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製造業B社の事業承継事例 ~カリスマ経営と後継者不在からの課題と解決の道~

製造業B社の事業承継事例 ~カリスマ経営と後継者不在からの課題と解決の道~

B社の事業承継の事例

背景および事業承継における課題

B社は、自動車メーカーのティア1部品メーカーとして自動車部品の製造業を営む企業です。創業者である父親から事業を受け継いだ2代目社長のY氏は創業者の意思を踏まえながら、ティア1部品メーカーとしての設備技術や品質保証等の知識を独学で学び、また独自のマネジメントスキルも考えながら、海外にまで事業展開する等事業の拡大を図られました。
また、「下請けからの脱却」も視野にいれ、独自の商品開発にも取組まれ、事業の柱にまで成長を実現させ、企業経営の基盤を構築されました。
グループ売上高150億円、従業員数1,500名超にまで成長しました。

同社の課題とすれば、

1.カリスマワンマン経営による弊害

Y氏は現場からマネジメントまですべてを把握されており、製造・販売・購買に関することに対してY社長を超えることができず、結果的にトップダウン型のマネジメント体制が根付いており、社員は受け身体質でカリスマ社長の指示に従っておけばうまくいくという風土でした。
したがって、次世代メンバーも指示待ちの傾向が非常に強く、自ら考え、行動するということが弱い組織でした。

2.後継者問題

Y社長にはお子さんがいらっしゃらず、親族内に後継者候補が不在の状態でした。これまでも後継者をどうするかY社長の中では色々検討されていましたが、結論がでず、結果的には後継者問題は進展しない状況でした。
また、Y社長は当時、第一線で活動されており、「事業承継」を経営テーマとして話しをすることは社内の役員、弊社のような外部機関含め、不快感を示され、話ができる状態ではありませんした。Y社長自身は、生涯、社長業続けていくという気概をお持ちでした。
事業承継に対する対策検討がなされていないことが課題でした。

とはいえ、何度もお話をするうちにY社長も65歳を迎えられたので、

(1)事業承継について真剣に考えなければならないタイミングであること(事業承継は人材育成も含め10年はかかる。10年後はY社長も75歳になられる)
(2)事業承継の検討がなされないと事業存続のためのネックになること
を提案しました。

結果的に、Y社長は渋々、弊社の提案を受け入れ、10年間の承継カレンダーと次世代メンバーの育成プランの構築、教育プログラムの実施等を支援させていただくことになりました。

事業承継に向けた提案

1.承継カレンダーの作成と5年後、10年後の組織図の検討

多少の前後があることは前提で、承継に向けたスケジュールを先に作成する必要があると考えます。承継カレンダーを作成すると、

(1)思っていた以上に承継までの時間が足りない。
(2)現状の幹部メンバーが高齢になっても現状の組織の中心の組織のままである
(3)次世代メンバーのキャリアアップ

等の課題が明確になります。

また、5年後、10年後の組織図を描いたときに、
組織における人材不足の可視化が鮮明になり、人材育成と採用の強化対策をより明確に打ち出すことができます。

2.後継者候補・次世代経営幹部候補メンバーの選定および育成プランの作成

次世代メンバーの育成には、10年かかります。また、社員である第三者を社長にするのであれば、より慎重に後継者候補を選定しなければなりません。そのための新たな育成プランを構築し、実施していく必要があります。これらに対し、客観的なデータで個人の特性や周りのメンバーからの評価を調査分析することになります。
もし、後継者候補、次世代経営幹部メンバー候補の中でY社長が譲るという判断ができなければ、外部からの招へいも改めて検討する必要があり、早急に実施する必要があります。

3.後継者候補・次世代経営幹部候補メンバーの育成

人材育成プランにのっとって、必要な研修を受講していただくことで、メンバーの特性の把握と経営幹部候補としての素養の見極めを行います。弊社からも客観的データに基づいた考察内容を提示し、Y社長の判断材料として活用していただきました。

上記3テーマについてY社長とご相談の上に取組み、作成をしました。
その内容については、
次世代メンバーの育成プラン作成と、それに基づいた教育カリキュラムの実施は計画どおり実施されましたが、後継者候補や主要メンバーの登用については、後ろ向きでした。特に後継者候補の登用については、大幅にズレながら(弊社が背中を押しながら)も進めていきました。

ところが、承継カレンダー作成した2年後にY社長が長期の入院(長期間にわたり出社できない状況)余儀なくされる出来事が起こってしまいました。

承継カレンダーにのっとり、後継者候補を常務取締役に、次世代メンバーを執行役員や各部門の部長クラスに育成とともに引き上げていたため、当時の役員も、次世代メンバーから就任した常務取締役をサポートし、事なきを得ました。
Y社長が当時、いつまでも自分は元気で半永久的に社長業を続けることができるという錯覚に陥ったままであれば、万が一が起こった際に、慌てて対応することとなり、日常業務にも支障をきたすことになっていたと改めて感じた事例です。

本件、結果的には当初承継カレンダーで示したとおりのスケジュールで、Y社長は代表取締役会長に就任、後継者候補のZ氏が代表取締役社長に就任され、会長の右腕となりました。左腕の幹部社員と、次世代メンバーとが一緒になって経営を行うという目指していた形で経営を行うことができました。

本事例のように、第三者の後継者候補メンバーの選定と、次世代メンバーの評価と育成プラン構築、そしてそれらを承継カレンダーに落とし込み、スケジュールどおりに進めて行くプランニングと推進力により事業承継の手助けをすることがタナベコンサルティングの価値と言えます。
特に、

(1)後継者候補、次世代経営幹部候補メンバーに対する客観的な評価
(2)5年後、10年後を見据えた組織体制の構築とメンバー配置
(3)作成した承継カレンダーの定点フォローと推進力

と自社だけでは実施が困難な内容をご一緒に取組みすることができることだと考えます。
今後も各社各様の事業承継に関するお悩みを一つずつお聞きし、解決していくことで多くの会社の永続発展のお役に立ちたいと考えております。

担当コンサルタント

タナベコンサルティング
コーポレートファイナンスコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

稲岡 真一

企業における収益モデルを研究テーマに、数多くの企業の業績構造を分析。その中から新しいビジネスモデルに即した収益構造をデザインし、確立することを得意とする。多くの中堅・中小企業の財務戦略構築や中期経営計画の策定・推進、指導などに携わる。企業の再建にも多数関わっており、顧客の立場に立った真摯な取り組みが高い評価を得ている。

稲岡 真一

会社プロフィール

業種 自動車部品製造業
所在地 広島県
売上高 グループ売上高:150億円
従業員数 グループ従業員数:1,595名

タナベコンサルティングのコーポレートファイナンス支援コンサルティングサービス

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66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

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創業
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