に役立つ「枠組み」です。マーケティング活動における基本的なガイドラインや考え方を提供し、戦略立案や実行の際に必要な要素を整理するための枠組みとして機能します。

マーケティングフレームワークを活用するメリット/デメリット

マーケティングフレームワークは

・情報を整理し構造化することで意思決定のプロセスを簡略化する
・予算や人材のリソースを効率的に活用できる

といったメリットがあります。
これらのメリットにより、マーケティングフレームワークは企業や組織のマーケティング活動を効果的かつ効率的に支援し、競争力の強化やビジネス目標の達成に貢献します。
しかし、同時に以下のようなデメリットもあります。

・すべての状況において適用できるわけではない
・新たなアイデアや戦略が生まれにくい

そのため、場合に応じて判断し活用することが必要です。

戦略策定のためのマーケティングフレームワークの種類

戦略策定のためのマーケティングフレームワークの種類
(TCB 営業のデジタルシフトより抜粋)

戦略策定における、各フェーズごとのフレームワークをご紹介いたします。

(1)環境分析フェーズ

①PEST分析

PEST分析は、外部環境の要因を分析するためのフレームワークです。
PESTはそれぞれ、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの要素を指します。


・政治(Politics):政治的な要因や政府の政策、法律、規制が含まれます。政府の政策が企業活動にどのような影響を及ぼすか、政治的なリスクや安定性、税制などが重要な要素として考慮されます。


・経済(Economy):経済的な要素です。経済成長率、インフレ率、失業率などの指標や景気サイクル、消費者の購買力などが分析の対象となります。


・社会(Society):社会的な要因や人々の価値観、生活様式、人口動態などが要素となります。
社会的なトレンドや市場の需要変化、消費者の好みなどを把握するのに役立ちます。


・技術(Technology):技術的な要因やイノベーション、デジタル化、産業の進化が含まれます。技術の進歩が市場や競争力に与える影響を分析することが重要です。



これらの外部環境要因を分析することで、企業や組織がビジネス戦略を立案する際に重要な情報を得ることができます。

②5F分析(ファイブフォース分析)

5F分析は、外部環境を5つの要素から分析する手法で、企業が競争環境を理解し競争力を高めるために利用されます。


・新規参入の脅威:新しい企業が市場に参入する際の障壁がどれほど高いかを評価します。市場への新規参入が容易である場合、競合他社の数が増え、競争が激化する可能性が高まります。

・買い手の交渉力:購買者(顧客)が企業に対して価格や条件をどの程度交渉できるかを分析します。購買者の交渉力が高い場合、企業は価格引き下げやサービス向上などの要求が発生しやすくなります。

・売り手の交渉力:企業が必要とする原材料や製品を供給する業者が、どの程度交渉力を持っているかを評価します。売り手の交渉力が高い場合、仕入れコストが高くなり収益が下がるリスクがあります。

・代替品の脅威:代替可能な製品やサービスが市場に現れる脅威を指します。代替品が多い場合、企業は顧客の流失や、価格競争に直面する可能性が高まります。

・業界内での競争:産業内の既存の競合他社の数や競争激化の程度を評価します。競合の激しさが高い場合、企業は市場シェアの獲得や差別化が困難になり収益性が下がるリスクがあります。
これらの要素を分析することで、企業は自社の競争環境を把握し、戦略的な意思決定を行うことができます。

③3C分析

3C分析は、顧客(Customer)、競合他社(Competitor)、自社(Company)の3つの要素を重点的に分析します。


・顧客(Customer):市場と顧客のニーズ、要求、購買行動、行動パターンなどを評価します。顧客のニーズを把握することで、市場での競争力を高めるための製品やサービスの開発やマーケティング戦略を立案することができます。


・競合他社(Competitor):競合他社の製品やサービス、戦略、市場シェア、競合優位性などを評価します。競合他社の動向を把握することで、自社の位置を把握し、差別化戦略や競争戦略を考えることができます。


