人事コラム
人事制度

発達段階別の人事制度改革(グリーン組織)

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はじめに

はじめに

本コラムでは、 フレデリック・ラルー氏が著書「ティール組織ーマネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現ー」にて提唱している。
ティール組織に至るまでの「5つの過程」より、組織の発達段階別の人事制度施策についてまとめていきたい。
※大前提として、どの組織の発達段階が良い悪いという考えは一切無いものとして考察していく。

第4回目は、グリーン組織(メタファー:家族)における人事制度改革ポイントである。

グリーン組織とは

グリーン組織とは

グリーン組織とは、メンバー一人ひとりが主体的に行動し、意思決定プロセスに関与することが特徴的な組織である。

組織構造については、オレンジ組織と似ている面があるものの、働く社員一人ひとりの多様性や個性を重視する点に違いがある。
異質な意見や異なる価値観を受け入れやすい風土が整っていることから、比喩的には「家族」と表現されることもある。
※風土=無自覚に浸透している空気感

グリーン組織におけるマネジャーは、自律的なメンバーの持ち味を活かす役割を担うことになるため、外発的な動機付けを主たる目的とする従来型のマネジメント(管理型のマネジメント)ではなく、内発的な動機付けを目的とする成長支援型のマネジメント(動機付け型のマネジメント)スタイルを取ることが効果的である。

グリーン組織における人事制度(評価制度・賃金制度)の設計ポイント

グリーン組織における人事制度(評価制度・賃金制度)の設計ポイント

筆者は、組織の発達段階が「オレンジ組織」にあり、2024年現在、「グリーン組織」を目指す段階にある企業のコンサルティングを行っているが、評価制度や賃金制度において押さえるべきは、「自律性を最大化する評価制度」と「明確なジョブに対する報酬制度」の設計であると考えている。一つ一つ考察していきたい。

1.自律性を最大化する評価制度
社員一人ひとりが自社を「我が事」と捉えるグリーン組織にとって、自律性は必須のコンピテンシー(行動特性)である。
ゆえに、評価制度一つとっても、会社から与えられた指定型の評価手法を取るのではなく、能動的に自ら役割を考え、価値を発揮するためのMBO-S手法やOKR手法を取ることが効果的である。
MBO-S=Management By Objectives and Self-control(能動的な目標管理制度)
OKR=Objectives and Key Results(目標と主要な結果を追求する目標管理制度)

また、MBO-S、OKRいずれの手法を取ったとしても、マネジャーはメンバーとの定期的な対話とフィードバックを行うことが効果的であり、上記が機能しなければ、メンバーとマネジャー間における価値発揮において逆転現象が起きかねない。

2.明確なジョブに対する報酬制度
ここでいうジョブとは、ここ数年人事の世界では注目を集めているジョブ型人事制度を源流とした考え方であり、ジョブ(職務や役割)の大きさ(貢献度)に応じて処遇を分配設計していく手法である。
押さえるべきは、各社の状況を踏まえて、ジョブサイズ(職務や役割を通じた貢献度合い)をどの粒度感で設計することが最適なのかである。安易にジョブを細分化し過ぎると、逆効果である。

グリーン組織における人事制度事例

グリーン組織における人事制度事例

大阪に本社を構えるA社では、3年前から自社をグリーン組織と捉え、「自律性を最大化する評価制度」の運用に注力している。
具体的には、OKRを用いて、2週間に1回のペースで各メンバーはO(目標)とKR(重要な結果)を設定し、メンバー間でお互いがお互いを高め合い、叱咤激励し合う仕組みを導入している。
加えて評価者は定期的な対話やフィードバックを通して、軌道修正を行う役割を担っており、それぞれが自分で自分の目標と向き合うカルチャーが醸成されている。

また、同じく大阪に本社を構えるB社では、年齢や勤続年数ではなく、明確なジョブ(B社では価値発揮領域と定義)に対して、処遇を設定することで、結果的にメンバー一人ひとりの主体性を高めることに成功している。

さいごに

ここまで全4回渡って、組織の発達段階別の人事制度施策について考察を進めてきたが、重ねて押さえていただきたいのは、「どの組織の発達段階が良い悪いという考えは一切無い」ということである。

筆者として押さえていただきたいのは、自社の現状を踏まえて、「目指す意味ある発達段階」がどこで、「目指すべき発達段階を見据えて、取るべき人事施策は何なのか」といった戦略的思考である。

これを機に個別具体的な人事施策を突き詰めていただければ幸いである。

この課題を解決したコンサルタント

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