IT化構想における基本フレームワークと成果を出すための着眼点

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IT化構想における基本フレームワークと成果を出すための着眼点
目次

IT化構想の基本フレームワークと4つのフェーズ

タナベコンサルティングでは「IT化構想」は単なるシステム化計画ではなく、「デジタルを活用した"あるべき業務"の設計図づくりであり、具体化に向けたロードマップと実行推進を行うこと」とクライアントにお伝えしています。

IT化構想の要諦は、
✓業務マターではなく経営マターでデザインすること
✓部門での実行を前提としつつ、全社最適で設計を行うこと
✓戦術を有効に機能させるために戦略発想で取り組むこと
であり、業務「改善」ではなく業務「変革」するためのIT化構想を具体化するための基本フレームワークは以下の図のように表されます。

基本フレームワーク
図1 基本フレームワーク
※タナベコンサルティング作成

基本となるフレームワークは大きく4つのフェーズに分かれています。

【フェーズⅠ】変革案出し

中長期ビジョンや経営戦略に基づき、デジタルを活用した変革案を検討するフェーズです。会社としての大きな変革テーマや、想定されるデジタルディスラプション(デジタルによる創造的破壊)への対応など、全社の目的・目標を実現するためにデジタル活用で何ができるのかを検討します。
現在の日本経済を30年ぶりのデフレからインフレへの転換点と捉えると、今後は金利上昇に備えたタイムリーな業績管理システムの必要性や、人件費コストの割合が低いデジタルチャネルの強化など、複合的な経営戦略と歩調を合わせたIT化構想が求められると考えます。

【フェーズⅡ】構想設計

デジタル活用した変革案をIT化構想として描くフェーズであり、どこまでの範囲で設計するか、成果をどこに定めるかがポイントです。
構想設計の範囲は、企業本体のみか、グループ間連携も含めるのか。定義を決めたうえでERPシステムの導入などデジタルソリューションの導入を検討します。
またIT化構想を通じて何を成果目標とするのか変革指標の設定もこの段階で行います。
KGI(Key Goal Indicator:重要目標達成指標)とKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を定めて成果ロジックを明確にすること、組織を一つのベクトルに向かせて動かすところまでをイメージしておくことが大切です。
IT化構想に繋がる中期ビジョンの利益目標をKGIとするならば、KGIにつながる指標(例えば在庫回転率50%アップ、月次決算を月初3営業日など)をKPIのプロセス指標として設定していきます。

【フェーズⅢ】構築・実行

組織体制を整え、構築と実行を進めるフェーズです。
IT化構想においては何をするかも重要ですが、誰がリーダーシップをとるか、どのような組織体制でプロジェクトを進めるのかが成否を握るといっても過言ではありません。
IT化構想が頓挫する理由の一つに「システム部門への丸投げ」があります。システム部門は社内システムにおける保守・管理のプロフェッショナルであることが多いですが、営業・製造・経理など専門職種のプロフェッショナルではなく、まして経営戦略のプロフェッショナルではありません。自社のシステム担当部門の業務分掌範囲を確認してみてください。
IT化構想を実現するために必要なのは、機器の保守・管理ではなく、経営資源の再配分です。

【フェーズⅣ】評価・定着

新たなシステム導入、業務変革を定着させるフェーズであり、定着においては社内への目的伝達と理解浸透を粘り強く行うことが必要です。
新たなシステムを導入したが現場で全く使われていない、担当業務を導入されたシステムに合わせることができず形骸化する、裏で新たなエクセルで作成した管理帳票が生まれている、などの現象が多くの企業で見られます。
IT化構想を神棚に置くのではなく、日常の業務に組み入れていき「やらざるをえない仕組み」にしていくこと。小さな成果を現場にこまめにフィードバックしていくことが評価・定着のきっかけとなります。

IT化構想を成果に導くための3つの着眼点

IT化構想に必要な戦略着眼① 「正しく現状を捉える(As-is)」

改善ではなく変革するためには、現状はあるがままに捉える「現状認識」が最初の一歩であり、正しい現状認識のポイントは「事実整理」「事実分析」「本質の追究」の3つのステップが基本になります。既存の事実をヌケ・モレがないように収集する、色メガネで物事を見ないようにする、全体観と客観的視点をもって進めることがポイントです。
現在のシステムは誰がどのように使っているのか事実を確認する。このシステムは現場ではこう使っているはずだ、という憶測や推測ではなく、未確認の情報を現地・現場・現物で丁寧に確認していくことが必要です。
また既存業務に精通している社員ほど、この担当業務はこのやり方でなくてはならない、という現場最適の現状認識に陥りがちです。現状認識を行うときは、常に全体を俯瞰して現場目線と経営目線を繰り返しながら正しい事実をつかみます。

IT化構想に必要な戦略着眼② 「あるべき姿(To-be)を目的の5乗で描く」

あるべき姿を描く際に必要なのは「目的の5乗」が必要です。そのIT戦略は何のために行うのか、IT化構想は何を目的・目標にして進めるのか、目的を5回以上繰り返して、あるべき姿の真の目的を問い詰めていくことが戦略思考のポイントになります。
IT化構想は、経営とシステムに精通する人がリーダーシップをとって推進することが必要ですが、システムに精通しすぎる人がリーダーシップを多くとる場面が増えてくると、システムの細部にこだわり部分最適のあるべき姿(To-be)を描きがちです。
プロジェクト形式でIT化構想を進めるのであれば、経営陣が最低でもオブザーバーとして入ること、可能であればメンバーにも入りながら自社のあるべき姿を描きます。

IT化構想に必要な戦略着眼③ 「ギャップ思考による実行ロードマップづくり」

正しい現状認識とあるべき姿が明確になれば、自社が目指すべき正しいギャップが見えてくるはずです。ギャップがまだこの段階で見えない、もしくは曖昧な点がある場合は、現状認識が不足しているか、あるべき姿に対する社内の議論が不足している可能性があります。
ギャップ思考で重要な点は2つあります。
1つ目は「できない理由ではなく、できる理由を考えること」です。理想が高ければ高いほど、できない理由が生まれがちですが、制約条件を外してみて、どうやったら実現できるかを考えてみることが大切です。
2つ目は「優先順位のつけ方」です。やるべきことはたくさん出てきますが、まず第一歩を踏み出さない限りIT化構想は実現しません。実現に向けて、誰がどの工程をどこから着手するのか、細心の注意を払って取り組むことが必要となります。

ギャップ思考イメージ図
図2 ギャップ思考イメージ図

最後に、安全・安心でワクワクする快適な家を建てるためには、正しい設計図と生活を具体的にイメージしたプランニングが必要です。
貴社のIT化構想も、将来の企業価値向上につなげるために、正しいステップと工程を踏んで構築・実装していきましょう。

AUTHOR著者
エグゼクティブパートナー
北海道支社 副支社長
水本 伸明

金融業界で統括業務、新規事業・業務開発担当を経て、当社に入社。一貫して生まれ故郷である北海道エリアの上場企業から中小企業までの経営課題解決パートナーとしてコンサルティングを実施。経営者の想いや企業特性に根差したコンサルティング展開を信条とし、中期ビジョン策定、グループ経営システム構築、経営者リーダーの育成を強みとしている。北海道の経営環境・エリア特性を熟知した経営課題解決手法に多くのクライアントから高い信頼を得ている。

水本 伸明
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