デジタル化の遅れ(物流業界)

コラム 2023.04.03
DXビジョン&ビジネスモデルDX 戦略・計画策定 市場
デジタル化の遅れ(物流業界)
目次

業界全体のデジタル化の現在

物流の市場動向に目を向けると、EC市場の成長というのが今後の業界を見ていく上で抑えるべきポイントになってきます。現在日本のEC市場は年平均約10%(※出典:経済産業省「令和2年 電子商取引に関する市場調査」より)程度の成長率となっています。
現在は物販に占めるECの比率は8%程度になっていますが、欧米の12~14%程度と比較すると、まだまだ伸びしろがあると考えられます。現在のコロナ禍の影響もあり、デジタルでモノを買う機会は増えていくことは間違いない傾向であると考えます。
ECの物販が増えるにつれ、相対的に小さい荷物が増えていくことにも繋がり、いわゆる物流需要は継続的に高まっていくことがいえます。
一方で、toBの企業間物流においても、継続的に需要が伸びていくと考えています。流動ロットの構成比(※出典:「平成28年度 全国貨物純流動調査」)を見ても、このデータはひとつの運航当たりで運んでいる荷物の量についての推移を示したものですが、2015年のデータを見ると、0.1トン未満の非常に軽い荷物(小口軽量輸送)の割合が約8割に達しています。1トンを超えるような重量のある荷物の割合が少なくなってきており、小口多頻度の輸送が増える傾向にあることから、運行回数も増えることが推察されるため、継続的に伸びていくことが想定されます。

また、先端的な技術の活用についても、総務省から出ている通信利用動向調査(令和2年度)で見てみると、「クラウドの利用率」においては運輸業の郵便業が57%にとどまっており、不動産業(86%)、金融・保険業(81%)、建設業(76%)、製造業(68%)と比べても相対的に低いのが現状となっております。また、利用率を資本金規模別で見ても、中小企業ほど利用率が低下しています。
さらにクラウドの利用要素を見てみると、メールやファイル共有で活用されている比率は50%を超えており高くなっていますが、受注販売や精算管理・物流管理・店舗管理で活用している比率は10~12%と利用率が低く、基幹業務における活用はまだまだこれからであると考えられます。
これだけを見ても、クラウド等の先端的な技術・デジタルの力を活用することで、生産性を変革していく余地は大いにあると考えられます。

DXを活用した先進事例

DX=デジタル技術を用いた経営革新と定義した場合、デジタル技術を用いた成功事例として、モビリティ領域のDX事例となりますがJapanTaxiを紹介します。
JapanTaxiは広域をカバーするモビリティ情報インフラを構築した事例です。
タクシーの会社ですので、従来乗客や車両のデータはありましたが、これをしっかりと"使える"データとしていったことからスタートしました。
乗客位置情報・目的地・利用予定時間や、車両位置・輸送ルート、決済情報・顧客属性、走行データ・外部環境情報といったタクシーの運航に関わるすべての情報をまずデータ化しました。
次に、このデータを用いて、乗車体験の向上や業務効率化に取り組みました。
JapanTaxiのアプリを目にしたことがある方も多いと思いますが、このアプリによって集客チャネルの拡充と、今まで人が受けていた配車業務の省人化にもつながっています。

さらにJapanTaxi BUSINESSといったサポートも展開しており、企業の配車予約のサポートを実施したり、配車履歴の管理・また経費精算システムとの連動など、プロセス全体をデジタル化していくことで利便性を向上させました。
その他にも、車内タブレットの導入でキャッシュレス化への対応、動画広告の導入で新たな収入源の確保までをデジタル活用で実施することができました。最後に運転手へのサポートとしてDriveChartシステムの導入で、運転行動分析や運用サポート支援まで活用しています。
様々な業務プロセスをデジタル化していくことにチャレンジしていきました。

最終的には、広域情報インフラとして、これらの情報が活用されることを目指しており、タクシー配車のエコシステムというところでJapanTaxiのアプリデータのAPI提供を実施し、他社にも活用されること目指しています。将来的には自動運転にも適用させていくことも想定しています。
また需要予測や、データプラットフォームという形で、各社とも連携しながら新しいモビリティプラットフォームの構築にJapanTaxiは向かっています。

この事例の素晴らしいところは、これまでずっと持っていた情報をデータ化していくことです。それが業務効率化であったり、様々なプロセスの業務改善につながる仕組を構築したこと、そして最終的には自社だけでなく他社や他業界を巻き込んだ形で、新しいサービス開発までDXを推進していった事例であることです。

どのように変えていくべきか 今後の方向性

では、どのように変えていくべきでしょうか。
まず、企業の物流に関わるノンコア業務を標準化し、物流・人材・在庫状情報などをデジタル化し、自動化・最適化することが必要になってきます。
それをかなえる1つの考え方が、物流のプラットフォーム化であると考えます。
業界全体のサプライチェーンを見据え、各社の競争領域ではなく、協業領域として業界別に他社同士がプラットフォームを共有することで、全体効率化が可能となります。
企業は、少ない労働人口でも効率的に価値の高いコア業務に人材を割くことが可能となり、ビジネスのさらなる成長にもつながります。

コロナ禍でEC需要が拡大する環境の中、ラストワンマイルを「非接触」にするなど手段の変革が進んでいます。最新技術を活用した効率化です。佐川急便はAIを活用した不在配達を減らす技術に期待を寄せ、東京大学初のスタートアップ企業「JDSC(東京都文京区)」とともに開発している技術がその1つです。家庭の電力使用量などから在宅・不在を予測するAIを開発し、再配達の減少や、車両の走行距離を減らすための最適な配達ルートを示すシステムの構築などを目指しています。最先端のシステムが現場の労働負荷軽減にも寄与しており、今後の「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」につながっていきます。

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