COLUMN

2023.04.21

中期経営計画を見直す際の基準とは?

策定した中期経営計画を、計画年度末まで見直さずにいる企業は少なくありません。経営状況や社会情勢の変化を踏まえ、定期的に計画を見直すことで、自社の課題、方向性、達成すべき目標を明確化することが可能です。
今回は、中期経営計画を見直す必要性やそのタイミングについて解説します。

中期経営計画の見直しが必要となるのはいつ?

まず、中期経営計画の策定後、進捗状況を見ながら定期的に見直すことが重要です。
中期経営計画に影響を及ぼすような社内外の変化が起こった時には、計画内容の見直しが求められます。見直しが必要となるタイミングとして、以下が考えられます。

事業に影響を及ぼす社内環境に変化があったとき

経営陣に大きな変化があった場合は、中期経営計画を見直す必要があります。
特に代表取締役を含む上位役員の交代は、会社のビジョンに大きな影響を与えるでしょう。新しい会社のビジョンや経営方針に合わせて、中期経営計画を見直す必要が出てきます。
また、経営方針が過去のものから大きく変わる場合には、計画を一から見直すことが求められる可能性があります。
他にも、計画予算に含まれていなかった設備投資が必要となる場合、設備投資の規模によっては計画の見直しが求められます。
社内の変化をきっかけに中期経営計画を見直すことで、役員、従業員間で社内状況を共有でき、社内一丸となって新たな計画達成を目指す一歩になるといえます。

事業に影響を及ぼす社外環境に変化があったとき

中期経営計画に影響を及ぼすものに、社外の変化も挙げられます。昨今では、新型コロナウイルスの感染拡大が記憶に新しいのではないでしょうか。
新型コロナウイルスの感染拡大によって休業を余儀なくされた企業や、事業の縮小をせざるを得なかった企業が存在します。このような場合は、中期経営計画の見直しは不可欠といえるでしょう。自然災害の発生についても同様です。
他にも、企業を取り巻く社会的ニーズの変動が影響を与えることも考えられます。例えば、環境に配慮した製品へのニーズが高まることで、利用を控えるべき原材料が出てきたり、原材料費の仕入れ価格が高騰したりするなど、計画への影響が見込まれるでしょう。
ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変わる現代においては、このような社外の変化を見極めて、中期経営計画の見直しを検討することが重要です。

計画達成時期に大きなズレが発生したとき

計画の進捗に著しい遅れがみられる場合、中期経営計画を修正して、計画を立て直す必要があります。また、社内外の状況に鑑みて、遅れた原因を考えることは、中期経営計画の見直しに役立ちます。
また、中期経営計画の早期達成が見込まれる場合にも、計画の見直しが必要です。達成時期が中期経営計画の年度末から見て、どの程度早くなるのかによって、取り組むべき内容が変化する可能性があります。
このように、計画の進捗状況は、早まっている、あるいは遅れているいずれの場合でも、見直しの対象となり得ます。達成見込みのない目標や、達成してしまった目標を継続して掲げていることは、従業員にとっても、会社の業績にとっても意味がないといえるためです。

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中期経営計画の見直しが必要となるのはいつ?

中期経営計画を見直すスパン

中期経営計画はどれくらいのスパンで見直すのが適切なのでしょうか。
計画の見直しは、事前に時期を決めて定期的に行うケースと、環境の変動に合わせて必要となった時に行うケースがあります。

事業年度ごとに決まった月に見直しを行う

各年度に一度、計画を見直す月を決めるという方法があります。
企業を取り巻く環境変化が著しい昨今では特に、策定した中期経営計画通りに事業が進まないケースも少なくありません。
規模の大小はあったとしても、年に一度、定期的に計画を修正することで、実情に合わせた目標を掲げられるようになり、効率的な事業活動につながるでしょう。
中期経営計画を基に融資を受けている企業においては、計画の未達が見込まれることを投資家に伝えて、理解を得ることも必要です。その観点においても、決まった時期に計画を見直すことは有効といえます。

常にモニタリングして毎月微修正を行う

多くの企業において、毎月定例的に各部署の報告会議が設けられています。この定例会議を利用して、計画の達成状況を常にモニタリングして、適宜微修正を行うことも計画を見直すタイミングのひとつです。
掲げる目標には、長期的な目でみなければならないものや、短期間で達成できるものが存在します。計画に影響する状況を継続してモニタリングして、各計画の進行度に応じて微修正をすることで、経営改善を図ることが可能です。

