"次代へ挑む" ファーストコールカンパニーの取組み

丸井織物株式会社

丸井織物株式会社

  • 代表取締役社長 宮本 徹 氏
  • 常務取締役 宮本 好雄 氏
  • 取締役 宮本 米藏 氏
  • ネット事業部 部長 宮本 智行 氏

株式会社タナベ経営

  • 常務取締役 大川 雅弘
  • 北陸支社 経営コンサルティング部 部長代理 新田 毅

経営理念と行動指針を軸にヒトと事業の成長を図る

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大川 いつもタナベ経営のコンサルティングや人材育成をご活用いただき、誠にありがとうございます。丸井グループは創業から80年近い歴史を刻んでおられます。まずは会社の歴史をお聞かせください。

宮本(徹) 創業前は家業で能登上布を生産しており、1937年にレーヨンを製造する宮米織物を設立。そして56年に、前社長の宮本三郎が別会社として丸井織物を設立しました。別会社とした理由は、兄弟げんかを避けることと、1社に何かあったときに別会社がサポートするためだと聞いています。
 当時は金沢の産元商社から注文と原料をいただいて織物を製造する形態でしたが、65年ごろ2次産元商社を目指すために自社での製造・販売を手掛け始めました。しかし、新規参入のため地元の産元商社から仕事が回ってこず、東京や大阪の大手商社やメーカーとの取引を模索し、そこで東レとの仕事が始まりました。
 73年ごろ、速乾性のあるポリエステルタフタ素材が注目を集め、東レと組んだことで大きく成長しました。そのころから細々と経営するのではなく、商工一体で生産性や合理性を高める業態を目指しました。
 81年に商品開発室を設立し、商品開発に取り組んだのが、一つの大きな転機です。86年には丸井織物と宮米織物がグループ運営となりました。
 88年には取引先のタイ現地法人に技術供与を行い、初めての海外展開を行いました。その後2004 年、中国に丸井織物(南通)有限公司を設立。直接の海外展開のスタートとなりました。

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大川 素晴らしい経営理念と行動指針をお持ちだからこそ、新しいことに挑戦し続けることができるのでしょう。

宮本(徹) 経営理念は人に関わる部分を重視しています。せっかく入社した縁があるわけですから、社員には当社で勉強し、成長してほしいと思います。
 当社はもともと家族のような会社です。戦後は中学校を卒業した東北や奥能登の人が、仕事をしながら定時制高校に通っていました。私が幼いころは、自宅の2階に多くの社員が住んでいて家族のようでした。そういう部分を大事にしたいとの思いが、経営理念に込められているのです。

大川 社員の価値判断がブレないように、行動指針浸透の仕組みをつくっておられますね。

宮本(徹) 当初の行動指針は5項目だけですが、浸透させるのは難しかったので、分かりやすくするため、各項目ごとに「チャレンジ」「三現主義」などのキーワードと取るべき行動を分かりやすく補足しました。行動指針の条文だけ読んでも、伝わりませんから。



経営理念
丸井にかかわる全ての人びとが、仕事を通して人間成長をはかり、豊かで健やかな人生を創りあげるところにある
ビジョン
モノづくりとIT を融合させ"3つのカクシン"で、イノベーティヴテキスタイルカンパニーとなる!!

コア技術をベースにお客さまの課題を解決し成長を持続

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大川 日本の繊維マーケットが長期縮小する中、急拡大を続けて合成繊維織物で日本一の事業規模へと成長しました。この成長は、事業モデルの組み立てが巧みだからと私はみています。大手SPAや原糸メーカーなどとWin-Winのサプライチェーンをうまく組んでおられます。

