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ブランドの魅力を正しく伝える!
PRストーリーの考え方と作り方

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ブランドとは顧客が持つイメージであるため、PRもブランディングにおいては重要なタスクとなります。本稿では、ブランドを魅力的にPRするための基本的な考え方である「PRストーリー」とその構築方法を説明いたします。

ブランド・ブランディングとPRストーリーの関係

タナベコンサルティングでは、ブランドを「その企業や商品の提供価値や、さまざまな構成要素、コンタクト体験が複合的に結びついて、消費者・顧客の頭の中で作り上げられるイメージ」、そして、ブランディングを「企業や製品・サービスによって提案したいCI(コーポレートアイデンティティ)やブランド独自の価値を魅力的に伝えることで、消費者・顧客にその価値を認知させ、イメージを向上する活動」と定義しています。
ブランドとはあくまで顧客が持つイメージであるため、いかに優れたブランドであっても最終的にそれを発信し、顧客に理解してもらわなければ意味がありません。その点で、多くの顧客にイメージを持ってもらうためのPR活動もブランディングにおいて重要な項目のひとつです。
それでは、自社のブランドを魅力的なものとしてイメージづけるためにはどのようなPRが必要となるのでしょうか。本稿ではそれを検討するための基本的な考え方として、「PRストーリー」をご紹介いたします。

PRストーリーとは

本稿では、PRストーリーを「ブランドの価値に共感を覚える顧客を見定め、最適なメッセージと媒体によって発信するために体系化された導線設計」と定義します。
繰り返しとなりますが、ブランディングにあたって最重要かつ大前提とも言うべき要素のひとつが「顧客視点」です。
「自社のブランド・商品・サービスはこんなに良いものですよ」という一方的なメッセージの発信は、企業側の単なる「都合」に基づくものであり、顧客視点となっていません。また、ブランドが良いことはどの企業であっても同じであるため、競合との差別化に繋がりません(そもそも、自社の商品・サービスが悪いという企業はありませんよね)。
自社の商品・サービスに価値を感じるターゲットを見定め、そのターゲットがブランドに魅力や共感を感じるメッセージやイメージを構築し、その発信に最適な媒体を選定する。このプロセスを一貫したストーリーのように体系化したものがPRストーリーです。
プロセスそのものはブランディングにも似ていますが、ブランディングでは最終フェーズで検討することとの多いPRを、主要要素として構築段階から組み込んでいる点が異なります。
なお、タナベコンサルティングではPRを単に広報活動などでブランドを露出させることではなく、ステークホルダーとの関係すべてをPRと考えています。
したがって、ターゲットは、ブランドを選択する消費者だけでなく、一般生活者、株主、取引先、自社社員、あるいは、情報を取り上げるメディア・媒体社に至るまで、自社にまつわる世界・社会に生きる全ての人々が対象となる可能性があります。この点において、業界・業種に関わらず、PRストーリーはブランディングに関わる全ての人が念頭に置くべき概念のひとつといえます。

PRストーリーの設計方法

①ターゲットオーディエンス/ペルソナを設定

②カスタマージャーニーの設定

それでは、PRストーリーはどのように組み立てればよいのでしょうか?
基本的には2つのステップを抑えておけば大丈夫です。


①ターゲットオーディエンス/ペルソナを設定する
まずはじめに、ブランディングの過程において設定したブランドターゲットに、様々な情報を付与して、ターゲット像を明確化します。
本稿ではいったんシンプルに、それを「集団」として設定したものが「ターゲットオーディエンス」、「個人」まで落とし込んだものが「ペルソナ」と定義します。付与する情報はほぼ共通しているためです。
付与する情報とまとめ方の一例を以下の図に示します。

