IT化とは?成功事例を基に自社へ生かしていくポイントを学ぶ

コラム
DXビジョン&ビジネスモデルDX 戦略・計画策定 ERPRPAデータ活用業務効率
IT化とは?成功事例を基に自社へ生かしていくポイントを学ぶ
目次

1.取り巻く環境の変化

2020年から続いた新型コロナウイルスの影響から多様な働き方が求められ、多くの企業がテレワークをはじめとしたIT化の対応が求められました。また、2024年より運送業や建設業にも適用される「働き方改革関連法」により生産性向上は避けては通れない状況です。ChatGPTをはじめとしたAIの登場や製造業や建設業に導入が進んでいるIoTといった技術革新など、取り巻く環境の変化が著しくなりました。DX(デジタルトランスフォーメーション)と様々な場所で目にし、耳にする機会も多くなってきたのではないでしょうか。将来予測がより一層難しくなってきている現代において、業務の効率化・省力化だけでなく、経営層のスピーディーな経営判断が求められています。
本コラムではIT化とは何かを定義したうえで、重要性やメリット・デメリット、具体的な方法についてポイントを解説します。

2.IT化の基本

(1)IT化とは

はじめに、本コラムのタイトルにもある「IT」とは、「Information Technology」の略称であり、普段皆さんが使用しているスマートフォンやコンピューター、インターネットなどの技術全般を指します。IT化とは上記技術を活用することで、これまでアナログな方法で進めていた業務をデジタル化に置き換え、業務効率化・コスト削減を進めていく活動を指します。
例えば、営業に関する顧客情報や見積・売上情報等を紙や個人の頭の中で保管・記憶し、アナログ的に管理・経営判断をするのでは、情報収集に時間がかかり、決して適時適切な判断ができるとは限りません。IT化ですべてデータ化し、数字や図によって「見える化」することで合理的かつ将来を予測した経営判断ができるようになります。書類作成一つとってもすべて紙の場合とIT化をしているのでは効率性・生産性は雲泥の差です。今やITと経営は切り離して考えることはできず、企業の規模に関係なく、経営を推進していくための一手段として考えていく必要があります。
「Digitize or Die(デジタル化か死か)」。こちらは2015年のワールド・マーケティング・サミットでマーケティングの父であるフィリップコトラー教授が発言された言葉です。極端な表現ですが、IT化ができていない企業はスピード感ある対応ができず、淘汰される時代に変化してきています。現代において企業が生き残るにはIT化は必須と言っても過言ではありません。重要な経営手法の一つとして認識する必要があります。

(2)DXとの違い

最近耳にすることが増えた「DX」は経済産業省の定義では、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指します。

※引用元:経済産業省 デジタルガバナンス・コード2.0 P1
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dgc/dgc2.pdf

DX化を進めていく上では大前提として、アナログからデジタルへ変革させる「IT化」が必要となってきます。

(3)IT化のメリット・デメリット

IT化の重要性は先述の通りですが、活用していくにはメリットとデメリットをそれぞれ理解する必要があります。メリットだけでなくデメリットも理解して進めていくことで、打つべき手が明確になります。
改めて以下に整理します。

メリット
①業務効率化
企業がIT化をするメリットのひとつとして、業務の効率化が挙げられます。
これまでアナログで実施していた手間や時間のかかる業務に対し、ITツールを適用することにより、時間削減やかかっていた人数の削減等の省力化、運用負荷の軽減につながります。効率化ができれば、単純作業から解放された時間や労力をより重要度が高いことに使えるようになります。そのため、時間当たりの生産性向上を図れます。
また、効率化を進めていく中で、自動化も可能になります。例えば、これまで顧客に送る定型文のメールを1件1件作成して宛名を変更し、送信する業務をしていた場合、あらかじめリストの整備や定型文を設定することで自動送信が可能になります。極端な例ですが、半日かかっていた業務を自動化することにより、実働5分で完了できるということも可能になります。また、人が稼働していない時間帯に動かし、出勤時には資料が出来上がっているようなことも現実的に可能です。
IT化によって受けられる恩恵として、業務効率化は一番わかりやすく、目に見えやすい成果にもなり得ます。

②コスト削減・利益向上
コスト削減もメリットと言えます。IT化によって、紙で対応していた作業のペーパーレス化や、作業にかかっていた人的リソースの削減が実現できます。上記①の効率化によって残業時間の削減にもつながり、トータルの人件費も削減できます。
結果として、利益向上に繋がることもメリットといえます。業務効率化・生産性向上により売上増やコスト削減を実現することができるため、その結果全社の利益向上という効果も期待できます。