宮本(徹) 繊維産業は、私が小学生のころにすでに斜陽産業と習いました。しかし、繊維は生活になくてはならないもの。世界的には人口増加で、合成繊維は成長する産業です。その上、合成繊維は各種フィルターや人工血管に利用されるなど、繊維の技術が衣料以外にも広がっており、夢のある産業なのです。丸井織物は、「織」というコア技術をベースに、用途の拡大に取り組んだことが、一つ目の成長のポイントとなりました。
 とはいえ、織だけでは製品になりません。製品になるまでには、糸加工、織、染色、縫製の工程があります。それを1社で一気通貫にやるのではなく、役割を明確化しながら、糸加工・染色メーカーとの連携で競争力を生み出したことが、成功ポイントの二つ目です。
 成功ポイントの三つ目は、お客さまの課題を解決し、喜んでいただく姿勢。ソリューションビジネスですね。

大川 顧客ニーズを解決するソリューション営業の取り組みを続けられたわけですね。

宮本(徹) 当社の優位性は安くて高品質の繊維を織ること。また、商品開発室やテキスタイルスタジオという、お客さまと接点を持つ場を設けました。今は3万5000点のサンプルをデータ化しており、閲覧できます。アパレル企業のデザイナーは、テキスタイルスタジオで当社の開発者と一緒に開発ができる。これは他社にない取り組みで好評です。
 2年前に染色の研究スタジオ「D - スタジオ」を設立しました。当社の社員は従来、織だけを考えていましたが、織の次の工程である染色は、よりアパレル産業に近く、お客さまと話をする際、織だけでなく染めのことを知る必要があります。染色工場と連携を図るにも、D-スタジオが役立ちました。織と染めをトータルで設計・企画をする方向に変わり、お客さまのニーズをくみ取って提案できるようになったのです。

大川 ソフト・ハード両面の戦略投資がうまくいったケースですね。他社との差別化だけでなく、社員の意識変革にも効果があったとお聞きしています。
 次に、海外事業の取り組みをお聞かせください。

宮本(米) 海外事業は、中国の丸井織物(南通)がメーンです。2014年の売上高は約40億円、従業員数120名で、主に中国市場向けのエアバッグ素材とスポーツ・カジュアルウエア用の生地の製造・販売をしています。04年に進出し、当初は利益面で苦しみましたが、現在は安定して利益を出しています。
 当初は日本品質の定番品を中心とした製造・販売の展開を描きましたが、日本レベルの技術にまで持ち上げるのが想像以上に難しく、安定した品質の製品づくりに時間がかかりました。販売面でも、中国で生産したものは日本企業の製品でも中国製と見られ、採算的に厳しかった。また中国企業の追い上げが速かったことも、想定外でした。

ジュニアボードで次世代の経営者人材を育成

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新田 2011 年と14 年にジュニアボードを実施されました。社内での位置付けや成果をお聞かせください。

宮本(好) 当社は営業・開発・製造といった機能組織が強いため、幹部でも全体を見る視点がなく、経営ができる人材を育てねばと考えていました。タナベ経営からジュニアボードによる人材育成の提案を受け、第1期は40代の部長・課長クラスを中心に10名で実施。組織、マネジメント、財務などさまざまな視点で勉強ができ、考え方が広がりました。
 作成した中期ビジョン「変革100」は、16 年に売上高100 億円、経常利益10億円を目指すというものです。それが2年前倒しの14年12月期の決算で達成のめどが付いたため、第2期ジュニアボードを発足し、売上高200億円、経常利益20億円を目指す次の中期ビジョン「革新200」を作成しました。

大川 業績の早期達成以外の成果はいかがでしょうか?

宮本(好) 参加メンバーの視野が広がったことが大きいですね。自部門のことしか考えなかったのが、経営者的視点で全体を見るようになりました。

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新田 第2期ジュニアボードは30代の社員が中心となり、20代の若手社員も参加しました。社内への影響や若手の意識変革はありましたか?

宮本(好) 第1期は、既存事業を拡大しながら目標達成を目指すビジョンでした。それに対し第2期は、新規事業を創出する観点が入り、若い人の感性を取り入れたのです。入社2年目の20代の社員も参加し、社内から「あんなに若くても参加できるのか」と驚きの声が上がりました。若くても頑張ればチャンスがあるという刺激になったと思います。

大川 第2期ジュニアボードで検討されたIT面の変革について、お話しいただけますか?

