人事課題解決ノウハウ

企業内大学導入・運営成功事例 株式会社日本化学工業所「キャリアアップシステム」

本コラムは、人事系専門誌 「月刊人事マネジメント」2023年4月号に寄稿した内容です。

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変革に備えた人事・組織戦略へ

変革に備えた人事・組織戦略へ

今回は、コロナショック直前、世の中が大きく変わることを想定し、人事・組織戦略の策定・推進のプライオリティを引き上げ、人事評価・賃金制度、関連諸制度の改定から人財育成制度の構築まで一気呵成に取り組み、社内外ともに効果を上げている和歌山県の㈱日本化学工業所の事例を紹介します。
同社は1920年に創業した100年企業であり、合成染料や機能性化学品など光と色の技術を応用した製品を開発・製造・販売する研究開発型メーカーです。高い収益構造とそれに裏打ちされた安定した財務状態で100年以上事業を続けてこられ、さらに次の100年に向けて新たな市場・製品の開発を通した業績の維持・向上を目指しています。同社が人事戦略の推進を掲げたのには大きく2つの理由がありました。

●16年前に構築した人事制度を運用し続けており、これからの新たな時代環境に合わせた求める人材像や知識・技能に加えて、教育体系のリニューアルができておらず、必要な人材が育っていない点
●安定した収益構造ではあるが、近年徐々に利益率が悪化しているにもかかわらず、それに危機感を覚えないゆでガエル状態であった点

この大きな2点に早急に対処しなければ大変革の時代に適応できなくなるという強い危機感から、まずは人材面の強化に乗り出し、人事・組織戦略を推進したのです。

人事評価・賃金制度の抜本的リニューアル

人事評価・賃金制度の抜本的リニューアル

2020年初めより新たな時代を見据えた人事制度改定に着手。複雑になっていた評価制度を、理解しやすく正しく運用されることを重視し、シンプルな設計へと改定しました。その際、役割要件と評価基準ならびに組織の要となる課長職の任命基準の明確化にこだわりました。課長の任命基準では、能力基準に重点を置き、その6割以上の獲得を条 件としました。加えて、管理職研修の受講と課長として組織貢献する内容のレポート作成を経て任命するよう厳格な基準を設けました。 また、役割要件と評価基準を明確化したことにより、求める人材像が社員の目指すべき姿として認識され、さらに評価結果を包み隠さずフィードバックすることにより自身の成長に向けたギャップ(不足感)を明確にしました。

新たな人事制度が人財育成の共通の価値基準へ

新たな人事制度が人財育成の共通の価値基準へ

同社の田中社長が新たな人事制度に込めた想いを一部抜粋します(図表1 )。
ここで謳われているように、企業の発展の成否は人財の育成と活躍であると考えられたからこそ、人事制度の刷新に続き、人財育成制度の構築に取り組まれました。
その際、人事制度に定められている各種基準をベースとし、求める仕事力・組織力に対してどのような研修が必要なのか洗い出し、階層別研修体系(図表2)ならびに社内研修体系(図表3 )を整理しました。社内研修では専門知識から、ビジネススキルまで、職種別に専門スキルを有した上司・先輩社員が講師を担い、社内で必要となる幅広いスキルを社員自身が教え・学び合うアカデミーとして、新入社員の早期活躍を後押ししています。なお、この研修カリキュラムは縦軸の「階層別」と横軸の「部門・部署別」で構成され、実務にて経験(高さ)を積み上げ、縦×横×高さの方程式で仕事力・組織力の向上を目指したものになっています。
また、係長・係長補佐を対象にしたリーダーステージ研修では、研修の冒頭に人事制度における役割要件や評価基準を再度説明、認識を統一し、研修に臨むマインドセットを行うなど、人事制度が育成における価値基準として運用されるよう工夫を施しています。

階層別研修体系 社内研修体系
人財育成制度の構築・運用ポイント

人財育成制度の構築・運用ポイント

また、これらの人財育成制度の構築・運用に際し、もう1点見習うべきポイントは「HR向上委員会」の立ち上げです。社員代表として各部門から1 人ずつ選出され、自社の人財育成について議論・検討・企画・予算執行までを行うプロジェクトチームです。社員主体とすることで、より現場に近い育成課題と向き合い、当事者目線で人財育成に取り組むことができます。これにより、教える側も学ぶ側も主体的な意識・姿勢を持つことができています。実際に、「研修を受けられて良かった」や「こういったテーマを受けたい」という声も挙がってきており、取り組みの推進を後押ししています。

求職者の増加へ

求職者の増加へ

対外的な効果として求職者が増えている点も良い点として挙げられます。人財育成制度が構築されたのち、コーポレートサイトならびに採用サイトの全面改修を行い、特に採用サイトへ人事制度や人財育成制度の内容を掲載しました。その結果、サイトが充実し求職者が増えたともいえます。今後は対面での採用活動でも上記ポイントをしっかりとPRし、意欲ある学生を獲得していけるよう継続的な改善に取り組む予定です。

この課題を解決したコンサルタント

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タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
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