人事課題解決ノウハウ

カーディーラーにおける人事制度の事例

業界別に見た人事制度構築のポイント

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カーディーラー業界を取り巻く環境と人事制度導入のポイント

カーディーラーにおける働き方の現状と課題

カーディーラーにおける働き方の現状と課題

カーディーラーを取り巻く環境は年々厳しくなってきている。日本国内の人口減少問題に加え、リーマンショック、増税、新型コロナウイルスなど、数々の外的要因もあり、自動車新車販売台数は減少傾向にある。
さらには、車両の性能向上に伴う平均使用年数の長期化による買い替えサイクルの鈍化や、高齢者の免許返納、若者の車離れなど、今後もより一層厳しくなることが予想されている。
また、社員を取り巻く環境というと、サービス業界であるため、お客様の来店に合わせた店舗運営となり、土日勤務の平日休暇、年間休日は100日前後と、働き方を重要視する現在の就活生からは敬遠され、人が集まりにくい業界の一つである。また、販売会社として、報酬制度の中にインセンティブ制度が導入されていることが多いことも特徴の一つだろう。
採用市場が激化する中、優秀な人材の確保に向けては、このような条件の中で、いかに自社が社会的な存在価値があり、社会貢献できているか、自社で働くことでどのように成長を果たすことが出来るかなど、自社の魅力を存分にアピールしなければならない。また、自社の採用ホームページに情報を掲載するだけではなく、車に興味を持つ学生や、接客に関係の仕事がしたい学生などに積極的に声を掛け、魅力を伝えてていく"攻めの採用"が必要なのである。

カーディーラーで人事制度を導入する目的

カーディーラーで人事制度を導入する目的

タナベコンサルティングでは、人事制度の主たる目的を人材育成と置いている。
ただの給与を支払うための仕組みであったり、賞与額を決めるための人事評価ではない。各自の果すべき役割や、会社からの期待を明確に示し、その役割や期待に対する実績の評価を行い、課題の整理につなげる。出てきた課題をどのように解決するのか、そしてどのように成長を果たしていくかをしっかり話し合い、次期へ繋げていくことが必要である。

では、業界別に示した場合、カーディーラーにおける人事制度の導入の目的は何であるのか。

小生は、「先行き不安な業界に於いても、自己の役割を理解し、変革・挑戦を担えるリーダーの育成」がそれであると考える。
カーディーラーは、各地域別で販売会社を置くことが多く、その単位は都道府県よりも細かな範囲で設置されている。
つまりは、地域に根差した経営が必要である。各販売会社がその地域で勝ち残るには、地域の特性や変化を十分に把握した上で、継続すべきこと、変革すべきことを一早く判断し実行していかなければならない。もちろん、地域貢献は特に必要であり、どのようにその地域、人々と良好な関係を構築していくかも考え、行動しなければならない。

職種別に見ると、営業社員は一人ひとりがまるで会社経営者のように、自己の判断ですぐに行動できるような人材に成長していかなければならないのである。目の前のお客様にとって最適な提案は何なのかを考え、提供し、ファンづくりを行うリーダーを育成したい。

技術スタッフであれば、お客様とは直接顔を合わせる機会は少ないものの、その大切な車を預かる重要なポジションである。単に、整備や修繕だけでなく、その後の車を使用する際に、どのような顧客体験価値を提供できるかを考え、実践できるリーダーを育成したい。

事務スタッフであれば、請求書やその他資料類の正確かつ迅速な作成作業だけではなく、お客様の大切な時間を快適に過ごしていただくための待ち時間の配慮や、店舗内の空気づくりを率先してできるリーダーを育成したい。

各職種ごとのリーダーを育成するためにも、その成長過程を明確に示した人事制度は重要な役目を果たし、また公平公正な評価、評価に応じた報酬制度を実現していくこと必要がある。

カーディーラーにおける人事制度の導入事例

カーディーラーにおける人事制度の導入事例

直近での人事制度導入事例を紹介する。
事例企業は、関西に複数店舗を有する某有名自動車メーカーの販売店である。
同企業においても、近年の新車販売数鈍化の影響を受けており、将来への不安を口にする社員も多く見受けられた。
弊社へ相談に至った経緯は、前年度に自社で構築した評価制度を導入したものの、活用に課題があり、見直したいというものであった。
タナベコンサルティングで現状認識を行ったところ、役職のみのキャリアパス、等級制度は未導入。評価制度は、評価基準が曖昧であり、職種・等級問わず同じ考課表で実施されており、納得性は極めて低い結果が見られた。さらには、社員へのヒアリングでも、「何のために始めたのか」「何がしたいのか」など制度の目的が浸透していない課題も見受けられた。

改善の方向として、同企業における人事制度構築の主なポイントは以下の通りである。

経営理念・クレドやビジョンに基づいた人事評価ポリシーの構築
等級・職種別の人事評価制度運用
インセンティブ制度と成績評価の区別化

1点目の人事評価ポリシーの構築では、人事評価制度の存在意義を明確に示した。評価ポリシーは、経営理念やクレドからブレイクダウンして構築したことで、上位概念から一貫性のある制度が構築され、会社の目指すべく方向性と人材育成のベクトルが同じ方向へ向くような仕組みをはかった。

2点目の等級・職種別の人事評価制度の運用では、等級別に定めた役割要件に沿って姿勢・行動評価を行い、職種・等級に応じた成果評価を実施することとした。明確な目標基準を等級・職種別に設定したことで、各々が果たすべき役割を理解し、会社の求められる行動を実現できた社員が評価される、納得性の高い評価制度の運用に繋げた。

3点目のインセンティブと成績評価の区別化は最も重要なポイントである。インセンティブは仕事の成果に応じて支給される報酬であり、目的は社員の動機付けである。一方、成績評価は各等級ごとに求められる能力発揮であり、目的は人材育成である。この2つは明確に区別化されなければ二重評価となり、評価と報酬の一対一の原則に反するものとなるのである。本事例では、それぞれの目的に応じた項目の設定、基準の設定をしたことで、両者の目的を混同させず運用できる体制を整えたのである。

以上に加え、事例企業ではもう一つ、制度構築における取り組みを実施した。それが、全役員と全管理職が本プロジェクトに参加し、制度の構築に関わったことである。これにより、制度を浸透・運用していく考課者が本制度を十分に理解しており、制度運用の形骸化防止にも繋がるのである。

タナベコンサルティングでは、人事制度の重要性を「設計2割、運用8割」と定義している。どんなに立派な制度を構築しても、運用できなければ意味がない。本件は、その運用まで考慮して策定された人事制度の事例であり、今後制度の再構築を予定している企業にとっては、ぜひとも参考にしていただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
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