人事コラム
人材育成

教育体系の効果的な構築方法とは

~経営課題解決のための教育体系構築~

SCROLL

会社の「経営理念」「ミッション」を実現に向け、教育体系を見つめ直す

教育体系とは

教育体系とは

2020年9月に人材版伊藤レポートが公表され、「人的資本経営」の必要性はあらゆる場面で提言されている。
「人的資本経営」とは、働く価値観や企業の人材に対する考え方が変化する中、人材を「資源」ではなく、「資本」=「価値」として捉え、その人材価値の最大化により企業価値の向上を図る経営手法である。
「人的資本経営」を推進する一つとして、「教育体系」の見直しが挙げられる。

教育体系とは、「社員に実施する教育の全体像を一覧に表したもの」であり、階層や職種、年次、課題別に必要な教育を整理し、社員の育成計画を体系的に表している。

従来の教育体系では、人的資源として業務上必要な知識・スキルの習得などテクニカルスキルが中心であったが、近年ではヒューマンスキルやコンセプチュアルスキル(概念化)など、長期的な視点で育む要素も複合的に構築するケースも増えている。
本コラムでは、教育体系の効果的な構築方法について紹介していきたい。

教育体系を構築する目的

教育体系を構築する目的

近年、教育体系を構築している企業から教育制度の見直し、特に経営層・管理職向け研修相談が増えている。先述の通り、人的資本経営への高まりもあるが、急激な社会情勢の変化や定年延長など様々な問題に対応すべく上位階層のスキルアップの
必要性が高まっていることを感じる。
しかし、相談の多くは部分的な研修に関する内容も多く、場当たり的な研修を組むだけでは、他の階層との繋がりや教育コンセプトが曖昧になり一過性で終わってしまうケースも多い。
そのためまずは教育体系を構築する目的を整理していきたい。

1.経営を軸にした人材育成コンセプトの明確化
会社によりあるべき人材像は異なるため、「経営理念」や「ビジョン」とそれに紐づく様々な戦略の下、一気通貫した教育体系を構築する必要がある。まずはなぜ教育体系を組むのか、組むことにより何を実現するために、どのような人材を育成するのかをイメージすることが重要である。

2.今後リスクを踏まえた人材育成計画の構築
経営理念・ビジョンの推進に向け、各階層・職種ごとにあるべき姿と今後の要員計画踏まえた育成計画が必要になる。
現在の組織に何が足りていないのか、どのような人材が必要なのか、または組織における今後の年齢構成を踏まえて、現在行うべき教育を整理しておくことで、キーマンの退職などのリスクに備えておくことに繋がる。

3.採用への影響(採用優位性の向上)
体系化された教育システムは採用にも良い影響を及ぼす。キャリアに応じてどのような教育を受けることができるのか、どのようなスキルを磨くことができるのかが採用段階で見えるようになっていることが求職者に対してポジティブな印象を与える。

教育体系の構築ステップ

教育体系の構築ステップ

STEP1:教育の現状を正しく把握し、あるべき姿を明確にする
まずは現在の教育体系(人材育成ポリシー、教育体系、教育の運営体系など)を様々な角度から把握することが重要である。
企業は環境の変化に適応し成長し続けなければならない。
経営理念といった「不易」な部分を大切にしつつ、環境変化に応じた仕組みの見直し・あるべき姿の具体化が必要不可欠である。

STEP2:成長段階の明確化
成長ステップを考える上で重要なことは、既存社員の成長ステップをベースに考えるのではなく、経営理念やビジョンなどのあるべき姿からバックキャスティング(逆算思考)で階層・職種ごと求める能力・行動特性を明確にすることである。
既存社員からイメージした場合、現実と理想にギャップがあれば、今の教育体系では課題は解決できない可能性もあるため、
あるべき姿から教育体系を組むことが重要である。

STEP3:内容の設計
成長ステップを明確にした後は、教育体系図の具体的な内容が分かるように、教育テーマ、対象、研修内容、教育方法、実施時期など体系図設計に向けたの情報整理を行っていただきたい。
例えば教育テーマが「組織づくり」であれば、管理職以上が対象となる。研修内容にはついては、職種や会社規模・風土など会社により様々なため、社内・外部で実施するメリット・デメリットを踏まえて検討する必要がある。もちろん「組織づくり」を身につけるには研修だけではなく、OJTや自己啓発によって学びを深めることが必要となるため、研修テーマだけではなく学ばせ方まで整理しておくことが重要である。

さいごに

人材育成に関して正解はなく、費用対効果も計りにくいため、きっかけがなければ見直すことも少なく人事部門での業務範囲に留まっているケースも多い。
教育計画や教育体系は経営の重要テーマとして取り扱っていただくことが、ビジョンやミッションの実現へと繋がる。形だけではなく価値ある教育体系にするため、経営層が主軸となって取り組んでいただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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