・自社(Company):自社の特徴や強み、弱み、資源、能力、ビジョン・ミッション、製品やサービス、ブランドなどを評価します。自社の内部環境を把握することで、自社の競争優位性を理解し、改善点を見つけることができます。


これらを分析することにより、自社の強みと弱み、顧客のニーズと要求、競合他社との競争状況を把握し、戦略的な意思決定に役立てることができます。

④SWOT分析

SWOT分析は、自社の強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を評価するためのフレームワークです。


・強み(Strength):自社が持つ優位性や強みを評価します。これには、特許や技術的なリソース、ブランドの価値、優れた人材、優れた製品やサービス、顧客忠誠度などが含まれます。強みを把握することで、企業が自社の独自性を活かし、競合他社との差別化を図ることができます。


・弱み(Weakness):自社が持つ弱点や課題を評価します。これには、知名度の低さ、商品・サービスの低い質、競合他社と比べての不利な点などが含まれます。弱みを把握することで、改善点を見つけ、問題を解決するための対策を立案できます。


・機会(Opportunity):外部環境で自社が利用できるポジティブな要因やチャンスを評価します。これには、新しい市場の成長、技術の進歩、業界の好調な動向、競合他社の弱点、法律や規制の変化などが含まれます。機会を把握することで、新たな市場参入や拡大戦略、新製品開発などを検討することができます。


・脅威(Threat):外部環境で自社が直面するネガティブな要因や脅威を評価します。これには、競合他社の成長、経済の不安定性、技術の変化、規制の強化、顧客のニーズ変化などが含まれます。脅威を把握することで、リスクを軽減するための対策を講じることが重要です。


これらの要素を総合的に分析することで、企業は自社の競争力を高めるための戦略を立案し、成功に向けた計画を策定することができます。

(2)戦略立案

①STP分析

STP分析は、マーケティング戦略を立案する際に用いられる重要なフレームワークです。STPは、市場セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3つの要素を指します。


・セグメンテーション(Segmentation):市場をより小さなセグメント(部分市場)に細分化することを指します。類似したニーズ、要求、行動パターンを持つ顧客グループを同じセグメントに統合することで、より効果的なマーケティング戦略を立案することができます。セグメンテーションは地理的、デモグラフィック、行動的、心理的な要素などに基づいて行われます。


・ターゲティング(Targeting):セグメンテーションの結果から、最も魅力的なセグメントを選択し、そこに焦点を当てるターゲット市場を決定するプロセスです。ターゲット市場は企業の製品やサービスに最も適した顧客グループであり、そのセグメントに向けて特化したマーケティング戦略を展開します。


・ポジショニング(Positioning):ターゲット市場に対して自社の製品やサービスを差別化し、顧客の心に印象づける位置づけを行うプロセスです。ポジショニングは、自社の強みや独自性を強調することで、競合他社との差別化を図り、ターゲット市場において競争力を高めるための重要な要素です。


この分析を行うことで、企業はマーケットをより深く理解し、効果的なターゲティングとポジショニングを実現できます。マーケティング戦略をセグメントごとにカスタマイズすることで、顧客に対してより適切なメッセージを伝え、市場での競争力を向上させることができます。

(3)施策立案

①4P分析

この分析では、企業が自社の製品やサービスのマーケティング戦略を構築するために、4つの要素を重点的に評価します。これらの要素は、それぞれの頭文字を取って「4P」と呼ばれています。


・製品(Product):自社が提供する製品やサービスに焦点を当てます。製品の特徴、品質、ブランド、パッケージ、機能、価格帯などが含まれます。製品の設計や特性を顧客ニーズに適合させ、競合他社と差別化することで、市場での競争力を向上させます。


・価格(Price):製品やサービスの価格設定に焦点を当てます。価格は顧客にとって重要な要素であり、売り上げや利益に直結します。競合他社の価格や市場の需要と供給のバランスを考慮し、適切な価格戦略を立案します。


