CASE

収益構造改革の取り組みの第一は
「価格統制」

収益構造改革の取り組みの第一は「価格統制」

東京証券取引所に上場する企業の2022年度3月期決算の利益が過去最高を更新したというニュースはみなさんもご存じかと思います。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の影響などもあり、世界的に資源・原材料・エネルギーコスト等が大幅に高騰し、更に日本では賃金(労務費)も上がっている環境下であっても、上場企業が過去最高の利益を叩き出しています。要因としては、もちろん円安の効果が非常に大きいと思いますが、やはり、「値上げ、単価アップ」の効果が一番のポイントです。

そして、2022年度の中堅企業・中小企業の決算、また2023年度4月以降の先行業績予測を見ても、お客様に粘り強く単価交渉をし続けた結果、単価アップが出来ている企業は過去最高の売上高と最高利益の更新を予定しており、それが出来なかった、出来ていない企業は減収・減益予想となるケースが多いです。今後は益々、「収益の二極化」が進んでいくと予測されます。当たり前の話ではありますが、「単価アップは収益に直結する」。この当たり前の事が当たり前に出来ている会社は多くないようです。

地元ナンバー1企業の苦悩

低収益の原因は?

価格統制・マネジメントの強化で収益構造は変わる

A社は地元ではナンバー1の製造業であり、歴史もあります。いわゆる地域の名門企業でしたが、ここ10年の企業業績、特に売上高経常利益率は主要ライバル企業と比較しても10ポイント以上の差がついていました。原因としては、製品の種類が多い、製造現場の生産性が悪い、設備の自動化(設備投資)が進んでいない等、他にも色々と問題点・課題がありますが、一番の大きな問題点は「製品の価格政策」でした。

A社の営業担当者もライバル会社と同様に、現場でお客様と交渉して価格を決定していましたが、実態はライバル企業より20%以上も単価が安く、自社の製品を販売していました。お客様にとっては非常に有難い取引先だったと言えます。そのため、顧客アンケートでは営業担当者の評価はすこぶる高いものでした(当然、他の取引会社と比べて、大幅に安く売ってくれていたら、購買担当の営業担当者の評価は高くなるでしょう)。

将来の会社の収益構造などを見直す中期経営計画策定時に、営業部門の重点テーマとして、「価格統制・単価アップで収益力の強化」が自然と上がりました。また、会社としても自社製品の価格政策に対して、営業部の評価制度・KPI・評価項目・単価の決済ルールなども変更をしていき、管理監督者による価格統制とマネジメントを実行・徹底をさせるサポートも実施しました。その結果、例年、売上高経常利益率は2~3%で推移していましたが、取り組みを始めて1年で売上高経常利益率が10%を超えました。そして、価格統制と単価アップ政策により会社の収益構造が変わり、自社の目標経常利益額が大幅に達成されたことで夏・冬の賞与も満額以上で支給され、決算賞与も出たことで、社員のモチベーションは更に上がりました。

赤字になる負のステップ

企業が低収益・赤字になる負のステップとして、第一ステップは商品赤字が増えることです。そして、第二ステップは赤字の得意先が増えることです。第三ステップとして赤字の得意先が増えることで稼ぎ人社員が減ることが挙げられます。そして、第四ステップでは会社自体が赤字・低収益になるという負のステップを辿ります。A社はまさに第一ステップの商品の低収益化と第二ステップの得意先の低収益化が続いていたのです。そこから従来の単価政策にメスを入れ、営業責任者・営業担当者が粘り強く顧客と交渉をした結果、収益基盤が強化されました。現在は更なる製品価格の適正化と物流の効率化にも手を加えて、もう一段上の収益率向上を狙って取り組んでいます。

今、単価の見直しをしなくて、いつするのか?

資源・原材料・エネルギーコストが上がっている今の時代に、単価政策を見直すのは企業の収益構造改革の一丁目一番地であり、第一ボタンです。逆に今、この価格交渉をしないで、いつ価格交渉をするのか?と思えるほど、色々なものが値上がりしています。価格交渉はボディーブローです。断られても断られても継続して交渉するのです。営業担当者は大変ですが、営業担当者の役割は1年でも高く自社製品を売ることになります。会社の収益構造改革の取り組みをやっているつもりで我慢強く取り組んでほしいと思います。

今の時代は収益構造改革のチャンス

A社では営業担当者の安易な価格交渉にも問題はありましたが、問題の本質は管理者と監督者の価格統制・価格マネジメントの弱さでした。「値決めは経営」という原理原則が分かっていないのです。「放ったらかし、任せっぱなし、言いぱなし」の価格マネジメントでは絶対に値上げ交渉の進展はありませんし、収益構造の改革にもつながりません。それであれば管理者と監督者自らが現場に出向いて粘り強い交渉をしなければいけません(しかし、これが出来ていなくて、収益力が上がっていない企業がこの世の中になんと多い事でしょう)。

ぜひ、営業部門の責任者はこの辺りをご認識いただき、早急に価格戦略の見直しをしていただきたいと思います。そして、価格交渉はボディーブローです。断られても、断られても、何度も何度も粘り強く交渉する事で効果・成果は出てくるのです。

先ほども述べたように『値決めは「経営」』です。部門責任者が真剣に価格戦略を検討しないと、そして、向き合わないと営業担当者の本気の交渉力は引き出せません。部門責任者が本気になって初めて、営業担当者も真剣に価格交渉を取り組み始めるのです。この2~3年間、クライアント企業と先行して値上げに取り組んできているのでよく分かります。

現在の資源・原材料・エネルギーコストの高騰時代は企業にとっては大ピンチです。しかし、ピンチはチャンスであり、チャンスはピンチと言えます。このピンチの状況を粘り強く顧客と交渉をし、自社の収益構造を変えるチャンスとして取り組んで頂きたいのです。

担当コンサルタント

タナベコンサルティングのコーポレートファイナンス支援コンサルティングサービス

  • 経営安定化と持続的成長に向けた資本集約を実践したB社の実例

    経営安定化と持続的成長に向けた資本集約を実践したB社の実例

  • ホールディングス化による企業成長を目指し財務研修を実施したA社の事例

    ホールディングス化による企業成長を目指し財務研修を実施したA社の事例

  • 売上高経常利益率10%の取り組みは「平準化」がポイント

    売上高経常利益率10%の取り組みは「平準化」がポイント

  • ビジョン・中期経営計画達成のための財務研修

    ビジョン・中期経営計画達成のための財務研修

  • トップマネジメントが管理会計の再構築を行ったB社の事例

    トップマネジメントが管理会計の再構築を行ったB社の事例

  • 経営人材の実践的財務研修で成果を上げるA社の事例

    経営人材の実践的財務研修で成果を上げるA社の事例

  • 製造業B社の事業承継事例 ~カリスマ経営と後継者不在からの課題と解決の道~

    製造業B社の事業承継事例 ~カリスマ経営と後継者不在からの課題と解決の道~

  • 自律分権型の組織を実現するための経営システム

    自律分権型の組織を実現するための経営システム

WEBINAR

ウェビナー一覧はこちら

ABOUT

タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業
200業種
17,000社以上
2024年度 企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート