CASE

売上高経常利益率10%の取り組みは「平準化」がポイント

売上高経常利益率10%の取り組みは「平準化」がポイント

2023年度3月期のトヨタ自動車の経常利益が4兆5,000億円と過去最高を更新するというニュースはみなさんもご存じかと思います。半導体不足もある程度解消し、販売が好調だった事が要因の一つですが、円安の影響も大きくなっています。
そして、それに引きずられるわけではありませんが2023年度の中堅企業・中小企業の決算、また2024年度4月以降の先行業績予測を見ても好調を維持する傾向にあります。2024年度も引き続き値上げラッシュが続く傾向ですが、企業はさらに次のステップアップの取り組みを進化させることが重要になってきます。

地域ナンバー1企業の苦悩

価格アップの次の一手は?

生産・施工の平準化マネジメントの強化で収益構造は変わる

A社は業界ナンバー1の製造業であり、歴史もあります。いわゆる地域の名門企業です。A社はもともと限界利益の高い製品を扱っていたため、価格と生産・施工のマネジメントはずさんでした(利益率の高い製品だったので、マネジメントしなくても利益が確保できていた)。特に営業部門と生産・施工部門とのコミュニケーション・共有化が大きな課題で、生産・施工の標準化が全くと言って出来ていない状態でした。そのため、営業は自社内で生産・施工出来ない場合は生産・施工部と調整をすることもなく、そのまま外注先に生産・施工をお願いするという状態が常態化しており、年々、外注費がガンガン上がっていました。
この会社の一番の問題点は、自社の管理監督者が外注費が上がっていることに何の問題意識も持たずに放置していたことでした。粗利中心の考え方で限界利益での感覚が全く無かったのです。利益の水漏れ、ダダ漏れ状態だったと言えます。

赤字・低収益になる負のステップ

企業が低収益・赤字になる負のステップとして、第一ステップは商品赤字が増えます。そして、第二ステップは赤字の得意先が増えます。第三ステップとして赤字の得意先が増えることで、会社の稼ぎ人社員が減ります。そして、会社自体が赤字・低収益になるという負のステップを辿ります。A社はここ数年は、営業部門を中心に価格統制に着手して、値決めのマネジメントは徹底用できるようになり、収益性(売上高経常利益率)は一気に5ポイント以上、改善されました。
そして、次の課題は生産・施工部門の平準化です。これには営業部と生産・施工部の協業が必要になってきますが、現状は営業部は生産・施工部の先行生産計画には無頓着で、生産・施工部は生産・施工部で営業部の見込み状況には無関心という、まさに部分最適の状態が続いていました。そこを改善するには部門を超えたコミュニケーションが必要になります。

生産・施工の平準化の重要性を理解しているか?なんのためにやるのか?

営業部がここ数年、価格統制を強化をして、値上げをしても、その利益を社内でしっかりと確保する取り組みができていないのでは、元も子もありません。しかも、生産・施工部の管理監督者がその重要性を理解していない状態だったので、外注費が上がり放題で、結果、生産・施工現場はムダ・ムリ・ムラの状態でした。
そして、生産・施工の繁閑格差にも大きな問題がありました。繁忙期は全く休みがない状態で、休日出勤・残業、残業で社員は疲弊し、ミス・ロスも多発の状態。かたや、閑散期は仕事が全くなく、開店休業状態でした。
また、営業部は社内の生産・施工状態には無関心で、自社の状態を見ずに納期を決める、社内で出来ない場合は外注を使って納品するのが当たり前となっていました(そもそも製造業なのに、自社で生産・施工する気があるのか?と言うレベル)。

「戦略と実行」にはコミュニケーションが必須

A社では戦略ディスカッションを営業部・生産・施工部の管理監督者を集めて実施し、まずはなぜ?限界利益が大事なのか?をしっかりと理解してもらい、目的はなにか?何のために取り組むか?を全員で共通認識しました。
そして、問題は大きく3つ。まずは生産・施工の平準化(繁閑格差の解消)、そして外注費削減、在庫削減の取り組みを実施しました。
生産・施工の見える化の推進、特に営業部メンバーにも分かるように見える化を進めました。そして、営業部は外注先活用のルール化と部門横断のコミュニケーションから社内生産・施工を推進し、利益の水漏れを無くしました。
営業部の取り組みで生産・施工の平準化では、営業担当者が生産・施工の見える化で生産・施工の時期を狙ってずらすことができ、外注費削減と生産・施工の平準化(繁閑格差の解消)が大きく前進したのです。 
目的はなにか?何のためにやるのか?が共通認識されて、取り組みが明確になると社員から自発的に動き、自発的に提案するようになりました。
A社は上記3つの取り組みを更にブラッシュアップをさせて、さらに売上高経常利益率15%以上を目指す取り組みを実施しています。
まだまだ、ムダ・ムラ・ムリがある分、伸び代も大きいですが、この取り組みを進化させて、さらなる高収益企業を目指しています。

担当コンサルタント

会社プロフィール

業種 コンクリート二次製品製造業
所在地 東京都
売上高 450億
従業員数 1,200名

タナベコンサルティングのコーポレートファイナンス支援コンサルティングサービス

  • 経営安定化と持続的成長に向けた資本集約を実践したB社の実例

    経営安定化と持続的成長に向けた資本集約を実践したB社の実例

  • ホールディングス化による企業成長を目指し財務研修を実施したA社の事例

    ホールディングス化による企業成長を目指し財務研修を実施したA社の事例

  • ビジョン・中期経営計画達成のための財務研修

    ビジョン・中期経営計画達成のための財務研修

  • トップマネジメントが管理会計の再構築を行ったB社の事例

    トップマネジメントが管理会計の再構築を行ったB社の事例

  • 経営人材の実践的財務研修で成果を上げるA社の事例

    経営人材の実践的財務研修で成果を上げるA社の事例

  • 製造業B社の事業承継事例 ~カリスマ経営と後継者不在からの課題と解決の道~

    製造業B社の事業承継事例 ~カリスマ経営と後継者不在からの課題と解決の道~

  • 自律分権型の組織を実現するための経営システム

    自律分権型の組織を実現するための経営システム

WEBINAR

ウェビナー一覧はこちら

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業
200業種
17,000社以上