人事コラム
人材育成

人材育成の5つの課題とは~課題解決に向けて取り組むべきポイント~

効果的な人材育成を行うためには、課題を明確にすることが重要です

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効果的な人材育成を行うためには、課題を明確にすることが重要です

企業が抱えている"人材育成の課題"5選

人材育成は企業の持続的発展に欠かせない取り組みであり、多くの企業が課題を抱えています。良かれと思って取り組んでいる人材育成手法も、課題を放置することで生産性や社員のモチベーション低下、離職の増加など、深刻な問題につながりかねません。顕在化している課題は早急に改善が必要であり、潜在的な課題についても意識することが重要です。
他社では、人材育成においてどのような課題を抱いているのでしょうか。
タナベコンサルティングで行った「人材採用・育成・制度に関する企業アンケート調査(調査期間:2022年8月17日~2022年8月31日)」によると、「人材育成上の課題」に関して下記5つの課題を持つ企業が多いことが明らかになりました。

企業が抱えている
【人材育成上の課題に関してお聞かせください】
1.教育計画の見直し・・・・・・54.3%(8.4%増)
2.自発的に学ぶ風土づくり・・・53.8%(7.6%増)
3.OJTのレベルアップ・・・・・46.2%(5.1%増)
4.教育の効果測定・・・・・・・29.4%(3.8%増)
5.外部研修の見直し・・・・・・24.4%(4.4%増)
※()内は2021年調査時からの増加ポイントを示しています。

上記の項目に対し、それぞれ課題となっている背景や解決策について解説していきます。

各課題の要因と解決に向けたポイント

各課題の要因と解決に向けたポイント

1.教育計画の見直し
教育計画の見直しは回答した企業が54.9%と最も多く、2021年と比較しても8.4%増加しています。背景としては、戦略人事といった経営戦略を起点とした人材育成が求められるようになったことや、リスキリング(学びなおし)やアップスキリング(専門性の強化)が注目されていることから、教育計画の見直しに着手しようとする企業が増えてきていることがうかがえます。
目的が不明確で不定期・単発に研修が行われている場合、教育効果が薄いだけではなく受講者の負担に繋がり、社員の不信感や反発を買うケースも少なくありません。
教育制度を適正に運用し効果的な人材育成を行っていくためには、「この研修は何のために行うのか」、「身に着けたスキルやマインドを職場でどのように活かしてもらいたいのか」を明確にし、社員の長期的な成長ステップと年間の研修スケジュールを策定することが重要です。

 

2.自発的に学ぶ風土づくり
いくら質の高い教育機会を与えても、受ける側に成長意欲がなければ期待効果も高まりません。しかしながら現場から「業務が忙しくて研修に参加している時間がない」「現状維持で良いので研修には参加したくない」といった声が挙がり、研修への参加率に悩んでいる企業が多いのが事実です。このような課題に対し、「社員(部下)自身の問題だ」と諦めたり放置したりしていないでしょうか?
自発的に学ぶ風土づくりも、「仕組み」と「環境」づくりが重要です。企業が示す「あるべき姿」に対し、社員が目指したいと思えるようなキャリアビジョンの魅せ方や努力を適正に評価し報いていくための制度構築、また研修で学んだ知識・スキルを職場で活かすためのフォロー体制や自身の希望や悩みを打ち明けられることができる環境整備等、企業と社員における相互の信頼関係を築くことが、自発的に学ぶ風土づくりに欠かせない要素となります。

 

3.OJTのレベルアップ
若手社員の育成においてOJT(新人や未経験者に対し、先輩社員が実務を体験させながら現場で仕事を覚えてもらう教育手法)は必要不可欠であり、多くの企業が取り組んでいます。しかし、Off-JTと比較し教育者のレベルにバラつきがあることや、個人の保有スキルや習熟度に合わせた育成が必要であることから、課題に感じている企業が多いことがうかがえます。
OJTのレベルアップを実現するためには、現場任せにせず、企業(人事部)として体制を整備することが重要です。例えば、新人に対して何を教えるのか、また新人は何を身に着けるべきなのか、全体像を明確にした「スキルマップ」の作成や、指導方法や指導の内容・タイミングなどを職場と目線合わせするための「OJT担当者研修」を開催することで、OJTの質を高め一体感を持って推進することが可能となります。

 

4.教育の効果測定
教育の効果測定とは、教育の効果を可視化することであり、有名なモデルとして「ドナルド・カークパトリックのレベル4」の考え方があります。この中では、可視化のレベルを下記の通りに定めています。

 

レベル1:満足度の可視化(研修アンケートの実施)
レベル2:理解度の可視化(理解度確認テストの実施)
レベル3:実践度の可視化(職場での行動変化の度合いを測定)
レベル4:業績貢献度の可視化(業績指標に対する総合的な評価)

 

ここでのポイントは「レベル3:実践度の可視化」です。多くの企業がレベル1、レベル2に留まっており、社員の行動変化までを確認できている企業はわずかだといえます。
実践度(行動変化)測る手法は教育内容や職場環境によって様々ですが、具体例を挙げるとすると「行動計画の策定と定期的なレポーティング」があります。研修後、身に着けた知識やスキルをどのように職場で活かしていくのかをスケジューリングし、その計画に沿った行動が取れているかを定期的(週1回や月1回)に上司へ報告(加えて上司からフィードバック)するといった手法です。ここで重要なのは、研修で学んだことが職場で「共有」し、意識した行動を「継続」することにあります。これによって、研修をインプットのみで終わらせず、職場でアウトプット且つ成果の確認とフィードバックを行うことが可能となります。

 

5.外部研修の見直し
外部研修の活用は、専門性の高い講師から質の高い教育を受けられることや、他社社員との交流で新たな気付きを得ることができる等、教育制度を考える上で必要な選択肢だといえます。ただし、これも教育の目的が明確でなければ、「研修を受けただけ」に留まりかねません。教育計画の見直しと合わせて、外部研修の内容も適切なものを選択できるよう、常に情報収集を行うことが重要です。
また昨今では、社員の学ぶ意欲を尊重し、社員自身に「参加したい外部研修を選択させる仕組み(自己啓発制度)」を導入する企業も増えています。企業側の身に着けてもらいたい知識・スキルが学べる研修に加え、社員自身が興味を持ち、目指す人材へと成長できるような外部研修を提供することにより、社員の学習意欲向上を促すだけでなく、定着率向上の実現に期待ができます。

以上5つの切り口より自社の人材育成と向き合う機会を確保してください。

この課題を解決したコンサルタント

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タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
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