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トップマネジメントが
管理会計の再構築を行ったB社の事例

トップマネジメントが管理会計の再構築を行ったB社の事例

30年ぶりのインフレ構造転換期において、トップマネジメントは管理会計の再構築が求められています。具体的には、インフレ経済への転換点にあるという経済認識の下で、自社の財務戦略が立てられているか、管理会計でタイムリーに把握できるようになっているかを点検する事が求められています。ここでは、管理会計の再構築を行ったB社の事例を紹介します。

1.環境の変化と財務における3つのポイント

環境の変化と財務における3つのポイント?図:タナベコンサルティング作成

30年ぶりのインフレ構造転換期において、トップマネジメントには3つのポイントがあります。
(1)インフレ経済への転換期を認識する
①今後の金利上昇を想定した財務戦略は立てられているか。②中期で目標とすべき自己資本比率、現預金の基準はあるか。
(2)事業ポートフォリオ投資戦略
①既存事業強化と新規事業創出を組み合わせたキャッシュフロー経営モデル。②成長分野に対するあらたな投資戦略。
(2)財務に強いトップマネジメント
①ROIC(投下資本利益率)、BEP(損益分岐点)ほか、構造転換期に押さえるべき重要指標の設定。②財務をベースに意思決定できる経営体制の強化。

上記の3つのポイントを踏まえた上で、あらためて自社の財務を客観的に分析する必要があります。特に考えるべきことは、トップマネジメントとして環境変化のタイミングで財務の基本を理解できているか、事業戦略は財務戦略の裏付けが取れているか、メイン銀行を含めた金融機関と政策的に取引ができているか、これらを総合的に判断していくことが求められます。

2.B社の現状について

B社は地方都市に本社を置く、年商50億円の中堅ハウスビルダーです。社長より「今期、大幅な赤字になりそうだ。抜本的に財務を見直したい」との相談を受けました。社長から現状についてヒアリングすると、次の課題があることが分かりました。
①これまで一手に財務を見ていた担当役員の退職があり、業績見通しや資金繰りの精度が落ちた。
②受注は順調に行っているが、材料費等の値上りで、最終的な粗利益が減っている。
③実行予算と最終的な完工実績とをマネジメントできていない
④その結果、運転資金の管理が十分にできなくなりつつある。
⑤社内風土的には、売上重視であったため、材料費や外注費の値上りを売価に転嫁できないでいる。
ヒアリングの最後に社長は「自分も含めたトップマネジメント陣の財務視点を強化して、自社の現状にあった財務戦略・管理会計を再構築したい」とのことでした。これまで財務担当役員に依存し、他の役員陣も財務の視点が弱くなっていたわけです。
そのような理由から、B社はタナベコンサルティングと共に「インフレ構造転換期に経営幹部の財務力と仕組みを強化する取り組み」を始めました。

3.スリー・ステップでの財務戦略・管理会計の再構築

スリー・ステップでの財務戦略・管理会計の再構築図:タナベコンサルティング作成

(1)第1ステップ・・・トップ・ミーティング:社長業の本質と自社の財務課題を知る
①社長業の本質について
a.社長業とは何か、経営とは何か、原理原則を確認する。b.オーナー経営におけるキャピタル戦略、戦略投資のポイントを確認する。
②社長業および財務の課題について
a.タナベ作成の社長業としてのセルフチェックリストで、自己を見つめなおす。b.タナベによる財務力診断チェック(経営分析)
③経営ディスカッション
a.タナベ×社長による財務課題ディスカッション。b.客観的な視点からのアドバイス

(2)第2ステップ・・・経営幹部陣(社長+幹部陣)による戦略財務キャンプ
①戦略財務インプット
a.キャッシュフロー、管理会計、投資判断など幹部の基本を学ぶ。b.事業部門の幹部にも社長と同じ目線でコミュニケーションを取るための基盤づくり。
②財務の現状認識
a.自社の財務・経営管理の現状について幹部との目線を合わせる。b.経営分析報告を通じて、自社の財務の強み・課題を認識する。
③経営ディスカッション
a.タナベ×参加者による財務課題ディスカッション。b.客観的な視点からのアドバイス

(3)第3ステップ・・・管理会計システムの再構築
①管理会計システムのルール整備
a.損益勘定体系の配賦ルール決定。b.業績管理指標の決定。
②フォーマット整備
a.予算編成フォーマット。b.先行管理フォーマット。c.その他核管理会計フォーマット。
③意思決定プロセスの整備
a.各会議体系の見直し。b.KGI・KPI設定。c.先行管理の仕組み構築。

フェーズⅠ図:タナベコンサルティング作成

フェーズⅡ図:タナベコンサルティング作成

フェーズⅢ図:タナベコンサルティング作成

4.財務戦略と管理会計の再構築で得られた成果

B社はこの取り組みを半年間行いました。その結果、管理会計の精度は大幅に向上し、B社の社長からは「社内風土的に売上重視であったものが、最終の完工段階での粗利やセグメント別の利益管理ができるようになった」と高い評価を頂いております。B社は現在、管理会計の早期化を目的に「工事管理システムのIT化」に取り組みはじめています。

担当コンサルタント

タナベコンサルティング
執行役員
北海道支社

阿部 和也

金融機関にて融資審査や経営改善支援等の担当を経て、当社に入社。「企業は人なり」を信条に、現場力を高める取組みと収益構造を重視したコンサルティングを展開。特に、成長戦略の構築から展開までの実践的なサポートが強み。企業体質を革新する独自のノウハウを活かし幅広く活躍している。

阿部 和也

会社プロフィール

業種 ハウスビルダー
所在地 北海道 札幌市
売上高 50億 23年3月期
従業員数 約80名 23年3月期

タナベコンサルティングのコーポレートファイナンス支援コンサルティングサービス

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66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

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創業
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