人事コラム
組織風土改革

人事PMIにおけるチェンジマネジメントの実践

企業変革を受け入れる組織を作る3つのSTEP

SCROLL

組織変革に対して適切なリーダーシップを発揮し、
組織をあるべき方向に導いて行く事が成功のカギ

チェンジマネジメントの重要性

チェンジマネジメントの重要性

M&Aでは、企業の成り立ちや諸制度、組織風土が異なる企業同士が一つの集団として、新たに設定された共通の目的(経営理念・パーパス・ビジョン・戦略)のため活動を共にすることになる。影響の大小は企業規模によっても様々であるが基本行動、価値判断基準などがある日を境に変化する。過去からの習慣や様式の切り替えを短期間で行う事は容易ではない。
一方で、これら変革に上手く組織を適合させる事ができないと、M&Aにより期待していた本来のシナジーは生み出せないと言っても過言ではない。組織全体として変革を受容し、新たな組織に馴染んでいく事がチェンジマネジメントの目的である。その中でも本稿では、重要性が極めて高い人事領域にスポットを当てたチェンジマネジメントについて触れていきたい。

成功へ導く3つのステップ

STEP1:目的の共有化
チェンジマネジメントは短くて数か月、長くて複数年に渡る事もある。プロジェクトの目的やM&Aを通して"何を実現したいのか"を明確にしておかないと途中で方向性を見失ったり変革を誤った方向に導き兼ねない。経営幹部が共通の目的を持った上で社員に対して思い描く未来(=ゴール)を明確に示し、共感を得ていく事が重要である。
STEP2:社員コミュニケーション
大きな変革や思い描く未来について示した後、個人にどのような変革が訪れるかについても正しく伝えておく必要がある。ここで最も避けなければならない事は社員が自分自身の処遇・職務内容・役割に納得していない状態で組織が始動することであり、大量離職に繋がるケースもある。社員全体への説明会や、個人面談等を通して各個人が変革によって実現したい姿を理解し、あらかじめ変革に対して心の準備してもらう事が重要である。センシティブな部分でもある為、時間・工数ともに必要となるが慎重に進めていただきたいSTEPである。
STEP3:社員トレーニング(研修・教育)
どのような変革が訪れるかを個人に理解させた上で変革を推進し、加速させるためには日々の業務を通じて、新しい様式に1日でも早く適応してもらう事である。日常の行動様式にもたらす具体的な変化を疑似体験し、自分ごととして腹落ちさせる機会を意図的に作り出すために複数回に渡りトレーニング(研修・教育)を行う事が一般的である。例えば新たな評価基準に沿って評価つける体験ができるような評価者研修を通じてより理解度や心理的抵抗感を緩和し、新たな環境に適応してもらう事が可能となる。

上記STEPを複数回繰り返していくことで、環境変化を受け入れた上で行動が変わり、 最終的には個人レベルでの信念や価値観を新たな組織に馴染ませていくことに繋がる。

推進していく上での注意すべき3つのポイント

上記STEPを正しく行えたとしても些細なきっかけで失敗に終わるケースは多々見受けられる。
チェンジマネジメントを推進していく上で特に注意すべきポイントを3点まとめておく。

1.リーダーとしてのコミットメントが欠如している

変革に対して、前向きな気持ちを抱けていないリーダー(経営幹部)がいる場合、懐疑的なメッセージを発信してしまい変革の妨げになってしまうケースがある。そのような場合には個別のコーチングや面談を通して事前に認識を変えておく必要がある。また、その他にも統合により企業規模が急拡大する場合において、企業規模に見合った経営スキルや知見を身に付けてもらう為の個別トレーニングを実施することも必要である。いずれにしても早い段階からプロジェクトへ参加し、リーダーの参画意識を高めて置くことが重要である。

2.変革の目的が共有化されていない(明文化されていない)

企業規模拡大だけを目的にM&Aを進めた案件によく見られ、両社のシナジー効果が最大限発揮できないケースである。ただでさえチェンジマネジメントの取り組みは長期化しやすく、方向性がぶれやすい状況下にあるため事前にリーダー(経営幹部)間でミッション・ビジョン・バリューを定義するワークショップを行い"なぜ変革が必要で何を達成すべきなのか"を明確に設定しておく必要がある。

3.両社協働で進められていない

利害関係を意識するあまり、いずれか一方の会社に負担が集中してしまい不満が募りプロジェクトが上手く進まないというケースである。平等かつ両社一体的な取り組みとして随時業務分担・役割を見直しやプロジェクトリーダーごとの業務コントロールを行いながら推進していく事が重要である。

組織のリーダーとしてチェンジマネジメントの重要性を正しく認識した上で、 出身会社や部門、役職、年齢などといった垣根を超えて一貫して目的に向かってやり切る強い覚悟と リーダーシップを発揮していく事が成功へと導いていくカギである。

この課題を解決したコンサルタント

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