人事コンサルティング事例
人事制度構築

若手社員を育てることで社風や意識が大きく変化

ハシモトグループ

小学生のシンボル、「ランドセル」は日本独自の文化であり、発祥は明治時代にさかのぼる。そのランドセルを語る上で欠かせない企業が、自社ブランド「フィットちゃん」で知られるハシモトグループだ。

SCROLL

取材先様のお役職は、取材当時のもの、タナベ経営社員の役職は、2020年現在のもの

企画、製造、販売まで行うランドセルメーカー

小学生のシンボル、「ランドセル」は日本独自の文化であり、発祥は明治時代にさかのぼる。そのランドセルを語る上で欠かせない企業が、自社ブランド「フィットちゃん」で知られるハシモトグループだ。

創業者の橋本啓氏は終戦後の1946年、出征先のパラオ島から復員すると、戦前まで従事していたかばんづくりの技術を生かし、地元の富山県富山市でかばん製造の橋本商店を創業。当時は配給品だった帆布やゴム布を使い、学生かばんやリュックサックなどを製造した。

その後、クラレの人工皮革「クラリーノ」を使い、中高生向けの手提げかばんへ進出。クラリーノ学生かばん専業メーカーとして順調に生産を拡大し、1990年には全国生産量の3分の1を占めるまでになる。

しかし、この過程で中高生のかばんは自由化が進行。そのため1984年にランドセルの製造を開始した。小学生にターゲットを広げることで事業を拡大したのだ。

また、同年には自社ブランド「ラリーちゃん」(後のフィットちゃん)を立ち上げ、商品に独自のアイデアを盛り込みながら、徐々に顧客の支持と知名度を獲得していった。

そして2001年、大きな転機が訪れる。ランドセルの圧倒的販売力を誇るイオンへのOEM供給が決まり、一気に量産が進んだ。この背景には、同社ならではの生産力や企画力がある。同社は職人の技術力に磨きをかける一方、製造ラインの効率化や自動化を進め、生産力を高めた。

一方、SPA(製造小売業)の台頭に伴い、同社もショッピングセンターなどへ出店を開始し、07年にはWeb通販にも参入。小売りを通して取り入れた顧客ニーズは、品質やデザインなどに生かされている。

さらに2011年には東京都渋谷区代官山でショールームを開設。現在、その数は全国9カ所にわたる。17年度からは都内ホテルなど全国10カ所で出張展示会も開催している。

 

 

チャレンジし続ける風土でさらなる成長へ

黒崎工場の様子 黒崎工場 1 階にあるショールーム。2 階にはランドセルの機能性を体験できるスペースも併設 同社は近年、若手社員の採用・育成に力を入れている。

例えば新卒採用は、2015年の黒崎工場(富山市)設立を機に"待ち"から「攻め」の姿勢へ転換した。
卸事業会社「ラ・ポンテ」取締役の橋本和加代氏は、「大手採用サイトへの掲載のほか、学生の企業訪問や工場見学の受け入れ、先輩社員との座談会などを通じて、入社後のギャップがないように努めています」と語る。

若手社員のフォロー体制も手厚い。タナベ経営主催の入社前研修、フォローアップ研修の活用により、「面倒見のよい若手の先輩社員が増えた」(和加代氏)そうだ。先輩のフォローは若手の働きやすさに結び付き、定着率が高まる効果も期待できる。

さらに、社員の経営者視点の醸成に一役買っているのが、社内研修「ハシモト塾」だ。若手を対象に、自社の歴史やマーケット情報、今後のビジョンなどを学ぶ場として実施。ハシモトグループ代表取締役の橋本洋二氏が自ら講師を務め、質問にも気さくに答える。また、製造事業会社「ハシモトBaggage」の取締役・橋本昌樹氏と和加代氏の両取締役が運営に携わり、従業員との距離を近づけている。全社的な視点や発想を身に付ける機会になり、楽しみにしている社員も多いという。

また、生産・受注状況など経営情報を全社員で共有化し、社員の意識向上に結び付けている。さらに、決算賞与や社員持ち株会など「頑張った分、還元される」仕組みが、社員のやる気を駆り立てる。

業務改善提案の募集も行っており、現在の提案件数は以前の5倍(年間60件)へ増加。昌樹氏は「少しずつ社員の自発性が育まれ、『みんなで良くしよう』という動きが出てきている」と成果を語る。

「今後は与えられた仕事だけではなく、社員自身が『やりたい仕事』に取り組めるようにしたい」(昌樹氏)。日々の業務だけでなく、面白いと思える仕事、ワクワクする仕事に取り組める環境を整え、いま以上に楽しみながら働いてほしいとの思いがある。

一方で、次のステップを見据えた準備も欠かせない。「少子高齢化が進む中、今後、事業領域をどこへ広げていくのか、大局的な視点で展望を描くことが必要。自社の将来について、次世代を担う世代と共に見極めていきたい」(洋二氏)

ランドセル製造開始から34年、現在では業界トップ3の一角を占めるランドセルメーカーへ躍進を遂げた同社。数々の環境変化へ柔軟に対応し、常に新しいフィールドへチャレンジしてきたからこそ、成長を続けてきたのだ。

タナベ コンサルタントEYE

タナベ経営
経営コンサルティング本部 新潟支社長
森松 貞治
ハシモトグループは1946年の創業以来、常に経済環境と顧客ニーズを先取りし、「入れ物文化の向上」に貢献してきた。また、積極的に設備投資や研究開発を重ねて高機能・高品質の維持に努め、「フィットちゃん」を著名ブランドに育て上げている。さらにグループ全体で製造から卸・小売・ネット通販へと垂直統合を行い、盤石の経営基盤を築いている。
そんな同グループも、さらなる成長とステージアップに向けて抜かりはない。特に優秀人材の確保・育成に注力し、次世代を担う人材育成への投資も積極的だ。同グループの今後の進化が楽しみである。

会社プロフィール

会社名
ハシモトグループ
所在地
〒930-0023 富山県富山市北新町1-2-25
TEL
076-441-4556(代)
創業
1946年
資本金
1300万円(㈱ハシモトBaggage)
売上高
74億8500万円(グループ全体、2017年9月期)
従業員数
200人(グループ全体、2017年9月現在)
事業内容
㈱ハシモトBaggage/ランドセル・学生カバン類・各種ビジネスバッグ製造、㈱ハシモト/各種カバン類の販売、アンテナショップ展開、㈱ラ・ポンテ/各種カバン類卸売・インターネット販売・ショールーム展開
URL
http://www.hashimoto-web.jp/

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 66
  • 200 業種
  • 17,000 社以上