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パーソナライズ人事の実装

個別具体的に自社の人事戦略を落とし込む

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HRを取り巻くメガトレンド

2018年~2023年の間に、①働き方改革、②SDGs、③ウェルビーング、④人的資本経営、⑤エンゲージメントと多くのメガトレンドが誕生し、各社のHRを取り巻く環境は、やや情報がオーバーロード(情報過多)気味であると言える。
2024年は、我々がなんとなく学びを深めてきた各領域に対して、「知っている」から、本格的に「実装する」フェーズに来ている。

キーワードは「独自性」×「追求性」であり、自社にとって意味があり、共に働く仲間たちと追求していく意味ある人事戦略の具体化がポイントとなる。

図表1は、各メガトレンドの特徴を整理したモノである。本コラムでは、テーマを絞って言及していきたい。

HRを取り巻くメガトレンド

出所:タナベコンサルティングにて作成

メガトレンド①働き方改革(2018~)

メガトレンド①働き方改革(2018~)

働き方改革(2018~)は、1億総活躍の実現に向けた大改革を指し、長時間労働の是正や、非正規と正社員の格差是正、高齢者の就労促進が主に取り上げられるトピックスである。
これらを踏まえて、押さえるべきは、①人時生産性の明確化、②役割・ジョブの明確化、③定年延長制度である。
以下にそれぞれのセンターピン(本質的なポイント)を示している。

①人時生産性の明確化
予算:社員一人が1時間あたりに生み出す粗利(限界利益)の予算額を明確にする
要因:人時生産性(利益)予算達成のための重要成功要因を押さえる
補充:人時生産性(利益)予算達成に向けた適正人員の把握および補充をする

②役割・ジョブの明確化
1.廃止:役職主義を廃止し、役割主義へ(役職表記の変更や役職要件の見直し)
2.分離:等級と役職の分離運用(役職任命制度など)
3.区分:職種別・コース別・ステージ別人事制度の設計(EX:ドライバー職はジョブなど)

③定年延長制度
1.骨格:総原資アップ、総原資チューニングを軸に判断する
2.同一:同一賃金同一労働を前提としたフレーム・評価制度・賃金制度の設計
3.選択:選択式キャリアパスの導入(現役、シニア、嘱託)

メガトレンド②ウェルビーング(2021~)

メガトレンド②ウェルビーング(2021~)

ウェルビーングとは、精神的・身体的・社会的に満たされる環境づくりを通じて、創造性や生産性を高める概念を指す。
近年では、ウェルビーングを単一的なウェルビーング(一個人のウェルビーング)と集合的なウェルビーング(集団で育まれるウェルビーング)の2軸から組織へ展開する企業が増加傾向にある。
これらを踏まえて、押さえるべきは、①共同体感覚の醸成、②時間的拘束の排除、③一人ひとりのパーパスの明確化である。
以下にそれぞれのセンターピン(本質的なポイント)を示している。

①共同体感覚の醸成
価値:所属部門(チーム)に属するメンバー一人ひとりの貢献価値を明確にする
体感:所属部門(チーム)特有の体験(繋がり)を仕組み化する(協働作業、機会、対話、雑談)
環境:自己受容(自分らしさ)を大切に育めるチーム環境づくり(心理的安全性)

②時間的拘束の排除
密度:仕事と私生活のバランスを取るのではなく、それぞれの密度を最大化する働き方の受容
両立:フレックス制や時間あたりの有給休暇、テレワーク等を前提とした自社独自の両立支援

③一人ひとりのパーパスの明確化
統一:自社のパーパスと働く一人ひとりのパーパスの統一
共有:一人ひとりのパーパスの継続的共有
発信:社内外を含めたパーパスの継続的発信

メガトレンド③人的資本経営(2022~)

メガトレンド③人的資本経営(2022~)

人的資本経営とは、人材の価値を最大限に引き出し、企業価値の向上に繋げる概念を指す。
グローバル単位では、ISO30414を旗印に、国内企業のガイドラインとしては人材版伊藤レポート2.0を取り上げ、実装に向けて各社検討を重ねている段階であると考えられるが、これから本格実装するうえでは、①人的資本ポリシーの明文化、②事業戦略・経営戦略との統合・連動、③人事KPIの設計を押さえていただきたい。
以下にそれぞれのセンターピン(本質的なポイント)を示している。