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ターゲットオーディエンス/ペルソナを設定

出所 : タナベコンサルティング作成


ターゲットのデモグラフィック・サイコグラフィック情報から興味関心、日常的に触れる情報入手手段や購買行動まで、細かく設定していきます。ターゲットのイメージに近い人物の写真を入れるのも良いです。
ポイントは、一人で考えないことです。考えた個人の性格・特性によるバイアスがかかってしまい、あるべきターゲット像とならない可能性があります。ターゲット像に近いことが想定されるメンバーを含む複数人でブレストを行ったり、聞き取りを行うようにしてください。また、付与した情報の裏付けとなる調査・アンケート資料などもあると、より説得力のあるイメージ像が成り立ちます。



②カスタマージャーニーの設定
続いて、ターゲットオーディエンスもしくはペルソナが、ブランドを初めて認知する状態から最終的に選択に至るまでに触れる情報入手手段と、それに伴うインサイトの変容をまとめます。これを「カスタマージャーニー」といいます。以下に設計の一例を記載します。
まず、横軸にインサイト・行動の変容のプロセスを並べます。この際、そもそも横軸に何を設定すればよいのか分からない場合は、購買行動モデルをベースにすると良いでしょう。基本的なモデルとして最もよく知られるものは、購買行動を「Attention=認知」「Interest=興味関心」「Desire=欲求」「Action=行動・購入」「Action=購買」という5つのフェーズに整理した「AIDMA(アイドマ)」モデルです。
また、このAIDMAモデルがベースとなり、インターネット普及後の基本モデルとしてよく知られるのが2005年に株式会社電通が提唱した「AISAS(アイサス)」モデルです。AISASモデルでは、消費者の購買行動として「Attention=認知」「Interest=興味関心」「Search=情報収集」「Action=行動・購入」「Share=共有」の5つのプロセスを設定しています。単にブランドに触れることで終わりではなく、それを気に入り(=ブランドに愛着を持つ)、「共有する」というプロセスが含まれています。これらのモデル以外にも、時勢に合わせて様々な消費行動モデルが生まれています。施策の目的などに応じて選択してください。

本稿では、AISASモデルをベースにしたカスタマージャーニーの設計例を説明します。
まず、AISASモデルにおける「認知」「興味関心」「情報収集」「行動・購入」「共有」を並べます。次に、縦軸に「現在のインサイト」「タッチポイント」「コンテンツ」「接触後のインサイト」を並べます。そして、これらをマトリクス化します。

カスタマージャーニーの設定

出所 : タナベコンサルティング作成


あとは、この図を埋めていく作業を進めます。
「現在のインサイト」には、顧客が現在困っていること・もっとこうなれば良いのにと考えている願望を記載します。例えば、認知の列では「〇〇に困っているが、現在使用しているブランドではそれが叶えられない」などという内容が考えられるでしょう。
次に、「タッチポイント」では、各プロセスの達成に向けてターゲットが接触しうる情報入手手段を記載します。「認知」を促すのであれば、テレビCMやウェブ・SNS広告、広報・記者会見などが考えられますし、「検索」の段階であればより詳しく情報を提供する必要があるため、自社ウェブサイトやブランドLPの構築、あるいは、長尺の動画の活用などが検討の対象となります。
「コンテンツ」ではターゲットの目線に立ち、課題・ニーズを持つターゲットに"刺さる"であろう訴求内容や施策を記載します。例えば、「共有」してもらうためには、繰り返しブランドに触れてもらってブランドに愛着を持ってもらう必要があります。そこで、継続的に使用することでインセンティブが得られるキャンペーン実施するといった手が考えられます。
最後に、「接触後のインサイト」では、タッチポイントに触れることで、ターゲットのインサイトがどう変化するのかを記載します。例えば、タッチポイントでインフルエンサーを使用することがふさわしいとなった場合には「〇〇が使っているなら自分も使ってみたい」というような内容になります。
本稿では消費行動モデルをベースに、縦軸もシンプルなものを採用しています。よって、設計していく中で、しっくりこないものがあったり、他にもプロセスがあるのではないか、という場合には追加・修正してください。あくまで目的は「ブランドを初めて認知する状態から最終的に選択に至るまでに触れる情報入手手段と、それに伴うインサイトの変容」を整理することです。
例えば、さきほど「共有」のコンテンツとして、ブランドとの継続的な接触を促すキャンペーンを例に挙げましたが、その前に「愛着」というプロセスを追加してそこにキャンペーンを設定、「共有」にはECサイトへ口コミ投稿してもらうためにさらなるインセンティブを与える別のキャンペーンを設定するということも考えられます。
上記の過程を経て設定されたカスタマージャーニーの中から、ブランドの現在のポジション・予算・時期などに合わせて最適と考えられるPR手法を採用してください。

