CASE

本業特化によるビジネスモデルの集中体制の確立

本業特化によるビジネスモデルの集中体制の確立

F社は、小型から大型までの金型設計から製造まで一貫して行う製造業です。また、関連する部材・部品の販売で成長してきました。更なる成長のために、新事業をいくつも立ち上げてきましたが軌道にのるまで時間がかかり、収益を圧迫していました。
そのような状況の中、コロナウイルスによる経済活動の停滞、原料の高騰による業界の変動で収益悪化が余儀なくされていました。対策は打っていても実績に結びついていない状況で、業歴と強固な資本に守られた、本業不振の危機的経営でした。その状況下で、一期で収益を改善し、収益基盤を構築した事例を本記事にて紹介します。

収益改善への新たな取組み

ステップ1:原価構造改革

F社の課題は、本業での収益力が以下の3つの側面において極めて弱い点でした。

営業面:顧客との折衝能力を備え、開拓営業力のある人材が少ない
生産面:繁閑格差が大きく、原価低減が実績に結びついておらず、ロスが多い
管理面:全体最適の管理がなされておらず、マネジメント機能が弱い

これらの課題を解決するには、根本的な構造改革をスピード良く1期で確立し、定着させる基盤をつくることにあります。
そこで、以下の項目を実施事項に掲げ、全社一丸で取組みました。

(1)収益構造改革
①変動費削減
②固定費削減

(2)組織再編成
自社の経営資源を集中させるために部門を編成⇒業績と資金繰り・原価管理・営業へ全ての資源を本業に集中させる

(3)管理体制の構築
①先行資金繰り会議による精度の向上⇒売掛債権管理の焦げ付き債権の防止、関連会社への管理体制の構築
②予実績管理の実施⇒予算と実績の乖離を分析し対策を行う

まず始めに取組んだのが、原価構造の改革です。もともと、製品の高い品質、トータルサポートで顧客からは高い評価を得ていましたが、市場環境が厳しくなるにつれ、価格要請が強くなり次第に受注が減少していきました。高い品質、行き届いたサービスを貫きながら、受注を確保・増加させるには価格でのアドバンテージを取る必要があります。
原価率低減(限界利益率向上)に向けて、原価構造を見直しました。

内製化、条件変更・外注費再設定、外注新規先開拓を同時にスタートし、
1.主要材料による材料費削減
仕様変更(寸法、重量)による材料費削減、主型材料寸法軽減により、原価の50%以上を占める主要材料にメスを入れました。
重量=価格であるゆえ、価格単価の交渉、削減ではなく、技術を駆使して重量そのものの削減に取組みました。

2.社内加工前提にした部品調達
部品簡素化による部品自体の点数の削減、加工時間の短縮化による労務費の圧縮を実施。
グロス発注、複数社見積による単価のコストダウン、至急調達の廃止によるイレギュラーコストのカットを徹底しました。
開発、設計、購買がタッグを組み、短期集中で実行し、製造原価5%の改善を6ヶ月で成功させました。

ステップ2:価格対応できる原価基盤構築

原価構造の改革が進むにつれ、次に実施しなければならないこと、確立しないといけないことは市場価格に対応できる原価基盤を構築することです。
具体的な取組みとして、以下の項目を挙げました。

1.仕様簡素化による作業時間削減
加工条件の見直し(残業時間の削減、効率向上、加工高の向上)

2.消耗品削減
消耗品の回数削減、使用期間の延長による発注点の引き下げ

3.経費項目の洗い出しと削減案の立案
(1)少額を含む全ての勘定科目の洗い出し
(2)購入基準を決め、複数見積・購入の徹底

4.環境変動による安定稼働の体制づくり(内製化の取組み強化)
閑散期を活用した加工品増加、外注の内製化、他社への加工請負獲得による社内の不稼働時間の削減

5.標準原価の再設定と海外調達の強化による原価低減

6.案件検討会の強化による確認作業回数の低減

7.一括搬送、搬送回数の削減による物流コストの低減

上記の内容により、各原価項目の目標・進捗・対策の案件マネジメントを導入し、原価低減体制が確立しました。

ステップ3:生産性、収益向上のための基盤確立

収益の改善を確実にするには、「格差」の解消が重要になります。
季節変動による工場稼働格差の解消、作業人員による生産性格差の解消を成し遂げ、「安定稼働」をつくることが求められます。
実施事項は以下の項目です。

1.多能工化による繁閑格差の平準化
1人当たりの生産性指標を設定し、目標差異にPDCAサイクルの高速化

2.価格交渉(他社への切替、発注変更)、使用抑制等による原価削減

3.設計・仕様の変更(加工改善、内・外製の組見合わせ)、自動化・効率化に向けた工程改善の仕組み化

4.全社マネジメントの構築
(1)先行6か月の業績データ確認・各部門の実施事項の検証
(2)物件予算の進捗確認、削減対策
(3)各部門の先行管理、差額対策の徹底追及による精度アップ

部門セクショナリズムを払拭し、全社一丸で進めていくために、情報の共有や対策検討会、他部門のサポートを率先してできる体制を構築しました。
これにより、自社内で生産性、収益向上のための基盤を確立させました。

事業基盤確立のための営業強化

本業に経営資源、取組みを特化することで業績は1期で回復し、自社で時流に対応できる基盤を構築できました。
この基盤を継続し、安定していくためには営業体制を強固にする必要があります。
具体的な取組みは以下の通りです。

1.営業促進の体制構築
(1)先行管理(情報収集、見積、交渉)の精度アップと関連企業以外への営業展開(業界分散)
(2)情報管理シートの整備、営業プロセスの明確化・促進マネジメント

2.現業界の関連企業以外へ営業展開(業界分散)
業界設定、営業プロセス、営業ツールの策定と進捗マネジメントの実施

3.周辺業務の事業化による「営業展開」の組織化

4.営業展開の新展開検討等、デジタル営業への基盤づくり

5.全社営業体制の確立

受け身的な営業スタイルから、攻めの営業スタイルへの転換を目指し、組織全体をオールセールスとして、顧客への発信力を強化し、新規受注を強化する。また、人脈×情報を軸とした顧客戦略を中心に、顧客ニーズに合ったスペックイン型の営業スタイルの確立を目指していくことが今後の展開です。
F社は、更なる成長をとげる準備が整い、事業に邁進しています。

担当コンサルタント

タナベコンサルティング
コーポレートファイナンスコンサルティング
ゼネラルパートナー

近藤 正晴

トップ・幹部と一体になった経営視点からの生産性改革コンサルティングで幅広く活躍中。特に、製造業・建設業の原価改善・生産性向上を実現させ、高収益体質へと多くの企業を変革させている。「全ては基本から」を信条とした現場主義の改善活動で、社員のモチベーションアップ、人材の育つ社風・体質づくりに繋げている実績に対しても高い評価を得ている。

近藤 正晴

会社プロフィール

業種 金属金型製造業
所在地 愛知県
売上高 40億円
従業員数 150名

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タナベコンサルティンググループは
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志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
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コンサルティング実績

創業
200業種
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