人事コンサルティング事例
人事制度構築

創造性、ベンチャー精神あふれる社風で 持続的なイノベーションを起こす

アテネ株式会社

東京・銀座に本社を構えるアテネは1958年、レコード盤の製造会社として神奈川県藤沢市で創業した。当初は中古のプレス機2台を使い、6人でスタートした町工場だったが、高い技術力で次第に支持を集め、1962年には「フォノシート」(ソノシート)と呼ばれる薄型レコード盤製造の日本最大の工場を設立。量産体制を確立した同社は、レコード製造のトップに上り詰めていった。

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レコード製造からスタート環境変化を生き抜いた60年

アテネ 取締役 総務部
部長 小林 宏至氏

東京・銀座に本社を構えるアテネは1958年、レコード盤の製造会社として神奈川県藤沢市で創業した。当初は中古のプレス機2台を使い、6人でスタートした町工場だったが、高い技術力で次第に支持を集め、1962年には「フォノシート」(ソノシート)と呼ばれる薄型レコード盤製造の日本最大の工場を設立。量産体制を確立した同社は、レコード製造のトップに上り詰めていった。

しかし、時代の流れとともにレコード産業が衰退すると、1983年にはレコード事業からの撤退を決断。社名も「アテネレコード工業」から現社名の「アテネ」へ変更し、大胆な変革を実施していった。

主力事業からの撤退が可能だったのは、同社に新しい事業を生み出す風土が存在したからだ。実際、同社はレコード盤製造が全盛期だった時代にも常に研究開発の手を緩めず、新しい事業を模索してきた。

例えば、レコードの廃材を使い培った「樹脂メッキ技術」はその一例。石油ショックの影響を受け1970年代には陰りを見せるが、このとき育んだベンチャー精神や、新たな事業を会社全体で応援する風土は同社の財産となり定着していった。

過去の実績にとらわれず「自社にしかない」事業を追求

1980年代になり音楽市場でCDが登場すると、レコード製造会社は相次いでCD製造へ参入した。しかし、同社はCD事業には参入しないことを決断。レコードの製造技術と共通点がなく、何より他社がこぞって参入する事業への追従は得策ではないと考えたからだ。

さらに、リーマン・ショックが世界経済を襲った2009年、同社は銅メッキ事業から撤退。売上高全体の3分の1を占める柱事業であったが、自社の独自性や強みが発揮できないため見切りをつけたのだ。

現在はレコード製造時代から培ってきた、電鋳技術を生かしたメタルマスクが主力事業である。

この技術は、例えば高精細を求める有機ELディスプレーや、高い転写性を実現する印刷用凹版など、超微細電鋳加工を必要とする電子部品の製造に欠かせない。

他にも、製品の塗り分け塗装や蒸着時に必要な電鋳マスク治具、元来の音へのこだわりから派生した、映像・デジタルコンテンツを制作するメディア事業を展開。過去の実績に縛られず、市場ニーズに応じてコア技術に磨きを掛け、常に「社会に必要とされる存在」として、自社にしかできない事業を追求してきたのである。

 

社員の人材育成に注力タナベの研修を有効に活用

幾度も事業転換を重ね、時代に柔軟に対応してきた同社。その原動力について、アテネ取締役総務部部長の小林宏至氏はこう語る。

「トップの決断力に支えられてきたことは言うまでもありません。加えて、自社のDNAとしてベンチャー精神が根付いていること、さらに当社は中途入社社員が多く、彼らの発想や個性をうまく生かしてきたことも原動力と言えます」。あくなき技術開発への姿勢や、常に新たな事業を生み出すベンチャー精神といった同社のDNAの中に、中途入社社員の豊かな個性を融合させ、多様な価値観を受け入れることで、イノベーションを継続的に生み出す風土を培っていったのである。

こうした社風の中で活躍する人材を育成するため、同社は外部研修などを有効に活用し、社員に教育の機会を提供している。中でも、管理職に昇進する直前に受講する「幹部候補生スクール」(タナベ経営主催)は、現幹部社員のほぼ100%が受講。他にも新入社員向けや中堅社員、戦略リーダー(経営人材)向けなど、定期的にタナベ経営の研修を活用しているという。

社員には「自分で課題を見つけ、周囲を巻き込みながら問題解決を行える人になってほしい」と小林氏。こうしたビジネススキルを養う研修に、別途外部の人格研修なども組み合わせ、社員の人材育成に力を注いでいる。



社員の成長を促す人事制度へ刷新

アテネは現在、人事制度自体が社員育成ツールになるよう、その見直しを図っている。人事制度改革のビジョンは「自発、尊重、創造」。社員が自発的に成長の機会をつくり、その成長が会社に還元され、評価に結び付く。そんな人事制度への改革である。

具体的には目標管理制度を導入し、評価結果のフィードバックも得られるようにして、何を改善すれば評価されるのかを"見える化"した。これらのPDCAを回すことで、評価される側、評価する側も共に成長できるような仕組みを整えていく。

「変化を恐れていたら、今のアテネは存在していない。今の社員にも『自らやる』というリーダーシップを持ち、発揮していってほしい。目標は自社のDNAを受け継ぐ仕組み、失敗してもとがめられないチャレンジしやすい文化をつくり、新しい価値を生み出していくこと」(小林氏)。今回の人事制度改革はそうした目標の実現に向けた第一歩である。

事業の寿命は10年といわれ、年々、短命化の様相を呈している。こうした中、非連続のイノベーションを起こし続ける仕組みや、社員が個性を発揮しながら事業を創造する風土を持つ同社が、これからも成長し続けることだろう。

アテネはこれまで、幾度となく経営を揺るがす困難に直面してきた。しかしそのたびに、環境変化に対応しながら今日の発展に至っている。AI、IoT、ロボティクスといった技術革新が急速に進む今後は、社員がリーダーシップを発揮し、時代の変化に対応することが求められる。同社は今、人事制度を見直し、自社のDNAを継承しながら社員の潜在能力を引き出そうと挑戦している。これからも自社の固有技術を磨き、その存在価値を見極め、異質を認めて組み合わせながら、「新しい価値を生み出す組織」を構築していくことだろう。

会社プロフィール

会社名
アテネ株式会社
所在地
〒104-0061 東京都中央区銀座1-14-4
TEL
03-6856-1621(代)
設立
1958年
資本金
5400万円
売上高
15億円(2018年9月期)
従業員数
115名(2018年8月現在)
事業内容
超微細電鋳加工製品の開発設計・製造と販売、電鋳マスク治具の製造または関連設備の開発設計・製造と販売、映像・音声コンテンツ、ソフトウエアの企画・制作およびそのパッケージ製造と販売など
URL
http://www.e-athene.co.jp/

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

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