子会社管理のポイントと注意点
- グループ経営
グローバル化やバリューチェーン拡大を目指して多くの日本企業では子会社数が増加する一方で、子会社の管理が困難になっているケースが見られます。いかにして子会社をマネジメントし、ガバナンスの仕組みを構築していくかは非常に重要なテーマであり、グループとしての収益最大化を目指すためにも押さえるべき重要なファクターです。
グループ経営における子会社管理のポイント
上場・非上場問わず子会社を保有する企業が増加しており、グループ全体の収益を最大化させるためにはグループ各社がバラバラに経営する「分社経営」ではなく、グループ全体が1つにまとまった「グループ経営」を推進していく必要があります。そのためにグループ全体で整備すべき5つのテーマが「グループ理念」、「グループ経営企画機能」、「グループマネジメント機能」、「グループガバナンス機能」、「シェアードサービス機能」です。
この章では、5つのテーマのうち、子会社管理で特に重要になる「グループマネジメント機能」と「グループガバナンス機能」について紹介します。
1.グループマネジメント機能
重要なのは「グループ企業(事業会社)をモニタリングし、評価する」ということです。非上場企業であれば事業会社単体の決算だけでなく、グループ全体の連結決算をまずは作成し、グループ全体の真の収益状況を把握しなければなりません。グループ全体でいくら収益を上げることができたのか、ここに本来の価値があるのです。
また、グループ本社が資金のコントロールタワーになるCMS(キャッシュマネジメントシステム)を構築することで、経営資源を必要なところにしっかりと振り分ける、グループ一体となったマネジメントの仕組みを導入・運用することが重要です。
2.グループガバナンス機能
重要なのは「グループ企業(事業会社)をグリップする」ということです。グループ本社から事業会社に委譲する権限や責任の再定義、グループ全体に横串を刺すような会議体の設計などグループ全体がまとまるための仕組みを導入・運用することが重要です。また上場企業では2021年6月にコーポレートガバナンス・コードが改定された影響で、これまで以上にガバナンスの強化が求められています。具体的には取締役会や監査機能の強化などであり、投資家からの要求に応えるためにはこれまでの日本企業にはなかった新しいガバナンスシステムの導入も検討する必要があります。
海外子会社管理のポイントと注意点
海外子会社を保有する企業グループではコンプライアンス体制の構築に苦慮しており、現地での不正が後を絶たない状態になっているため、グループ各社をとりまとめ、統治するガバナンスの早急な仕組み構築が必要不可欠です。
このためにはグループ本社から海外子会社への権限移譲とグループ本社のコントロールのバランスが重要であり、決裁権限規定の整備など仕組みの整備が必要になります。
一方で仕組みを構築した後はグループ本社では海外子会社の事業運営の細部に口を出さず、海外子会社が自立的に経営できるようにグループ本社は一定の範囲内で権限を委譲し、事業運営を任せていくことを念頭に置いて運用していくことが重要です。
ただし、ただ任せるのではなく、きちんと運営されているかどうか継続的にモニタリングし、検証することが重要であり、この考え方をグループ全社に適用することが必要です。
またグループ本社はグループ全体の経営戦略やグループミッション・ビジョン・バリューを明確に示し、海外子会社各社に対して期待している役割を明確に伝えることが求められています。
海外子会社の具体的なガバナンス手法
海外子会社の具定的なガバナンス手法は大きく分けて以下の3つです。
1.人の派遣によるガバナンス
自社グループのビジネスモデルを熟知しており、能力と熱意のある社員を現地派遣することは一般的であり、特に海外進出初期段階で有効な手段です。ただし、ビジネス拡大の時期を過ぎた段階でも駐在員の属人的な能力に依存していると今後の機動的な事業運営の妨げになるケースもあり、注意が必要です。
2.法・契約によるガバナンス
グループ本社と海外子会社間で交わした私的契約を背景にガバナンスを強化する方法です。たとえば現地CEOに対してはどのような状態であれば雇用を継続し、どのような場合に解雇するのかを明記することで、解雇時のトラブルを避けることができます。またグループ本社の経営指導や監査権を明記し、その条項を盾に海外子会社の指導・監督や経営監査をするケースもあります。これらは海外子会社に対し強い姿勢で臨むことが多い欧米の多国籍企業では一般的な手法です。
3.子会社への仕組み導入によるガバナンス
取締役会、監査委員会などの海外子会社の経営システムを整備する方法です。現地執行組織をいかに監督・監査するかというガバナンス体制の枠組みを導入し、統治します。ちなみに海外では日本企業の主流である監査役会設置会社ではなく、米国型の監督と執行を分けて委員会を活発に運営させる指名委員会等設置会社が主流になっています。
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