③情報を管理・共有しやすくなる
IT化することで会社・個人が保有している情報をデジタル化でき、管理やアクセス、社内共有がしやすくなります。
紙の場合、書類毎に印刷し、ファイリングしなければ、紛失のリスクもあります。また、情報伝達の手法として、紙の書類や口頭のみの場合、直接渡す・伝える必要があり、すぐ共有したくてもできない可能性があります。
しかし、ITを活用したデジタルの情報なら、メールやチャット・電子掲示板などでいつでも「簡単に」「即時に」共有でき、アクセス権限やパスワードなどによって情報流出を防ぐための管理もしやすいです。
情報管理・共有の利便性が向上すれば、細かい手間が削減でき、よりスムーズに業務を遂行できます。

④データを基に正確な判断ができる
IT化によって、顧客・販売・生産・調達等の様々な情報をデジタル化すれば、得たデータをもとに正確な判断をすることができ、営業戦略や人材配置、商品・サービスのブラッシュアップにつなげ、ひいては収益アップを実現できます。IT化によりデータ化することで見えてくる現場の傾向や規則性は、経営や事業戦略における判断に有効です。
例えば、飲食や小売業の場合、日々の顧客データ・販売データを集計し、顧客の属性や嗜好を分析することでメニュー開発や仕入れに顧客の生の情報を反映することができます。結果として、顧客の満足度向上につなげられます。これまで月次、週次の報告を基に打ち出した判断を、現在のデータをリアルタイムで「見える化」することによって、打つべき手もリアルタイムで判断・実行していくことが可能になります。
デジタル化したデータを集計し活用することで、自社の商品・サービスの改善点や顧客への効果的なアプローチ方法の仮説・戦略を立てやすくなり、スピーディーかつ最善の選択が実現できます。

デメリット
①導入コストが発生
デメリットのひとつとして、導入コストが発生する点があげられます。現在の業務に支障を与えることなく進めていくためにも、既存システムを稼働している中で新しいシステムを導入するためのコストも発生します。

様々なシステムが普及してきた現代においても、活用するシステムやツールによっては数十万円〜数千万円の費用が必要になることが少なくありません。
また、システム・ツールの導入費用だけでなく、従来の業務の進め方から新システムに基づいた新しい進め方への移行も必要になります。そのため、業務フローやルール等新たなガイドラインを定める手間などもかかることになるでしょう。ただ、選択肢を狭めず、目的に照らし合わせたシステム・ツールを選択することで、より導入コストが安価、かつ直感的に操作でき負担が少なく導入効果が高いものを活用することができます。
まずはIT化の初期段階では低コストかつ対象範囲を絞った「スモールスタート」の形で始めることをおすすめします。

②社内の理解が必要
デメリットかつハードルにもなりますが、IT化を進めていくうえで実際に使う社内メンバーの理解を得る必要がある点が挙げられます。
社員の年齢層が高いほど「パソコンは使いたくない」「紙の方が見やすい」「言葉がわからない」という声があがり、IT化に後ろ向きになりやすいです。特に伝統・風習を踏襲していく企業では、新しいシステムの導入に反発が起きることもあり得ます。IT化を推進していくには進めていく必要性や導入した結果反発した層が得られる効果などを共有し、十分に理解を得ることが大切です。導入の目的・目指す姿と照らし合わせ、社内の協力者を巻き込みながら進めていくことが肝心です。

3.IT化を推進していくために

(1)IT化推進のポイント

IT化を進めていくためのポイントについて解説します。 大きく3つのステップで進めていく必要があります。

取り組みステップイメージ
※タナベコンサルティング作成

ステップ1: 現状把握(As-Is)
現状の業務上の課題(業務のやり方、フロー等)やシステム上の課題(情報の点在化、データ連携できているか等)を整理していく必要があります。
皆さんの会社に同様の課題はないでしょうか?
ケース1:自社内の各部門が採用したシステムにデータが点在し、マスタが不統一な状態。
ケース2:属人的な業務となっており、運用方法がブラックボックス化し、二重入力に代表される無駄が発生している。
ケース3:業績把握のために、各部門から紙・データを集め手作業で集計・加工が必要のため時間がかかっている。
上記のような社内の現状の課題及びその悪さ加減を定量的・定積的に把握します。

ステップ2:現状を整理したうえであるべき姿を明確にする(To-Be)
ステップ1で自社の現状を押さえたうえで、システムのあるべき姿・目指す姿を描いていきます。上流から下流までのデータを一気通貫できる全体構想を描くことが重要です。業務に関するものだけでなく、財務や経理、人事労務などのバックオフィス業務も含めた全体最適の視点が必要になります。個別最適に業務システムやツールを導入するのではなく、全体を俯瞰してあるべき姿を描いていくことが重要です。システムの全体像だけでなく、業務(効率化された状態)のあるべき姿や組織(運用体制)のあるべき姿を描くことも必要です。

