CASE

PBR1倍超を目指す成長ストーリーの策定

PBR1倍超を目指す成長ストーリーの策定

2023年3月末に東京証券取引所からPBRが低迷する上場企業に対して、企業価値向上に向けた改善策を開示・実行するよう要請がありました。長年他国と比べて、日本企業の収益性や資本効率および株価の低さが問題視されてきた中での問題提起といえます。
この要請を受けて、特に上場企業では中長期的に企業価値を向上させるための戦略・施策策定の必要性に迫られています。

企業価値向上とは

タナベの定義する企業価値ビジョン

上場企業におけるPBR1倍未満とは、企業価値≒時価総額が"元本割れ"している状態であり、企業価値が棄損している状態であるといえます。では、PBR1倍を超える部分は一体何なのか。このPBR1倍を超える部分こそ"社会価値"であり財務的以外の価値、すなわち非財務価値といえます。

日本企業が他国に対し企業価値において後塵を拝している背景として、この非財務価値(社会価値)への意識・認識が低いことが挙げられます。財務・非財務の両面から企業価値を向上させるためには、収益性の向上のみならず資本政策を考慮した資本コスト経営への移行、ならびに国際統合報告フレームワークに準じた非財務価値向上施策に取り組んでいく必要があります。

タナベコンサルティングでは企業価値向上に向けて7つの重点テーマを定義してます。

1.パーパスの再定義とMVVの確立

・自社の戦略設計する上での判断基準となるパーパスのアップデ-トとMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の確立

2.長期ビジョンロードマップの策定 ~経営資源の再配分とマイルストーンの策定~

・パーパスを軸とした長期ビジョンの設定とその実現にむけたロードマップの策定
・将来目指すべき事業ポートフォリオと競争優位性を実現するバリューチェンの再設計

3.価値創造ストーリーの策定 ~持続的成長を描くためのロジックの策定~

・価値創造プロセスの明確化とマテリアリティ年度別KPIの設計により、持続的成長のロジックを描く
・マテリアリティ年度別KPIとマテリアリティマネジメント体制の設計

4.人的資本計画の策定 ~非財務資本の中核を成す人的資本への投資計画の策定~

・非財務資本の中核を成す人的資本の可視化と投資計画の策定
・経営戦略と連動させた人材戦略の構築

5.中期経営計画 ~ビジョンを実現するための中期的アクションプランの策定~

・3~5カ年の中計経営計画(事業・組織・財務戦略)とアクションプランの策定
・戦略における数値基準(B/S、P/L、C/F)の策定

6.ガバナンス・リスクマネジメント体制の確立 ~企業価値毀損要因を排除する仕組みづくり~

・価値毀損要因の排除としてガバナンス推進体制の構築、内部統制システムの構築

7.IR・SDGs戦略 ~企業価値向上に必要な株主との対話~

・コーポレートガバナンス・コードへの対応策、ESG経営に対する取り組みなどを株主へ訴求する

上記をベースに中長期的なビジョン・戦略を描くことでPBR1倍超を維持し、持続的な企業価値向上を図っていくことが可能となるでしょう。

業界No.1企業における企業価値の低迷と改善に向けた取り組み

成長ストーリーを意識した中長期ビジョンの策定

今回事例として取り上げるA社は東証プライム上場の製造メーカーです。取扱商品とサービスは当該業界において不動のシェアを獲得しており、長らくリーディングカンパニーとして走り続けてきました。
反面、華々しい歴史と業績の裏でPBRは1倍を前後しており、1倍割れとなる局面も見受けられるなど企業価値向上に向けた取り組みが必要な状態でした。なぜ好業績ながら企業価値が棄損する恐れが生じているのか。それは"投資家からどのようにみられているのか"という視点を交えれば改善に向けた切り口がうかがえます。
当社の取り扱っている商品はトップシェアながら、参画しているマーケット自体に閉塞感があり、かつ当社はそこから脱するための成長戦略を投資家が満足できるレベルで打ち出せていなかったのです。自社のプライオリティを示し新たなマーケットを切り開くような、より投資家に訴求するための中長期ビジョンの策定が急務でした。

投資家目線を踏まえた中長期ビジョンの策定のポイントとして下記が挙げられます。

1.企業の株式価値増大のポテンシャル=利益創出力の将来成長性および安定性が分かりやすく、簡潔かつ明確に示されている
2.同業他社に対して優位性を主張できている
3.安定性・定量目標が有機的につながっており、成長性・安定性をアピールできる「ストーリー性」と「説得力」、限られた報告時間で理解を得る「簡潔さ」と「分かりやすさ」がある

上記3点を概して「長期的な企業価値向上に向けた成長ストーリー」と定義します。特に事業戦略においては

・"事業分野の市場成長力、収益環境、戦略、強み・弱み"を理解したうえで
・成長分野(マーケット)を特定し、"強み"をぶつける
・"弱み"を克服するための施策を検討する

ことが重要となります。

今回のコンサルティングではディスカッションとタナベからの視座を交え、特に重点的に議論を尽くした部分といえます。自社の強みを洗い出し、それぞれの事業のマーケットCAGR(成長率)を整理したうえで中長期的にどこにリソースを投下していくのか、戦略を固めたうえで定量計画に落とし込んでいきました。

また、今回中長期ビジョン策定においてはIRを意識した内容を重要視しました。自社内で完結するのではなく、投資家との対話を深めるための内容とするためにはどのような見せ方が良いのか、という点です。
ここで、単なる今後の成長戦略ではなく"成長ストーリー"と定義した背景があります。どのように戦略と数値目標をつなげるのか、また、策定した非財務戦略がどのように事業・財務戦略に融和するのか。多くの企業ではこの部分でつまずいている部分であると考えます。

上記を全て織り込みストーリーだてた中長期ビジョンの策定により、閉塞した現状からの打破を図った事例といえます。
他の上場企業の皆様におかれても、"成長ストーリー"を意識し財務・非財務の両面から自社の将来を描くことを希求します。

担当コンサルタント

タナベコンサルティング
コーポレートファイナンスコンサルティング事業部
ゼネラルマネジャー

公文 拓真

地方銀行にて、リテールからホールセールまでを対象とした融資・預金・投資を取り扱う。入社後は管理会計を中心とした財務戦略や、ホールディングによる資本戦略策定などに従事。企業価値向上の観点による中期経営計画策定など、コーポレートファイナンス分野における上場企業向けのコンサルティング支援を得意とする。

公文 拓真

会社プロフィール

業種 製造業
所在地 東京都

タナベコンサルティングのコーポレートファイナンス支援コンサルティングサービス

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タナベコンサルティンググループは
「日本には企業を救う仕事が必要だ」という
志を掲げた1957年の創業以来、
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、
17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。

企業を救い、元気にする。
私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

創業
200業種
17,000社以上
2024年度 企業価値向上に向けた取り組みに関するアンケート