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人事課題解決ノウハウ

建設業における人事制度の実践事例

建設業の人事制度コンサルティング事例を踏まえた制度構築ポイント

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建設業における自社の未来を支える人材を育成する人事制度の構築

建設業における働き方の現状と課題

建設業における働き方の現状と課題

我々の生活を支える非常に重要な機能を果たしている建設業では、現在人材にかかわる様々な課題が渦巻いている。
高齢者の増加・若手層(20代~30代)の労働力人口の減少に伴う人材不足や、労働環境の過酷さによる若手層の定着率の低さ、2024年4月に控えた「働き方改革関連法」の適用に向けた働き方改革の実施などが主な課題としてあげられる。
上記課題を解決すべく、人事制度の再構築を検討することは現段階で急務となっており、対応を行う企業は増加している。
ただ、建設業といっても、住宅のリフォームから高層ビルなどの巨体建築物、鉄道や高速道路、神社の建設に至るまで、多種多様な業態が存在する。また、規模としても個人事業主から大手ゼネコンまで様々である。再構築にあたり大切となるのは、各企業の業態や規模・特徴を踏まえた制度に落とし込んでいくことである。

建設業の人事制度再構築ポイント

建設業の人事制度再構築ポイント

建設業の人事制度再構築のポイントとして、人事フレーム(等級制度)、評価制度、賃金制度に分けてご紹介する。

1.人事フレーム(等級制度)

ポイントは「社員が自らのキャリアを自社の中で描き、自身にあったキャリアパスを選択できる」ことである。
建設業において、"職人"気質な人材とは必要不可欠であり、そのような人材が今後の世代に技術を伝えていくことが求められる。ただ、建設業におけるキャリアは"マネジメント職"になることを目的とした単線型人事フレームになっている場合が多い。もしくは、"職人"用の人事フレームは設けられていても、マネジメントができない人材や、勤続年数が長いという理由で昇格した人材が当てはまるような、本来の目的とはズレた意味合いでの運用となっていることが多い。
そのため、建設業にとって貴重な人材である"職人"が、自らのキャリアをわが社の中で描け、また、今後の自社を担う若手人材も、自身のキャリアに合わせた選択が可能なものとすることが重要である。

2.評価制度

ポイントは「自社の考えや価値観を評価に落とし込むこと」である。
ここでは特に、自社の業態や規模、または自社内での事業部に応じて設計することが重要である。逆に言えば、自社の考えや価値観、社員に求めることというのは、業態や規模に応じて異なることが多い。「会社として何を目指していくのか」や、「人材に何を求めているのか」などを適格に判断し、それを評価に落とし込むことが必要である。

3.賃金制度

ポイントは「どのような人材にどのくらい分配したいかを明確化する」ことである。
日本の建設業において多くみられるのは、年功序列型の賃金制度である。現在、年功序列型から成果型に変更している企業が多いが、一概にその考え方を変えるべきという訳ではない。大切なのは、自社にとってどのような人材に分配したいかを定めることである。
建設業においては知識や技術を獲得するためには、ある程度の経験と年数が必要となってくる。また、人材の流動の多い建設業において、自社で長い年数働いてくれる人材に分配したい場合は、年功序列型で設計することも有効的である。一方で、年数にかかわらず頑張った人材に報いたい場合は、成果型の設計にすることがよいと考えられる。
上記の方法を階層や事業部、職種に応じて組み合わせて設計することも可能であり、最も大切になるのは、どのような人材にどのくらい分配するか、をまずは定めることである。

建設業における人事制度の導入事例~導入の経緯~

建設業における人事制度の導入事例~導入の経緯~

今回はある建設業の事例(課題)を紹介する。
この会社では下記のような課題から、人事制度再構築を行った。この課題はこの事例のみならず、他の建設業においても当てはまる内容である。

1.全社の考え方の浸透

現場の社員は目の前の仕事に追われているために、会社としての考え方や方針が現場に浸透していなかった。また、部門ごとに専門性が異なるためにセクショナリズムが生まれており、全社としてのシナジーや協力する風土が育まれていなかった。

2.人事フレーム(等級制度)

