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役職定年とは?役職定年後のキャリアプランニング

役職定年の制度と、キャリアプランについて解説

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役職定年後に複数のキャリアに対する選択肢を用意することが、
長年組織の発展に貢献してきた社員に報いることにつながる。

役職定年とは

役職定年とは

役職定年とは、ある一定の年齢に達した管理職の社員が、部長や課長などの役職を退任する制度のことである。
これまでの年功序列や終身雇用を中心とした日本的な雇用慣行では、一定の年齢になると管理職に就く機会が多かった。

また、持続的な経済成長を前提に、組織が拡大し、組織の拡大と連動して管理職のポジションが増え続ければ、管理職のまま定年退職を迎えることができていた。

しかし、時代が変わり、経済成長の鈍化や、少子高齢化の影響で定年の年齢が引き上がったことなどが複合的に作用し、限られたポストに同じ人材が長く留まるという事態が顕在化してきた。

これを解消すべく、役職に定年を設け人員の滞留を解消し、組織の活性化を促したことが背景にある。

役職定年制度を導入する企業のメリットとデメリット

役職定年制度を導入する企業のメリットとデメリット

役職定年を導入する企業のメリットは以下2点である。

1点目は総額人件費の抑制効果である。
年功的に昇格した場合、役職者の賃金は高い水準で昇給する可能性がある。役職が外れることで、手当額が減少し、総人件費の抑制効果がある。

2点目は健全な新陳代謝の促進である。
年功的に昇格する場合、成果よりも長く働くことを評価される傾向がある。そのため、早く出世した社員ほどポストがつまり、出世することができず、優秀な社員ほどモチベーションが低下する可能性がある。ポスト不足により、若手社員が役職を担う機会が減少し、成長する機会が短くなることが懸念される。
一方、デメリットとしては役職定年となった社員のモチベーションが低下することである。

役職定年制は、本人の能力や経験に関係なく、年齢だけを理由に退任させる制度である。そのため本人にとっては、まだまだ活躍する意欲、能力があるにも関わらず、役職に伴う役割や権限がなくなり、賃金も低下するという事態に対して簡単に受け入れられないのが実情である。
また、登用した後任の管理職者にとっては、かつての上司がモチベーションの低下した部下となってマネジメントすることにもなり、チーム全体の生産性低下にもつながる。

役職定年後のキャリアパス

役職定年は50代後半〜60歳で設定されることが多い。役職定年後は60歳までの数年間は役職が外れた分、給料が7割〜8割程度に減額されることが一般的である。
また、現在では、2021年4月施行の高齢者雇用安定法により、65歳までの雇用確保が義務付けられている。そこで、役職定年した後60歳〜65歳までのキャリアパスにどのようなものがあるのか、以下の表を用いながら3つご紹介する。


役職定年後のキャリアパス

出所:タナベコンサルティングにて作成


①再雇用(限定的な職務を担うケース)
60歳で定年を迎えた社員を一度退職させ、限定的な職務内容での雇用条件で再度雇用するケースである。この場合、等級は設けず評価も実施しない。賃金については個別に設定し、賞与の支給もされない。
特徴としては、限定的な仕事での雇用機会のみを提供する、高齢者雇用安定法に対応することを優先したキャリアパスである。

②再雇用(シニア用のコースを設定するケース)
上記①と同様に、60歳で定年を迎えた社員を一度退職させるが、シニア用のコースを設定し、そのコースで再度雇用するケースである。この場合、シニア用のコースに基づいた等級、評価制度、賃金制度が適用される。
特徴としては、正社員に近い役割(貢献)を求める社員と限定的な役割(貢献)を求める社員を分けるメリハリのあるキャリアパスである。

③定年延長
60歳以降も正社員として雇用をし続けるケースである。65歳まで運用できる等級制度を設計し、評価制度、賃金制度は正社員と同様に運用する。年齢に関係なく、積極的にシニアを活用する特徴がある。

社員、会社が取り組む役職定年後のキャリア開発

社員、会社が取り組む役職定年後のキャリア開発

ここからは、社員自身はどのように役職定年後のキャリア開発を進めればいいのか。
またそれに対して企業はどのようなサポートができるのかをご紹介する。


1.役職定年後のキャリアプランニング戦略


(1)技術伝承
今まで積み上げた知識・ノウハウ・技術等を後輩へ伝承するキャリアプランである。昨今では、働き方改革等の影響で短い時間での成果発揮が求められており、管理職にとって部下1人1人に十分に時間をかけた指導が行うのが難しい状況である。役職定年により、時間に余裕ができるため、自身の実体験をベースにしたアドバイスを伝授することは、非常に価値の高い取り組みである。
また、これまでは「なんとなく」で行ってきた業務について、指導するに当たりわかりやすい言葉で説明することが求められる。結果的に暗黙知が形式知化され、組織として再現性あるノウハウが蓄積されていく。

(2)マネジメントサポート
自身の後任となる役職者の支援をするキャリアプランである。特に後任が一般職からの登用である場合、初めて経験するマネジメント業務に対し苦労することも多い。そんな中、かつての上司に相談しやすい環境が整っていれば、安心して業務に取り組むことができる。
ただし、このキャリアプランでは、後任の役職者よりも目立とうとせず、サポートに徹する意識が重要となる。

(3)ワークライフバランスの充実
年功序列や終身雇用を中心とした日本の雇用慣行では、長時間労働になりやすいため、これまで仕事を優先した生き方をしてきた社員が多い。役職定年となり、時間に余裕が生まれることをきっかけに、家族との時間をつくることや趣味に打ち込むことも、キャリアプランの一つである。


2.企業がサポートできる役職定年後のキャリア開発


企業がサポートできるキャリア開発は、多様な選択肢を社員に提示することである。役職定年後の働き方を見据えたキャリアデザイン研修の実施や、柔軟な働き方の導入により、私生活との両立をしやすくするなど、社員のキャリアプランに寄り添ったサポートが求められる。

さいごに

役職定年制度と、役職定年後に向けたキャリアプランニングについて説明してきた。企業にとって重要なのは、役職定年後に複数のキャリアに対する選択肢を用意することである。本人がやりたいことを組織として実現できる環境を整えることが、長年組織の発展に貢献してきた社員に報いることにもつながる。
本コラムが、企業と役職定年後の社員の双方にとって、良好な関係で活躍することに繋がれば幸いである。

この課題を解決したコンサルタント

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