人事課題解決ノウハウ

未来を創る次世代人材の育成をいかに仕組み化するか

企業の持続的成長を実現するサクセッションプラン(後継者育成計画)の構築ポイント

SCROLL

サクセッションプランを経営の最重要課題と位置付ける

サクセッションプランのトレンドと必要性

サクセッションプランのトレンドと必要性

仕事に対する価値観の変化や人材の多様性の高まりを背景とし、人材は資源(Resource)ではなく、資本(Capital)という考え方が定着化しつつあり、全ての企業が人材価値を高めるための投資を積極的に行う転換期にある。
そのような背景において、幹部人材やマネジメント層の中から次世代を担うリーダー人材を役員候補として育成・選抜・登用していく仕組みを「サクセッションプラン」(後継経営者育成)という。企業が10年・50年・100年と持続的に成長・発展していくためには、企業の未来を作る次期経営トップや役員を長期的な視点から計画的に人材育成していくことが必要となる。
ただし、多くの企業では次期経営トップは現社長が決めるという暗黙知が一般的であり、選解任の基準も不透明な場合が多い。またガバナンス機能を強化する上で、サクセッションプランの必要性についてそもそも認知できていない企業も多いのが現実ではないだろうか。つまり、次世代の経営体制に対する意思決定は現社長に全権が委ねられており、専権事項とみなされている。こうした背景を踏まえて、上場企業に対してはコーポレートガバナンス・コード(以下CGC)による社会的要請が強まってきた。

CGCに見るサクセッションプランの押さえるべきポイント

CGCに見るサクセッションプランの押さえるべきポイント

サクセッションプランにおいて押さえるべきポイントは以下の3点である。コーポレートガバナンス・コードで示されている補充原則から一部ポイントを絞って整理する。

 

【押さえるべき3つのポイント】
①取締役会が主導して、最高経営責任者等の後継者計画(プランニング)を設計・実行すること(補充原則4-1③を加筆)
②取締役会は、経営陣の選任や解任について、明確な評価に基づいた公正かつ透明性あるプロセスを踏むこと(補充原則4-3①を加筆)
③経営陣の指名・報酬などの重要事項について社外取締役から適切な関与・助言が得られる組織編成をすること(補充原則4-10①)

 

この原則は上場企業に適用されるが、持続的な成長・発展を願う全企業で押さえなければならないポイントであるといえるだろう。サクセッションプランは、客観性ある評価基準に則り、公正・透明な選解任プロセスを経て、設計・実行することが求められる。つまり、単なる人材育成システムではなく、「未来の企業を創る経営システム」として運用していくことが、10年・50年・100年先の企業発展の礎となるのである。

サクセッションプランの策定方法

サクセッションプランの策定方法

サクセッションプランを始動させていく上では制度設計~運用ルールの明確化~候補者の人選~育成計画の立案を一気通貫の流れで実施していく必要がある。ここではサクセッションプランを推進する上での3つの検討事項について触れたい。具体的には以下の3点を明確にしていく。

 

施策1) 求める人物要件(役員像)の明確化
施策2) 候補者選定基準の明確化
候補3) 人材育成計画の明確化

 

まず1点目は、「求める人物要件(役員像)の明確化」である。自社の未来を担うに相応しい役員像を明文化し、候補者の人選や選解任を判断する際の拠り所を定義する必要がある。その際には、「自社の理念・ビジョン×中長期での事業の方向性」の二軸で検討するのが望ましい。現在の経営環境やトレンドではなく、将来を見据えた上での議論と基準づくりが求められる。


次に、「候補者選定基準の明確化」である。サクセッションプランは次世代の経営を担う人材を選抜・育成するプロセスである。そのため、ある一定水準をクリアした者のみが候補者となりえる基準づくりが必要となる。具体的には、人事評価のみならず、外部のアセスメントの受講や360°評価による多面的な評価などを組み合わせることが望ましい。また、基準づくりの際には、社外取締役などの外部アドバイザーの知見を取り込むことで、客観性を担保することも検討したい。


最後に、「人材育成計画の明確化」である。以下に基準・ルールが明確であっても、当事者のスキル・経験が追い付いていなければサクセッションプランの成功はあり得ない。つまり、いかに長期的な視野に立って計画的に育成プランを立案・実施できるかが重要である。育成計画は、「経営力を問う社内外研修」、「経営に近しいポジションへの戦略配置」、「経営判断を求められるプロジェクトの推進」を軸に組み立てていく。

さいごに

ここまで、サクセッションプランのポイントと具体的な作り方を述べてきた。注目が集まったきっかけは、各社がコーポレートガバナンス・コードへの対応に迫られていることは間違いないであろう。加えて、更に掘り下げていくのであれば、全ての企業が持続的な発展を心から願っており、サクセッションプランがその実現を手助けする施策であることを肌感覚として感じとっていることも押さえていただきたい。
長期的な自社の成長・発展を見据え、次世代をいかに計画的かつ戦略的に育成し、バトンを渡していくかという価値観を持って仕組み構築・制度運用を実行いただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 66
  • 200 業種
  • 17,000 社以上