COLUMN

2022.12.01

中期経営計画とは?
目的から策定時の注意点まで解説

「中期経営計画」とは、企業の「理念(存在価値・使命)」や「中・長期のビジョン(ありたい姿・進むべき方向性)」を具体的なロードマップへと落とし込み、それらの達成プロセスを数値で表したものであると定義されます(図1)。

図1

図1

出所:タナベコンサルティングにて作成

VUCAの時代と称され「将来の予測困難さ・曖昧さ」ばかりがクローズアップされる昨今の経営環境にあるからこそ、企業は自社の描く「志・夢」を実現する「道筋・手段」を明確にし、社員と共有することが必要不可欠であると筆者は考えます。

本コラムでは、中期経営計画を策定する際に必要な視点と注意点(議論のポイント)について解説します。

中期経営計画に必要な視点

中期経営計画策定に必要な視点は主に下記の3点に集約されます。

1.事業環境に向き合い、どのような成長過程を遂げてきたのか、成長・停滞の要因は何だったのか

策定の視点①は、過去の成長の節目を正しく押さえ、現在の企業へと発展させた要因を押さえると共に、過去の成長要因がこれからの成長要因になり得るのかどうかを検討し、いま何を変えなければならないのか、どんな段階にきているのかを押さえることにあります。「知る」ということは、現象面の事実をつかむということだけではなく、数多くの事実の中に潜む真実(真因)をつかむことです。それは経営の観点から言えば、「自社がつまずくとすれば何でつまずくか」「伸びるとすれば何で伸びるか」「最近大きく変化したポイントは何か」といった、企業の成長・発展のための決定的・本質的要因をつかみ、企業のおかれている現状・課題を正しく把握することが重要です。

2.コアコンピタンス(自社の本当の強み)は何か。どのようにすれば自社の強みを伸ばしきることができるか

次に視点②として、自社の競争力の源泉となる「コア・コンピタンス≒強み」を明確化し、それをどのように伸ばし"きるか"を考えることが重要です。戦略の基本は強みをニーズのある所で伸ばしきることであり、①競合他社に模倣されづらいか、②顧客が求めるものとの一致しているか、③垂直・水平展開が可能かなどの観点から、自社の強みを再定義すると共に、真の顧客(ニーズのある市場)は誰かを具体化していきます。

3.社員の意識を集中させるマイルストーン・KPIをどのように設定するか。また、いつまでに実施するか?

そして視点③では、中期経営計画を具体的に実現するための「手段」と、その手段がきちんと遂行されているかどうかを定量的に測定する「指標」を明確化し、それぞれに期限をつけて行きます。事業の成長は「創造」と「破壊」を繰り返しながら、いくつかの段階を経て実現されるものです。その為、下記の図(図2)で示されるような事業の成長進化のサイクルと、それに必要な時間を明確にし、社員の意識を集中させるマイルストーンを明確化していきます(図2)。

【関連コラム】中期経営計画検討に役立つメソッド&テンプレート 【関連コラム】中期経営計画の意義とは|数値設計のポイントや注意点を解説

図2

図2

出所:タナベコンサルティングにて作成

また、設定すべきKPIのうち、「経営指標」及び「成果指標」がプロセスの目標(ゴール)として達成したか否かを定量的に表すものであるのに対し、「プロセス指標」はプロセスの実施状況を計測するために、実行の度合い(パフォーマンス)を定量的に示すものとなります(図3)。

図3

図3

出所:タナベコンサルティングにて作成

中期経営計画を全社で推進していくためには、このマイルストーン・KPIの認識を役員から現場の従業員まで全員が理解しておく必要があります。組織としてどのように取り組み、ゴールを目指すのかを明確に設定することが重要です。

中期経営計画策定完全ガイド~企業事例から見直しのポイントまで一挙ご紹介~

中期経営計画策定時に経営者として検討すべき6つのポイント

1.何をしたいのか

-貴方が本当にやりたいことはなにか

創業時~現在の夢や志、モデル企業、尊敬する経営者、事業への期待、趣味など

2.なぜしたいのか

-貴方は何故会社を経営しているのか

社史、創業者、社長業に対する使命感、家族、伝統、地場の信用・信頼など

3.誰としたいのか

-あなたは誰と仕事をしていきたいか

ブレーン、相談役、パートナー、単独、提携、合併(M&A)など

4.いつまでに実現したいか

-事業を通していつまでに、どんなことを実現したいか

10年後の夢→5年後の夢→3年後の夢

5.どこでしたいか

-どの国や地域で仕事をしたいか

国内(県内・県外)、近県、関東、関西、海外(アジア・欧米)

6.どうやってするか

-どんな方法で実現したいか

(1)ヒト
求める人材像、期待する行動、事業承継ストーリー、賃金水準、採用・育成
(2)モノ
自社製品・商品、OEM、固有技術、ノウハウ、差別化、管理システム、情報ネットワーク
(3)カネ
自己資本、銀行借入、社債、投資・証券化、株式公開

【関連コラム】バックキャスティングで描く中期経営計画のストーリー

中期経営計画は「創造」

今すべきことは何か、取り組むべき内容を整理して明確化させる

「中期経営計画」を通して実現すべきことは、自社のコア(核)となる技術・商品・サービスをさらに強化することで他社との差別化を明確にし、マーケットを開拓しつつ新たな付加価値を「創造」することに他なりません。

自社の将来像(5年後~10年後)を思い浮かべてみても、もし現在とあまり変わらないのであれば、自社の現状を将来にわたって維持することは難しいでしょう。現在の業績は、過去打った手が正しかったことの証明にはなっても将来を保証するものではありません。企業に現状維持はなく、常に成長を衰退を繰り返しているのが本来の姿です。将来に置ける自社の競争力を「創造」する中で、このVUCAの時代を生き抜く一手を意思決定するのが中期経営計画の策定の要諦となります。

VUCA加速化の時代に外部環境を精緻に分析し予測するよりも、自社が切り拓く未来の姿を、確固たる意志として示すことが重要です。逆に、激変する外部環境に適応すべく、戦略を含む事業計画は柔軟に変化させるマインドと姿勢が求められています。重要なことは臨機応変に計画をアップデートしながら、進むことだと考えます。

【関連コラム】中期経営計画のわかりやすい企業事例を紹介~計画の目的とポイント

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