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グループ経営のルールを決めて持続的な成長を目指す事例

グループ経営のルールを決めて持続的な成長を目指す事例

農業用資材を中心に多角的な事業を展開するA社グループ。M&Aにより、ここ数年間で会社数も増加しました。一方で、それぞれの会社では、従来からの業務運営により、非効率な仕事や、重複する業務が発生するなど、様々な問題が顕在化していました。
そこで、タナベコンサルティングと一緒に「グループで持続的に成長していくためのルールを決め、それを『A社グループ経営ブック』として明文化し、全社員で共有化する」ためのプロジェクトをスタートしました。

グループ経営システム

全体最適志向でグループ企業価値を高める経営手法

A社はM&Aにより、グループに所属する事業会社が増えていましたが、それぞれの会社で従来ながらの事業運営により、当初に想定していた「シナジー効果」が発揮されないという課題に直面していました。各事業会社は、それぞれの従来ながらの事業運営を優先してしまうため、グループ全体最適ではなく、部分最適になっていました。これが最大の要因でした。
そのため、グループ経営に求められる5つのテーマを設定し、全社最適の戦略、迅速な意思決定、マネジメントの高度化を目的として、A社グループの幹部社員とタナベコンサルティングがプロジェクトを組んで進めていくことになりました。

5つのテーマ

①グループ理念
②経営企画機能
③ガバナンス機能
④マネジメント機能
⑤シェアードサービス機能

重要な経営企画機能とガバナンス機能

プロジェクトでは、ゴール目標を「グループ経営ブック」の策定としました。「グループ経営ブック」とはA社グループが、世代を超えて発展し続けるために、組織の基本的な運営や意思決定ルールを定めたものであり、多事業に携わるグループ全社員が遵守すべきガバナンスやマネジメント、シェアードシステムのルールを明文化したものとしました。

A社ではグループ理念は既に作成済みであったため、プロジェクトでの実質的な議論は経営企画機能とガバナンス機能から始めました。経営企画機能のうち、「決裁権限」のテーマで議論が白熱しましたが、タナベコンサルティングより「決裁権限は、①時間軸(計画や方針などにおける期間)、②影響範囲(施策や規程が及ぼす組織範囲)、③事業領域(新規参入や投資をする業種・エリア)、④成長方向(施策が組織をどのように成長させるのか)、⑤金額規模(借入金や支出の金額の大きさ)」で整理することをアドバイスしました。プロジェクトメンバーで掘り下げていくことで、あらためてA社グループの決済権限が策定されました。

次にガバナンス機能においては、特に内部監査の仕組み化に重点を置いて検討が進みました。内部監査で重視する内容として3つが上がりました。
1つ目は適合性のチェックで、経営状態健全化に向けたリスクマネジメントと公正かつ独立の立場で業務上の不正防止を目的とした内部監査です。
2つ目は有効性のチェックで、業務プロセスの効率化と経営目標の効果的な達成についての内部監査です。
3つ目はノウハウの伝承で、持続的に成長していくための体質の醸成と社内の成功体験の積上げを目的とした内部監査が決まりました。特に3つ目の内部監査は、社員の高齢化が進んでいく中で「ベテラン人材のノウハウ」を社内で伝承させていく取組みとして大いに期待されている内容となりました。内部監査というと指摘型のイメージがありますが、A社では「誰しもが教え、誰しもが教わる組織風土」を大事にしていきたいとの思いから生まれた仕組みとして取り入れられました。

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重要な経営企画機能とガバナンス機能

出所:タナベコンサルティングにて作成

要になるマネジメント機能

コミュニケーション・パイプの設計と、業績、資金、人材の3つのマネジメント

マネジメント機能では、まずコミュニケーション・パイプの再設計を行いました。決裁権限のあり方をふまえて、計画方針・ヒト・モノ・カネの切り口から、組織として意思決定が必要な事項を選定し、意思決定に必要な会議体および会議体間の連携を再設計しました。

その上で、業績マネジメントは経営会議と営業会議で効果的に実施されることが決まりました。またグループのシナジー効果を高める狙いで、若手社員を中心に「グループ営業プロジェクト」も同時に立ち上がりました。
次に資金マネジメントでは、キャッシュ状態が適正から外れている際は、ホールディングスの管理部門にて対策を検討していくことになりました。グループ全体最適を価値判断基準として重視し、余剰資金と資金不足の調整機能が整理されました。
そして人材マネジメントでは、早期の人材育成と人事交流を目的に「グループ横断型の人事異動」がルールとして整理されました。グループ戦略における配置変更、モチベーションの維持、不正の未然防止が期待され、シナジー効果を最大化させるための取組みのひとつになっています。

コミュニケーション・パイプの設計と、業績、資金、人材の3つのマネジメント

出所:タナベコンサルティングにて作成

グループシナジーを強化するシェアードサービス機能

シェアードサービス機能は、情報の共有化とデジタル化

ホールディングス各社で共有すべき情報を整理し、これらを各事業会社から集約し、共有する仕組みを確立することで各社間のシナジーを強化することにしました。具体的には、業績管理情報、仕入・在庫情報、顧客情報、会計情報は、ホールディング会社管理部が集約し、経営会議・営業会議にて業績対策の情報として活用されます。将来的には、事業会社連携によるワンストップソリューションの提案や、グループ一括仕入の実現などを想定しています。労務管理情報や人事情報は、ホールディング会社の人事部が集約していくことで、特に超過労働時間を把握し、改善策の立案のために活用することが決まりました。また、人事情報や労務管理情報は、グループ人材会議にて人材育成の企画立案や人材配置に関する情報として活用することも決まり、A社グループの持続的な成長に向けた取組みが具体的に進みだしたのです。

シェアードサービス機能は、情報の共有化とデジタル化

出所:タナベコンサルティングにて作成

グループ経営システム構築サービスの詳細は下記よりご覧ください。

担当コンサルタント

タナベコンサルティング
執行役員
北海道支社

阿部 和也

金融機関にて融資審査や経営改善支援等の担当を経て、当社に入社。「企業は人なり」を信条に、現場力を高める取組みと収益構造を重視したコンサルティングを展開。特に、成長戦略の構築から展開までの実践的なサポートが強み。企業体質を革新する独自のノウハウを活かし幅広く活躍している。

阿部 和也

タナベコンサルティングのコーポレートファイナンス支援コンサルティングサービス

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志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業
200業種
17,000社以上