・流通(Place):販売チャネルの選定や流通戦略、販売地域の選定などを評価し、顧客に製品を効果的に届けるための戦略を策定します。


これらの4つの要素をバランスよく組み合わせ、顧客のニーズを満たす効果的なマーケティング戦略を構築することが重要です。4P分析は、マーケティング活動において広く使われる基本的なツールであり、市場環境の変化や顧客の要求に合わせて柔軟に調整されることが求められます。


・販売促進(Promotion):製品やサービスを顧客に知ってもらい、購買意欲を高めるための販売促進活動に焦点を当てます。広告、セールスプロモーション、パブリックリレーション、イベントなどの手段を活用し、製品の知名度を向上させます。

②4C分析

4C分析は、顧客視点でのマーケティングフレームワークです。この分析では、4つの要素を重点的に評価し、企業が顧客に対して効果的なマーケティング戦略を立案するのに役立ちます。これらの要素は、それぞれの頭文字を取って「4C」と呼ばれています。


・顧客価値(Customer Value):顧客のニーズ、要求、欲望を理解し、顧客が製品やサービスをどのような価値を見出すかに焦点を当てます。企業は顧客の視点に立ち、顧客が求める価値を提供することで、顧客満足度を高め、競合他社との差別化を図ります。


・価格(Cost):顧客が製品やサービスを購入するために支払うコストや努力に焦点を当てます。価格以外にも、製品を購入するための手間や時間、リスクなどが含まれます。企業は顧客のコストを最小化し、利便性を提供することで、顧客ロイヤルティを向上させます。


・利便性(Convenience):顧客にとって製品やサービスがどれだけ利便性があるかに焦点を当てます。製品のアクセスや購入プロセスの簡素化、顧客サービスの改善などを通じて、顧客の利便性を向上させます。


・コミュニケーション(Communication):企業と顧客の間のコミュニケーションに焦点を当てます。顧客との対話を強化し、顧客の意見やフィードバックを収集することで、顧客との関係を構築し、ブランドの信頼性を高めます。


4C分析は、従来の4P分析よりも顧客中心の視点を強調し、顧客のニーズに合わせたマーケティング戦略の策定をサポートします。顧客の視点を大切にし、顧客との関係を重視することで、顧客満足度の向上やブランド価値の向上につながるとされています。

③4E

D2C(Direct-to-Consumer)のビジネスモデルにおいて、商品やサービスを提供する際の4つの要素を表す4Pや4Cに代わるマーケティングフレームワークです。

・顧客体験(Experience):顧客が製品やサービスを利用する際の体験を重視します。顧客のニーズや要求を理解し、購入プロセスや製品提供の手間を最小限に抑え、顧客にとって良い体験を提供することが重要です。


・交換(Exchange):顧客との相互の価値交換に焦点を当てます。製品やサービスを提供することで顧客が得る利益と、企業が得る利益をバランスさせることが重要です。


・伝道師(Evangelism):顧客の熱狂的な支持を獲得することを目指します。顧客が自らの経験を共有し、ブランドのアンバサダーや広報活動を行うことが戦略の一部となります。


・どこでも(EveryPlace):ブランドや製品、サービスを顧客が接触できるあらゆる場所やチャネルに焦点を当てます。顧客がブランドとの接点を持つ場所を多様化し、顧客との関係を強化します。


4Eは顧客のニーズを重視したビジネスモデルの構築を促進します。これによって、ブランドの成長や市場での競争力の向上を図ることが期待されます。

本記事では、BtoBデジタルマーケティング戦略策定における、効果的なフレームワークをご紹介いたしました。
これらを活用して、営業のデジタルシフトを推進していきましょう。


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AUTHOR著者
デジタルコンサルティング事業部
マーケティングDX ゼネラルマネジャー
山田 亜矢子

変化する市場ニーズと顧客ニーズを的確に捉え、より活きた情報を展開し、マーケティングの上流から下流まで見通した戦略設計を行っている。リアル×デジタルを駆使した様々なマーケティング手法を駆使しながらCX(顧客体験価値)を向上させ、ブランド価値の向上に取り組んでいる。

山田 亜矢子
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