COLUMN

2023.01.30

グループシナジー最大化の実現のポイント

  • グループ経営

グループシナジー最大化の実現のポイント

M&Aの市場規模は後継者不足の解決や事業規模の拡大などを目的として拡大を続けており、レコフデータの調べにおいても2021年には日本国内のM&A成約件数が過去最多となりました。以前は一部の上場企業だけが用いる手段だったはずのM&Aが、現在では中小企業においても成長戦略の重要なファクターとして検討される時代へと変化し、中小企業においても複数の事業会社を持つグループ経営を行うことが一般的になりました。

そのようなグループ経営を行う上で欠かせないテーマがグループシナジーです。
タナベコンサルティングではグループ経営の目的は「グループ利益の最大化」と提言しており、100年先も企業を存続させていくために必要なものは、グループとして各社(各事業)の方向性が一致し、単純和ではなく一体として生まれる相乗効果(グループシナジー)を最大化することであると考えています。

今回は「グループシナジーの要素」と、「グループ各社(各事業)の方向性を一致させるポイント」の2点をご説明させていただきます。

グループシナジーとは

グループシナジーの7つの要素

グループシナジーとは2つの事業を「1+1」以上の価値にしていく取組みとも表現され、企業経営の中でも広く使われている表現ではありますが、どのようにシナジーが生まれるのか、またシナジーがどれだけの価値を生んでいるかを定量化することは難しく、実際のシナジーを明確に捉えている企業は少ないのが現状です。
「なぜ、資本関係のない個別の企業として生きていくのではなく、同じグループにいるのか」をしっかりと考え、答えを共有することが「グループ経営」の出発点となります。
まずはグループシナジーとは具体的にどのような価値を生むのか、例として7つ挙げます。
これらを基に事業間でどのようなシナジーを生んでいくのかを検討してみてください。

(1)規模の経済
グループ共同購買による購買力の集約により、コスト削減や調達の質を高めることができるだけではなく、ベンダーに対する発言力の増大や、行政機関への信用力の強化など利害関係者との交渉の中で有利に働く可能性があります。

(2)ブランドの共有
知名度や実績のあるブランドを保有することで、その他の事業についても同等のブランドバリューを享受することができ、ステークホルダーからの信頼や売上の獲得に繋がる可能性があります。

(3)ノウハウの共有
特定の事業プロセスや機能上の専門知識や固有技術などを共有することによって利益を生む可能性があります。

(4)経済基盤の共有
シェアードサービスやネットワーク基盤など、すでに存在する経営基盤を利用することで業務の集約や標準化を進め業務効率の改善に繋がります。

(5)バリューチェーンの強化
バリューチェーンをそろえることにより、営業コストの削減や販売機会の獲得に繋がります。

(6)人員の配置
グループ内の人員再配置によるスキル不足の解消のワークフォースの補完に繋がります。

(7)最適資源配分
グループ内資金移動による余剰資金の有効利用や不足資金の補完が可能となるほか、生産設備や研究所、またはオフィススペースなどの物的資産を共有することで設備の稼働率の向上やコストの削減に繋がります。

グループ各社(各事業)の方向性を一致させるポイント

グループ理念体系の整備による共通価値観の醸成

複数の事業(会社)の間でグループシナジーを生むために必要なことは、各社(各事業)の方向性を一致させることです。
特に中堅・中小企業においては、グループとしての経営方針や戦略が不在のままグループ経営がされているケースが多く見られます。その背景として、その時々の場当たり的な判断で分社化やM&Aを進めてきたことがあり、特に日本の多角化企業においては、各事業会社の権限・影響力が強く、各事業会社の「部分最適」が優先されてしまう傾向があります。それを防ぐにはグループ企業を束ね、シナジーを生む「グループ理念体系」の整備が不可欠です。

理念体系とは
(1)経営理念(企業の創業の原点である基本方針)
(2)パーパス(企業の社会に対する存在意義)
(3)ミッション・ビジョン・バリュー

①グループの社会的使命や存在意義であるグループミッション
②グループが長期的にありたい姿としてのグループビジョン
③グループの共有の価値観であるグループバリュー

の3層で構成されています。
理念体系とは企業が何のために存在するのかに対する答えであり、いわば企業の戦略策定における一丁目一番地です。事業(会社)間で理念体系を共有するということは同じスタート地点から、同じ目標に向かっていくという意思表示であり、会社の方向性を一致させることに繋がっていきます。

グループ各社(各事業)の方向性を一致させるポイント図:タナベコンサルティング作成

理念体系を整備するためには、根源であるパーパスを軸に最終的に企業がとるべき戦略やガバナンス・マネジメントシステムに落とし込んでいく方法が有効です。持続可能な成長を実現する強力な理念体系の作成を実現するストーリーとしては、次のようなプロセスをとることをタナベコンサルティングでは提言しています。

(1)企業の存在意義を示すパーパスを定める
(2)何を用いて社会に価値提供していくのかをミッションとして定める
(3)目指す経営の方向性を示すビジョンを打ち出す
(4)ビジョン実現のためにどのような意識・態度・行動をとるかを共有の価値観であるバリューとする
(5)ビジョンを中期的に具体的なストラテジーに落とし込み、ガバナンス・マネジメントシステム活用により実行する


パーパス、ミッションの作成においては以下の4点を押さえたものであることが必要です。

①企業のアイデンティティや価値観に根差した"本源的"なものであること
②会社の"野心的"な目標であること
③他社に差別化された"唯一無二"のものであること
④"簡潔"でわかりやすいものであること

またビジョンについても以下の5点を押さえたものであることが必要です。

①関係するすべてのステークホルダーが惹きつけられる"ワクワクする"ものであること
②組織を鼓舞し目的意識を与える"意欲的"なものであること
③具体的で見たものがすぐに"理解可能"なものであること
④将来を意思決定するうえで指針となり、実際に"行動可能"なもの
⑤客観的な数値や根拠に基づいた"測定可能なもの"であること

最上位の階層に位置するパーパスから根底にあるガバナンス・マネジメントシステムまで、未来のあるべき姿をもとに一貫したストーリーをもとに描くと、ステークホルダーの理解を得やすい論理的な理念体系の策定に繋がります。
グループシナジー実現の第一歩である「グループ理念体系」がきちんと整備できているのか、まずは確認してみてください。

グループ経営システム構築サービスの詳細は下記よりご覧ください。


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「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
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