「バリューチェーンから自社の強みを捉える」+「スキルマップの多様化」で、収益力とエンゲージメントを高める
「自社の本当の強み」を人事評価に連結させる
「自社が顧客から選ばれる理由は何か?」、「選ばれるために何が必要か?」この問いに回答を出すことが実務レベルを上げ、収益力を上げる人事評価制度にする第一歩である。
まずは、自社のバリューチェーン(付加価値を生み出す工程)の中で、強みはどこにあるか検討いただきたい。
製造業であれば、購買→製造→物流→販売→サービスの流れが一般的である。
製品力が高く費用対効果に優れている、アフターサービスが評価される、納品までのリードタイムが短い、営業社員のきめ細やかなフォロー等、工程上には様々なポイントがある。
この強みを誰もができるように再現性を持たせることが重要であり、具体的には行動レベルで評価項目に落として込んでいくことが大切である。
行動レベルの評価項目に落とし込むとは?
「自社の本当の強み」を押さえることができたら、行動レベルで評価項目に落とし込むことが次のステップだ。例えば、営業社員のきめ細かいフォローを強みとする。
行動レベルとは、何をしたら「きめ細かいフォロー」になるのか、誰が見ても分かる、即実践できる分かりやすい項目にしていくことである。
検討の際は、モデル人材を社内で探すことがポイントだ。
その人がなぜ良い成果を出せるのか、どんなプロセスを経ているのかを検討する。
ここではコンピテンシー(行動特性)、スキル(持っている能力)の軸で書き出すことで明確になるだろう。
モデル人材がいない場合は、このステップで決めていくことが必要となる強みを発揮するため、どんなプロセスを経る必要があるのか、どんな能力が必要かを明らかにし、具体化することで人事評価シート(考課表)はオリジナル性を持ったものになるだろう。
このオリジナル性が「人」の強みに繋がる(差別化である)。
「対話」により本人のやりたいこととの方向性を合わせる
製造業の多くで、スキルマップが作成されているが、まずは現在の企業レベルとして機能しているかどうかを見直していただきたい。意外ではあるが、過去数十年も更新がされていない企業を目にしてきた。まずは「更新」である。
次に重要なことは、社員との対話だ。離職率を低減させ、前向きに働く上での指標として、エンゲージメントがある。エンゲージとは直訳すると「婚約や誓約や約束」を指す。注目すべきは「2者間で行われる行為である」点だ。企業的に言えば、会社の考え方を一方的に押し付けることはこのエンゲージメントを下げることになる。これが「やりたいことができない」等の文言に代わり、やりがい喪失や離職を促すことに繋がる(婚約で言えば性格の不一致)。ぜひ対話をしていただきたい。具体的には本人が望むスキル習得、キャリアビジョンを聞くことである。それに合わせ会社としてできる限りの機会を提供し、お互いに目標として一致させることが必要である。この一致した目標に向け、評価をしていく。目標を一致させる上で、スキルマップと評価シート(考課表)を活用いただきたい。MBO(目標管理制度:簡易的に言えば、目標を会社と本人が合意したうえで決めること)の制度があればなお良い。
一方で、社員の声を聞くばかりでないかという意見もあるだろう。だからこそ、人事評価シート(考課表)、スキルマップの更新をして頂きたい。これらは会社としてやってほしいことの裏返しであるため、このすり合わせ、対話が納得感ある人事制度に繋がっていくのである。
この課題を解決したコンサルタント
タナベコンサルティング
HRコンサルティング事業部
チーフマネジャー大木 悠佑
新入社員から経営幹部まで、階層別セミナーの企画・運営を数多く手掛ける。製造業・建設業・運送業・サービス業等、様々な業界の人事制度の再構築支援、社内教育制度構築にも携わり、HR領域におけるコンサルティングを中心に多くの企業の人材活躍・人材育成に貢献している。
- 主な実績
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- 製造業における中期経営計画策定とそれに基づく全社ブランドコンセプトの策定
- 中堅卸売業における中期経営計画策定と推進マネジメント
- サービス業におけるビジョン、年度方針策定
- 不動産業における新ビジネスモデル構築
- 飲食業における店舗マネジメント(業績、人材管理)
- サービス業のSDGs戦略構築
- 中堅人材派遣業、建設業、運送・物流業、製造業の人事制度構築、再構築支援
- 建設業における社内大学制度構築
- 中堅土木会社の階層別教育(新卒、2年次、3年次、新任課長研修)
- 製造業、卸売業における幹部・若手教育
- 上場会社におけるジュニアボード