単線型人事フレームで、原則すべての社員がマネジメント職(管理職)を目指すことになるため、キャリアとしての選択肢は一本であった。マネジメント人材が育ちやすい反面、スペシャリストとしての資質の高い方のポテンシャルが埋もれてしまっていた。

3.評価制度

目標管理制度を導入しており、期初の目標設定、期中の中間レビュー、期末のフィードバックを行っていた。しかし、上位概念(会社目標や部門目標)から個人目標につながりを持って目標設定しているわけではなく、個人のスキルや資格の観点から目標設定していたために、下記のような課題が存在した。
・個人の目標を達成しても、組織の目標とは全く関係のない成果になってしまう。
・目標設定の際の基準がなく不明のため、自身にあった目標設定ができていない。
・考課者のフィードバックにばらつきがあるために、被考課者の納得性が低い。
(ここでいうフィードバックは、目標設定時のアドバイスや中間レビュー・期末のフィードバックすべてを含む。)

4.賃金制度

年功序列型の賃金制度となっており、若い人材は給与が低く、年齢が高くならなければ賃金が上がらない設計となっていた。特に若手人材の賃金が安く、また、30代・40代前半の人材など働き手として力を発揮する人材も昇格・昇給できない設計となっていた。また、年齢給の要素を基本給に入れており、若い人材は「頑張ったところで意味がない」という雰囲気が蔓延してしまっていた。

建設業における人事制度の導入事例~構築のポイント~

建設業における人事制度の導入事例~構築のポイント~

1.全社の考え方の浸透

会社の理念や方針と人事制度を結び付け、会社の向かう方向を目指して行動した人材が報われる制度とした。
つまり、会社方針から人事制度ポリシー(考え方)を設定し、その人事制度ポリシーに沿って人事フレーム・評価制度(評価項目)・賃金制度を設計した。そのため、自身の役割や評価項目を目指して行動すれば、最終的には会社の方針に向かって行動しているような設計となっている。
また、重要であるのは、その考え方や人事制度の立ち位置を半年に1回実施している評価研修(考課者研修・被考課者研修)において、毎回伝えていることである。そうすることで、徐々に社内に浸透していっている。この取り組みは継続して行っている。

2.人事フレーム(等級制度)

2コースの複線型キャリアパスとし、一般職から昇格する際に、専門職コースと管理職コースから自身の描くキャリアに沿って選択できる人事フレームとした。また、一般職から各コースを選択する際に、自身の特性を把握したうえでキャリアを選択できるように、一般職と各コースの間には滞留年数2年間の等級を1つ設けた。その等級においては、一度マネジメントを体験したうえで、自身のキャリアについて考え、評価を行い、最終的には専門職コース・管理職コース・一般職コースのいずれかを選ぶこととなる。
そうすることで、自らのキャリアを自社の中で描き、自身にあったキャリアパスを選択できる制度とした。

3.評価制度

これまでは目標管理制度のみであったが、各等級・職種に応じて会社が求める人材像や役割を明確にし、伝えるために評価項目を作成した。それぞれ、「理念実践・コンピテンシー・成果に通じる行動」の3つの観点で定義を行った。そうすることで、自身が何を求められていて、何を実施すべきかが明確となり、より評価の納得性や考課者のフィードバックの統一性が高まった。

4.賃金制度

「当事者意識をもって会社・組織に貢献した人が報われる制度」として、職種別・等級別でメリハリのある賃金制度を設計した。年齢給は廃止し、個人の評価結果に応じて処遇(基本給)が決まる設計とした。 ただし、一般職コースは前年度の賃金をベースに昇給・降給する仕組みとし、専門職コース・管理職コースは毎年の評価結果に応じて賃金が決定する洗い替えの仕組みとした。そうすることで、一般職コースでも賃金は成果に応じて昇給するため、若手層や30代や40代前半であっても、"頑張れば報われる"制度となった。

まとめ

今回ご紹介した建設業の事例は、ほんの一例である。
大事なのは業種・業態の特徴を踏まえたうえで、自社の理念や価値観に基づいた人事制度を構築することである。

この課題を解決したコンサルタント

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