価値消費モデルを押さえ魅力的なPRを検討する

これまでのステップで、ターゲットの属性と行動を元に、ブランドとの接触状況に応じた情報入手手段とコンテンツを整理できました。
最後に、ブランドが魅力的に映るPRを検討するための基本的な考え方として、「価値消費モデル」について説明します。
次の図は、その価値消費モデルをまとめたものです。

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価値消費モデル

出所 : タナベコンサルティング作成


高度経済成長期においては日本の円の価値がどんどん上昇し、物価も収入も右肩上がりに上昇していきました。そんな時代には、高価なものや珍しいものを消費することに価値がありました。それを「モノ消費」といいます。
ところが、バブルが崩壊しモノの価値が低下すると、ブランドを選択することでどのような「体験」を得られるのかという「質」に価値が置かれるようになります。これが「コト消費」です。ここでいう体験とは、ブランドを選択することによって得られる便益を指します。例えば、ヨーグルトが単においしいだけでなく、菌の効果で健康に良い影響がもたらされることなども「コト」に当たります。
そして、SNSの急拡大に伴って、モノやコトを自分だけで消費するだけではなく、それを共有することに価値が置かれるようになります。逆に言えば、共有する価値があるものに人々は消費を行うようになりました。これを「ヒト消費」といいます。
ここで、新型コロナウィルス感染症の世界的拡大という人々の価値観を大きく変える出来事が発生しました。これにより、2つの価値がフィーチャーされるようになります。
1つは感情です。体験の機会が絶たれたため、ヒトに共有できるものは感情が主体となります。感情を発信し同じ考えを持つ人々がそれに共感を示してくれることで精神的にコミュニティに所属しているという安心感が得られます。この考えは、アフターコロナと言われる現在も続いており、リアル・リモートに限らず感情を共有できることに価値が置かれ、それを提供するものに人々は消費を行うようになりました。これを「エモ消費」と言います。
もう1つは社外的意義です。同時に、いつ何時、どのようなネガティブな事態が自身の身に降りかかるか分からないという考えが、将来や未来を考える対象を自分自身や所属する小さなコミュニティから、社会・地球規模にまで広がりを見せます。自身がブランドを選択することで、社会や地球環境にプラスの意義がもたらされることに価値を感じ消費を行うことを「イミ消費」と言います。
このように、PRストーリーは「エモ」「イミ」をいかに喚起するのかということを基点に検討すると、顧客にとって魅力的なものに映るようになります。もちろん、「モノ」「コト」にまったく価値がなくなったという訳ではなく、ターゲットが価値を感じてくれると判断した場合には採用します。

以上、PRストーリーについて説明して参りました。
その前提としてのブランディングに課題を感じている、自社のブランドをどのように消費者にPRすべきか悩んでいるという方がいらっしゃいましたら、ぜひタナベコンサルティングにご相談ください。

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AUTHOR著者

タナベコンサルティング
ブランド&PRコンサルティング事業部

荒谷 公平

全国紙新聞社、カーシェアリング事業会社、広告代理店を経て当社に入社。主に、流通小売業や食品・日用品メーカーなどのBtoC企業における生活者目線のソリューション提案に強みを持ち、マーケティング戦略構築から、セールスプロモーション・会員獲得の企画立案実行まで、企業の課題解決をトータルにサポートする。

荒谷 公平
ブランディング・PR/広報に関する相談会

DOCUMENTお役立ち資料

CONSULTATION 相談会

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