人事課題解決ノウハウ

企業内大学導入・運営成功事例 株式会社共進ペイパー&パッケージ「Kyoshin Academy」

本コラムは、人事系専門誌 「月刊人事マネジメント」2023年1月号に寄稿した内容です。

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理念に基づくミッション・ビジョン・バリューを再定義し、人材育成を通じて浸透させる

理念に基づくミッション・ビジョン・バリューを再定義し、人材育成を通じて浸透させる

アカデミー(企業内大学)とは、理念・ビジョンを体現し成果を出す人材を輩出する育成システムです。具体的には、階層別・職種別・テーマ・経営課題別に必要とする知識・スキルを体系的かつ計画的に習得する仕組みです。これまでにタナベコンサルティングでは全国約150社のあらゆる業種・業態の企業において、その会社の特有の課題(理念浸透、技術承継、学び教え合う企業風土、人材の即戦力化、後継者育成など)や事業・人事戦略に沿ったアカデミーの設立を支援してまいりました。今回は事業承継期における後継経営者が挑まれた、企業理念に基づき、時代環境に合わせてミッション・ビジョン・バリュー(以下、MVV)を定義し、人材育成を通じて浸透させることを目的としたアカデミー設立の事例をご紹介いたします。

MVVの浸透と人材作り「Kyoshin Academy」

MVVの浸透と人材作り「Kyoshin Academy」

㈱共進ペイパー&パッケージの創業は1948年7月、印刷・紙器、段ボールを中心とし、「紙」にまつわるすべてのことをサービスと捉え事業を展開しています。また、直近ではWebでオリジナルパッケージを好きな数量・形状・サイズで発注できる「ハコプレ事業」を立ち上げ、今日に至るまで確実に成長を成し遂げています。
しかし、同社の挑戦はこれにとどまりません。永続的な発展を実現させるために、「売上高100億円・100周年」を掲げ、自律的組織構築に向けたリブランディングを図っています。その一番の経営課題は、事業承継とも重なる社訓(経営理念)の浸透でした。そこでまず取り組んだのは、社訓(経営理念)に基づき、今の時代に合わせて、かつ従業員にも分かりやすく伝わるようMVVを定義することでした。そして、これを浸透させるとともに体現する人材作りへと舵を切っていきました。

「立派な人」と戦略的思考、学び合い・教え合う仕組み

アカデミーの設立コンセプトは、鍛治川社長(当時副社長)の強い想いと長年構想し続けた育成プランにより明確でした。それは、社訓や定義化されたバリューで謳っている「立派な人」を育成すること。「立派な人」とは、具体的に「1.難局にあたり、率先垂範して事に当たる人/ 2.他人(ひと)のために努力する人/ 3.知性・徳性向上のため努力する人」を指し、同社で働くうえでの基本姿勢としています。しかし、「立派な人」といわれても、特に新入社員・若手にとってはイメージしにくいだろうと考え、誰もが自身のキャリアを思い描きやすいように年代ごとになってほしい姿をかみ砕いて言語化し、社員に目指してほしい「成長ステップ」を確立しました。

目指す人材像と成長ステップ

カリキュラムの設計では、成長ステップを実現するために「バリューアップスキル」「リーダーシップスキル」「ヒューマンスキル」「マネジメントスキル」を磨くコンテンツを幅広く揃えました。誰もが自分の必要とするスキル、または興味のある分野を自由に学習できるように環境を整備。なかでも、企業活動を理解・考察し、成功へのプロセスを描き伝える力、いわゆる「戦略的思考」を伸ばすことが最も重要であると示しました。そのために特に重要視された科目が「基本的な会計力」と「ロジカルシンキング」です(図表2 )。「戦略的思考」の必要性を社員が腹落ちできるよう具体的に説明し、そのうえでWebコンテンツや社外セミナーを活用して、「学びたい」を100%サポートできる体制を整えました。一方で、社内独自で必要とされるスキルは、社内の人材が講師を務め、若手や新人の社員に知識・スキルを伝授しています。自身の知見や経験を整理し、動画に残すことで、若手や新人はいつでも何度でも学ぶことができ、OJTの質と効率が大幅にアップしました。また、教えられる側のみではなく、教える側にとっても分かりやすく丁寧なコンテンツ作りが求められ、「自身の知識を体系的に整理でき、成長の機会になった」との声が挙がっています。この「学び合い、教え合う」仕組みこそが、人材力の底上げと「立派な人」の輩出に寄与しているといえるでしょう。

教育コンセプトと重要視する科目

「学ぶことは楽しくないと継続しない」という考えに基づき、Kyoshin Academyでは自ら「学びたい」と思わせる仕掛けを設けています。前述の社内講師制度もその1 つであり、自分の知っている先輩社員がどのような経験を語ってくれるのか楽しみながら視聴できます。また、特に注力しているのは、Kyoshin Academyのインナーブランディングです。人材育成は多くの会社で熱心に取り組まれていますが、社員の共感がなければ研修の運用も難しいのが実態です。そこで、 同社ではKyoshin Academyの設立目的や内容をガイドブックに取りまとめ、まずは全社員に必要性を理解してもらうことから始めました。このような動機づけと併せ、「自分の労働力の3%を自らの能力向上の時間に費やす」というルールを設け、「学ばなければならない」仕組みを構築しました。これらの取り組みにより、社員の「学習習慣」を着実に定着させています。さらに、社長自らが、「学ぶ」ことによって、何が見えてくるのかを社員に発信し続けることも重要です。

Kyoshin Academyによって学ぶことの楽しさを見出し、さらに成長意欲を掻き立てています。Kyoshin Academyは社員同士で競い合い、楽しく、速く成長していくための学び舎として、これからも進化を続けていきます。

この課題を解決したコンサルタント

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