マーケットの変化に合わせて見直しを行う

計画の見直しに適切なタイミングとして、マーケットが変動した時が挙げられます。マーケットの変動は、以下の3点で観測します。

● 競合他社の新しい動き
● 新しい競合他社の出現
● ユーザーニーズの変化

なかでもユーザーのニーズは、マーケットの変動と連動するケースも少なくありません。いかに緻密なリサーチをしていても、環境が変化するとユーザーの求めるものは変わってしまうでしょう。
競合他社の情報収集やユーザーニーズの調査を常に欠かさず、変化が見られるときには、変化に対応した計画に見直すことが求められます。

中期経営計画を見直す方法

中期経営計画の見直しには、「一から作り直すこと」と「微修正を行うこと」の2つの方法が考えられます。いずれの場合においても、現状を加味して修正すること、全社的に理解を得ることが不可欠です。

中期経営計画を一から作り直す

中期経営計画に多くの修正箇所がある、あるいは大幅な修正項目があるといった場合には、ゼロベースでの策定が望ましいといえるでしょう。
1から全てを作り直す大きな変更となるため、社内の混乱を招かないように、策定の段階から従業員に説明をしておくことが欠かせません。
特に社外の大きな変化に対応しなければならないときには、新たな方針を立てて、逆算した計画を再策定することが求められます。

変化に対応すべき項目のみ修正する

現在の計画が順調に進んでいる状態でも、修正計画が求められることは想定されます。
部分的な修正が求められるケースとして「マーケットの変動が見込まれる」「社内での設備投資が必要になる」などが挙げられます。現状の計画に無理がない場合には、その数字を基本として、修正が必要となる部分のみ変更する方法も存在します。
新たに見込まれる顧客層のニーズに応えるためや、これから不必要になるであろう項目を削除する場合などに、計画の部分的な修正が行われます。

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中期経営計画を見直す方法

中期経営計画の見直しを行った事例

新型コロナウイルス感染拡大によって事業活動に大きな影響が及んだいま、中期経営計画を見直して、修正を実行した企業も少なくありません。実際にどのように中期経営計画を見直したのか、実例を紹介します。

株式会社J-オイルミルズ

J-オイルミルズは、2021年5月20日に掲げた中期経営計画の見直しを、2022年5月20日に発表しました。見直しの背景は、原料価格の継続的な高騰です。
原料価格の高騰を招いた背景には、以下が挙げられます。
● 世界的な食用油の需要急増
● 原料生産国の悪天候・新型コロナウイルスによる労働力不足による食用油の減産
これらの変化に対応すべく、戦略目標はそのままに計画年度を2年延長することが決められました。

株式会社博報堂DYホールディングス

博報堂DYホールディングスでは、2019年5月に掲げた中期経営計画の数値目標を取り下げて、計画の見直しを行いました。
新型コロナウイルス感染拡大を発端としたデジタル化の普及と、それに伴う社会生活の変化が背景にあります。
修正後の計画には、基本戦略は変えずに、デジタル化や社会生活の変化に合わせた取り組みを強化する内容が追加されました。社会情勢や市場の変化に対応した中期経営計画の見直し事例といえるでしょう。

テクノオーツ株式会社

テクノオーツ株式会社は、世界的に半導体需要が高まったことで、計画していた売上の20%増を達成しました。
中期経営計画を見直すにあたって、以下のような市場分析を実施しました。
● リモートワーク、業務自動化が本格化されることを受けて、半導体需要が高まると見込まれる
● 原材料費・輸送費の高騰によって利益率が下がることが想定されるが、引き続き受注は増加することが見込まれる
このような市場分析を踏まえて、3年計画の売上目標・利益率目標が修正されました。

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中期経営計画の見直しを行った事例

まとめ

経営において、組織全体の行動指針となるもののひとつが「中期経営計画」です。
社内外の環境に合わせて、適宜計画の見直しを行うことで、より現実に即した企業経営の実現につながります。市場を取り巻く環境調査を行い、定期的に計画達成状況をモニタリングすることで、計画の見直しに必要な情報を収集できます。

タナベコンサルティンググループは、企業のサスティナブルな成長をサポートする企業コンサルタント会社です。企業成長につながる中期経営計画をお手伝いいたします。中期経営計画の策定・見直しをお考えの企業は、タナベコンサルティンググループにご相談ください。

中期経営計画策定完全ガイド~企業事例から見直しのポイントまで一挙ご紹介~

著者

タナベコンサルティング
取締役
ストラテジー&ドメインコンサルティング事業部

山本 剛史

大手ゼネコンにて設計・監督業務に従事後、当社に入社。事業戦略を事業ドメインから捉え、企業の固有技術から顧客を再設定してビジネスモデル革新を行うことを得意とするタナベ屈指のコンサルタント。成果にこだわるコンサルティング展開で、特に現場分散型の住宅・建築・物流事業、多店舗展開型の外食・小売事業で、数多くの生産性改善実績を持つ。

山本 剛史

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