①人的資本ポリシーの明文化
把握:AsIs(現状)ToBe(あるべき姿)の観点から自社の人的資本に対する現状を把握(3P5Fより)
明確:パーパスやMVVを踏まえた人的資本ポリシー(人材価値に対する考え方)を明文化する

②事業戦略・経営戦略との統合・連動
統合:事業モデル・組織モデル・収益モデルを実現するための人事に関する重要成功要因を明確にする
連動:人事戦略(採用・育成・配置・定着)の明確化(左記に対して何に重点的に取り組むのか)
配分:人事部門の戦略人事化(戦略人事機能とオペレーション機能の再配分)

③人事KPIの設計
影響:自社の人事戦略を実現するためのKPIの設計
観点:追求性×再現性×納得性の観点より落とし込む

メガトレンド④エンゲージメント

メガトレンド④エンゲージメント

エンゲージメントとは、「組織と個人の繋がりの中で育まれる自発的な関係性」を指す。
主な構成要素は、仕事に対するエンゲージメントと組織に対するエンゲージメントそして、これらを育むカルチャーから構成される。
エンゲージメント実装に向けて、押さえていただきたいのは、①エンゲージメント課題の把握と②並列的×一体的な取り組みである。
以下にそれぞれのセンターピン(本質的なポイント)を示している。

①エンゲージメント課題の把握
仕事:仕事エンゲージメント(仕事に対する熱量)に関する課題把握
▶仕事への裁量、個性の発揮度合い、誇りや責任
組織:組織エンゲージメント(組織に対する信頼)に関する課題把握
▶心理的安全性、ダイバーシティ、MBO機能、育成システム、トータルリワード(非金銭的報酬)
文化:カルチャー(愛着)に関する課題把握
▶理念・MVVに対する共感度、バリューに対する共感度、貢献意欲(業績、顧客、社内)

②並列的×一体的な取り組み
能動:各階層主導で共に働く仲間(組織)に対して、能動的に価値を発揮する
▶管理職だから担うという発想を捨てる、各階層主導のプロジェクト主導
排除:ルールやトップダウンで行う施策を可能な限り排除する
▶それぞれがセンスオブオーナーシップ(当事者意識)を発揮する
委譲:メンバーの能力開花を実現するためのエンパワーメント(権限委譲)の断行
▶権限委譲を通じて、成功体験を積める環境をつくる

パーソナライズ人事の実装

これらのメガトレンドおよびそれぞれのセンターピンを踏まえて、個別具体的に自社の人事戦略を落とし込むことが大切である。筆者は、この概念をパーソナライズ人事と定義している。

パーソナライズ人事の実装に向けては、以下の3つについて検討を重ねていただきたい。

1.As Is To Beの見える化
2.経営と人事部の距離感の見直し
3.BPO最大化

一つ一つポイントを見ていくこととする。

1.As Is To Beの見える化

図表2を参照いただきたい。
現在の人事(As Is)とあるべき人事( To Be)のギャップ

出所:タナベコンサルティングにて作成

パーソナライズ人事の実装に向けて、最初に押さえるべきはAs Is To Beである。
現在の人事(As Is)とあるべき人事( To Be)のギャップを正確に掴むことが出発点となる。

2.経営と人事部の距離感の見直し

続いて、経営と人事部の距離感の見直しについても必須であると考える。
自社の人事部(或いは人事機能)が下請け人事になっていないか確認いただきたい。
これからの時代の人事部は当然に経営層(ボードメンバー)と一体の立場で自社の経営と向き合っていく必要がある。

3.BPO最大化

最後はBPO最大化である。
BPOとは、ビジネス・プロセス・アウトソーシングの略であり、自社の業務機能を外部に委託する経営戦略を指す。
単に業務をアウトソーシング(業務の一部を委託する)するのではなく、自社がコア業務に集中するため、一定の経営機能に対して、一括して業務委託する戦略的な手法である。
現人事部門で機能発揮できる領域とBPOにて補完すべき領域を精査することが重要である。
※図表3参照

給与システム・人事システム・その他

出所:タナベコンサルティングにて作成

さいごに

本コラムでは、①働き方改革、②SDGs、③ウェルビーング、④人的資本経営、⑤エンゲージメントと多くのメガトレンドについて触れてきたが、大切なことは、自社にとって意味があり、共に働く仲間にとって意味のある個別具体的な人事戦略(パーソナライズ人事)と具体的に向き合うことである。

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