宮本(智) 若手メンバーで「革新200」を作成し、モノづくりとITの融合を掲げました。社内のFA(ファクトリーオートメーション)化や情報化は進んでいますが、全て自社内で完結しており、ビッグデータを集めても十分に有効活用できていません。今後、インターネットを利用するプラットフォームを構築すれば、当社の工場と染めの工場をネットで結んで生産システムを共有するなど、情報の一元化が図れるようになります。また、染めや販売、エンドユーザーの情報も連携させることで、バーチャルカンパニーができるでしょう。
 販売のIT化も進めたいと考えています。お客さまへの提案をバーチャル化すれば、提案をスピードアップできます。マーケティング分析も、プラットフォーム構築で情報を得られるようになれば開発に生かせます。
 新規事業としてIT化に取り組む理由は、新規事業をつくる人を育てたいからです。ITビジネスは投資規模が小さく、企画・購買から販売まで1人で手掛けるので、経営全般を把握できる人材が育ちやすい。またIT分野は、革新的な技術が生み出されることが多く、新規事業を立ち上げやすいのも理由の一つです。

"3つのカクシン"で自律したビジネスを目指す

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大川 今後の成長戦略をお聞かせください。

宮本(徹) 次のステップへ成長するには、従来の成功モデルに固執しないこと。「革新200」は、「モノづくりとITを融合させ"3つのカクシン"で、イノベーティヴテキスタイルカンパニーとなる!!」とのビジョンを掲げています。ITをツールとして使うのではなく、糸を織って染めて販売する全ての工程にITを溶け込ませ、従来にない革新性を打ち出したいとの考えです。
 "3つのカクシン"とは、「製品革信」「技術革進」「業態革新」です(【図】参照)。製品革信の「信」は、お客さまに安心いただける信頼関係の構築。技術革進の「進」は、これまで行ってきたFA化などの生産管理をバージョンアップさせ、企画・開発から生産、出荷までIT技術で進化させることです。
 最も大切なのは、「業態革新」。糸・織・染めに分かれている業態を、ITのプラットフォームで結び付ける。単に一気通貫にモノづくりをするのではなく、新しいビジネスモデルを構築し、繊維産業の業態を革新するということです。この3つのカクシンをベースに売上高200億円を目指したいですね。
 織は、糸と染めの真ん中に位置します。つまり両隣を見据え、バーチャルカンパニーとして取り組みやすい。しかし、委託加工のビジネスは意識が内向きになりがちなので、提案型営業やソリューション営業、さらにIT化でお客さまの課題解決に取り組み、主体的に考えるビジネスに変わることが、他社との差別化になります。
 ビジネスは委託加工の受け身でも、実際は「自律」する。自立ではなく、自分で考え実行する自律です。外に向けてビジネスをつくることができる人、つまり経営者を多く育てることが課題です。

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大川 企業の成長には、強みを生かす、強みを磨くこと。さらに成長エンジンを明確にして必要な戦略投資を思い切って行うことが大切です。ただし、最後は人です。どれだけ人づくりができるかが、大きなポイントとなります。
 第1期ジュニアボードの「変革100」で成長の基盤ができ、第2期の「革新200」で新しいチャレンジが始まりました。モノづくりとITの融合が進めば、全く新しい業態として進化できるでしょう。今後のさらなる発展に、微力ながらタナベ経営もご協力させていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

PROFILE

  • 所在地:〒929-1801 石川県鹿島郡中能登町久乃木井部15 TEL:0767-76-1337(代)
  • 資本金:7億9200万円(グループ計、2014 年12月期)
  • 設立:1937年 売上高:120 億円(グループ計、2014 年12月期) 従業員数:511名(グループ計、2014 年12月期)
  • 事業内容:合繊織物および合繊産業資材織物の製造
    http://www.maruig.co.jp/