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自律分権型の組織を実現するための経営システム

自律分権型の組織を実現するための経営システム

規模が拡大するグループ企業においては、いかに自律分権型の組織へ転換するかという命題と向き合うことになるケースが多いのではないでしょうか。分権型というからにはエンパワーメント(権限移譲)がキーワードになりますが、その実現に向けての仕組みやルールが必要になります。
また、特に

「グループ理念:グループとしての価値判断基準を定める」
「決裁権限:責任者へ任せる範囲を定める」
「会議体:責任者がリーダーシップを発揮する場を定める」

の3項目の整備が重要になります。

今回は、真の組織経営・グループ経営への転換策として経営システムを整備したハウスメーカーA社の事例を紹介します。

ハウスメーカーA社の概要と課題背景

A社は本体となる事業持株会社と関連会社8社にて複数事業を展開するグループ企業です。
地場有力のハウスメーカーであり、主事業は戸建建設販売ですが、「住まいと暮らし」を事業領域として、仲介・賃貸・宿泊等の住宅関連事業から介護事業、アグリ事業まで幅広く事業を展開しております。

事業領域の拡大や地場でのブランドの確立により成長を遂げている同社ですが、事業の拡大とともに組織の規模も拡大しており、具体的には関連会社の数、運営する事業の数、事業を運営するための部門(機能)の数が増加しておりました。組織の拡大に伴い、いわゆる「トップダウン型」の経営スタイルから、いかに自律分権型の「組織経営」へ転換するかが命題としてあがっておりました。
そのような命題の中で同社が抱える課題を以下があげられました。

1.ここまで事業を拡大させてきた経営トップである現社長への依存度が高い

(1)創業者である父親から事業を引き継いだK氏は、家業規模から現在のグループ企業規模まで事業を発展させた第二創業的な経営リーダーである。
(2)事業部長を中心とする管理職層を配置してはいるものの、実質的な経営判断は依然としてK社長へ依存している状態であった。

2.事業の数が増える一方で、それを支えるリーダーの質・量が不足

(1)事業部長を配置している一方で、事業部長に求められる能力としての事業部の中期経営計画の策定スキル、業績マネジメントスキル、アカウンティングスキル等が不足していることから、事業運営を任せきれない状態であった。

3.傘下にある関連会社も増加している一方で、グループでシナジーを生み出す仕組みが不足

(1)グループとしての価値判断基準となるグループ理念の未整備、グループで戦略や対策を検討する会議体が設計されていない、グループ会社社長へ移譲する決裁権限の範囲が不明確など、グループシナジーを発揮するための仕組みが構築されていない状態であった。

以上の課題背景のもと、組織経営へ転換するための整備事項としてグループ経営システムを設計しました。

本体である事業持株会社の経営システム整備

まずは本体である事業持株会社の経営システムの整備に着手しました。「事業部長がP/L責任を担うことができる体制づくり」というコンセプトを掲げて、主に「会議体」、「決裁権限」の2項目について設計・整備を実行しました。

1.会議体の再設計のポイント

(1)従前の会議体においては、業績に関わる会議には全てK社長が参加しており、対策立案や意思決定を実質的に経営トップが実施する体制であった
(2)変更後の会議体として、社長が参加しない「事業部会議」を新設。事業部会議のなかでは、事業部長がリーダーシップを発揮し、業績状況の把握や業績対策の立案をする場として設計
(3)事業部会議でまとめた情報や対策を「経営会議」にて、事業部長が発信する体制へと転換した

2.決裁権限の再設計のポイント

(1)従前の決裁権限については規程で定められてはいたものの、規程通りに運用されていない状態であった
(2)再設計においては、事業部長がP/L責任を担うために必要な権限を移譲する設計とした
(3)移譲する権限については、トップダウンだけで決定するのではなく、事業部長自らが自律的な事業運営をするためにどのような権限が必要かを討議・ヒアリングを実施し、経営トップの思いと事業部長の思いを調整の上設計

グループとしての経営システムの整備

次に、グループとしての経営システムの整備に着手しました。「グループシナジーを最大化するための経営システム」というコンセプトに基づき、主に「グループ理念体系」、「グループ会議体」、「グループ決裁権限」の3項目の設計を実施しました。

1.グループ理念体系の再設計のポイント

(1)従前の理念体系においては、グループ理念の策定はなく、関連会社においては単体の経営理念も明確になっていない状態であった
(2)住宅関連事業の枠を超えて事業領域が拡大していることを前提として、グループとしての社会や世の中に対する貢献価値をグループ理念として制定
(3)グループ理念だけでなく、各事業会社がグループ理念に紐づき目指すべき姿として事業ビジョンを定めた

2.グループ会議体の再設計のポイント

(1)従前の会議体では、事業持株会社である本体と関連会社が情報交換や討議を会議体がない状態であった
(2)関連会社も含めた事業間のシナジーを模索する場として「グループ経営戦略会議」を新設した

3.グループ決裁権限の再設計のポイント

(1)従前の決裁権限においては、グループ会社社長に対する決裁権限の規程がなく、どこまでを任せるのかが明文化されていない状態であった
(2)事業部長に対する決裁権限と同様のコンセプト、および、プロセスで、事業会社社長がP/L責任を担うことができる決裁権限の設計した

単一事業では生き残りが困難な現代において、複数事業・複数事業会社のシナジーで成長することを志向する企業は増加しておりますが、本事例のようにタナベコンサルティングでは、グループ企業を運営するための仕組みづくりのメソッドを提供、実装の支援をしております。ホールディングス設立等の資本政策からグループ経営の運営する仕組みづくりまで一貫した支援により、グループ企業の成長へお役立ちしたいと考えております。

担当コンサルタント

タナベコンサルティング
コーポレートファイナンスコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

村上 知

ホールディング設立支援、グループ経営システムの構築・成長企業の収益力強化、再建企業の収益構造改革などを中心に幅広く活躍中。特に、クライアントの業績向上に向けた計画数字を達成するためのマネジメント体制構築から実行徹底を得意とし、多くのクライアントから高い評価を得ている。

村上 知

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業種 不動産

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