あるべきシステム全体像の例
※タナベコンサルティング作成

ステップ3:あるべき姿に立ち返りながら、IT化を推進していく(Can-Be)
いよいよシステム選定・導入フェーズです。あるべき姿で描いた内容は一朝一夕で導入・定着できるものではないため、時間軸、難易度を加味し優先順位を定め、実現可能性を考慮しながら導入・推進していく必要があります。
システムやツールを導入する際は現在の業務の延長線上ではなく、業務の再構築を行いつつ推進していく必要があります。システム・ツール選定時も「特定のシステムありき」で考えるのではなく、各システムやツールで何ができるかを把握したうえで、自社が求める機能要件にマッチしたものを選定していくべきです。
導入業者まで選定した後に、実際の導入フェーズに入ってきます。長いものでは1年以上かかるシステムもあります。長い期間がかかる場合、時間とともに目的が薄れてしまいますが、導入フェーズにおいてもシステムのあるべき姿に立ち返りながら構築していくことが肝心です。また、導入完了まで業務の再構築や組織の立ち上げを待つのではなく、同時並行で動ける部分から推進していく必要があります。
自社で実現できる部分、導入業者等外部の力を借りて実現できることを整理し、あるべき姿の実現を推進していきましょう。

(2)IT化を実現した企業事例

IT化を推進した企業の事例をご紹介します。

①製造業 A社
【課題】
販売管理が紙の台帳に売上表を見ながら個人が電卓を叩いて計算しており、検算等に手間がかかる上に細かなミスが多く、正確に売上げや利益を把握するのに時間がかかっていました。長年のやり方に抵抗はあったもののIT人材の入社を機に、旧態依然の社内業務を改め、生産・仕入れ、在庫、物流を正確に把握してきたい思いがあり、IT化に踏み切りました。
【実施事項】
上記課題の解決のため、クラウド型基幹業務システムを導入しました。導入にあたり、会社側のメリットだけでなく従業員目線でのメリットを伝えながら推進を図りました。
【効果】
各データの連携も図れ、生産・仕入れ、販売、在庫の数字が正しく把握できるようになったため、経営が適正化しました。
クラウド型システムの利点を生かし、リモートワークや外出先の見積作成等が可能になり効率化が図れました。事務作業や営業報告書の作成もすべて出先で可能なため、帰社してから書類作成する残業がなくなり、定時で上がれるようになりました。他部門も手入力や手計算の手間が激減し、結果として、従来2〜3日かかっていた業務が1日に短縮され、残業コストの削減により利益率も1〜2%増になりました。

②建設業 O社
【課題】
タイムカードによるアナログな勤怠管理を行っていたことから、⼯事現場勤務者は打刻を行うためだけに、本社へ出社・帰社することが常態化しており、移動に伴う従業員の負担も大きい状態でした。
【実行事項】
勤怠・労務管理ソフトを導入し、手持ちのスマートフォンを利用することで⼯事現場での打刻を可能とし移動時間を削減しました。有給休暇の申請もITツールの活用開始にあわせ、1⽇→1時間単位で取得できるよう就業規則を改定しました。
【効果】
移動時間削減により、残業時間が3分の1に削減されました。従来タイムカードも手作業で集計していましたが、かかっていた時間も2⽇から1⽇と半減し、IT化した利便性を実感するようになりました。また、ツール利用により申請ハードルが下がったことから有給休暇消化率もアップしました。

4.おわりに

外部環境の変化が著しく、かつ予測不能な現代において、企業が生き残るにはより一層のスピードが求められています。適宜適切に、持続的な成長を実現する経営判断を下すためには、リアルタイムの情報把握とデータ活用が必須です。IT化をすることですべてデータ化し、数字や図によって「見える化」することで合理的かつ将来を予測した経営判断ができるようになります。まずはわが社の現状(As-Is)を押さえ、システムや業務、組織のあるべき姿(To-Be)を整理したうえで、IT化を推進(Can-Be)していきましょう。

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AUTHOR著者
デジタルコンサルティング
チーフコンサルタント
瀧澤 亮斗

IT企業にてシステムやハードウェア導入、ネットワーク効率化など、幅広い領域の提案営業を経て、当社に入社。企業の基となるビジョン策定・人事制度再構築に携わりながら、企業の目指したい姿をDX視点で実現するためのDXビジョンづくりやIT構想化支援のDX領域も手掛ける。パートナーとしてクライアントの業績向上を達成するため、日々奔走している。

瀧澤 亮斗
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