人事コラム
エンゲージメント

2023年注目の人事トレンドとは

多種多様なトレンドに共通する背景・目的は「社員エンゲージメント」の向上

SCROLL

自社の風土に適応するトレンド施策を導入・運用し、
社員エンゲージメントを高めよう

2020年代の環境変化

2020年代の環境変化

人事制度・人事施策は、社会情勢やIT化の急速な進行に伴い、様々なトレンドが生まれている。例えば、同一労働同一賃金の義務化や「育児・介護休業法」「パワハラ防止法」といった法改正、働く場所に縛らない「テレワーク」や、複数の仕事を同時に並行して携わる「パラレルワーク」等を代表する働き方の変化など、企業はその時勢のニーズに沿った、且つ自社の風土にマッチする制度への変革が必要とされている。

昨今急速に加速している人的資本経営、人的資本情報の開示に対する動きにも注視すると、施策として手を打つだけでなく、人材を「資源」から「資本」へ、人件費や教育費を「コスト」から「投資」へと、考え方の転換までも求められている。

本項ではこれらの時代背景から生まれたトレンドの人事施策を紹介していく。社会のニーズに応えながら組織力強化や社員エンゲージメントの向上に繋げていくために、ぜひ参考にしていただきたい。

納得度を高める「役割主義型」の人事制度

終身雇用が前提であった1990年までは、勤続年数や年齢に応じて昇給・昇格が行われる年功主義を前提とした「職能主義型」がトレンドであった。それが1990年代には会社の利益や発展に直結する成果を重要視した「成果主義型」が主流となり、2000年代からは役割を遂行するための行動を重要視する「役割主義型」がトレンドとなっている。

役割主義型は成果主義型の弱点であったチームワークの希薄化や離職率の高騰を抑止するために導入を検討する企業が多い。能力や成果のみではなく、自身に与えられた役割に対する価値発揮を評価の対象とするため、社員の自律性や責任感、チームワーク強化による生産性向上に効果があるとされている。

より具体的に、人事フレーム・評価・処遇・育成の観点から特徴をまとめると、以下の通りである。

■人事フレーム

人事フレーム(等級制度)においては、前述している役割主義型を思想とした「役割定義書」に基づき等級区分を決定する企業が増えている。「役割定義書」とは、その等級に求める役割や成果責任、取るべき行動を社員に提示するための指針であり、この役割の難易度や重要度によって報酬を決定する。つまり、役割主義型を成立させる仕組みの基盤といえる。

■評価

企業が求める行動規範を評価指標とする「バリュー評価」がトレンドとなっている。経営理念や役割定義書にて提示している社員一人ひとりに求める役割、責任、行動を多面的に評価することにより、合理的で納得性の高い評価を実現することが可能となる。
さらに先進的な取り組みとして、「ノーレーティング」がある。「ノーレーティング」とは、評価のランク付けを行わない人事評価制度を指し、上司から部下に対してリアルタイムフィードバックを行うことによって成立する。画一的な評価の枠から脱し、上司が部下一人ひとりの取り組み姿勢を承認しながら成長をサポートすることによって、社員のモチベーション向上に繋がることが期待されている。

■処遇

処遇では、「トータルリワード」の考え方が注目されている。直訳すると「総合的な報酬」となり、金銭的な報酬のみならず「やりがい」や「自己成長機会」といった目に見えない非金銭的な報酬までを含めて、社員に動機づけを行うマネジメントの仕組みである。
また、全社員が仲間一人ひとりの行動を都度評価し、社員同士でポジティブなフィードバックを行うことができる「ピアボーナス」もトレンドの1つである。アプリを使って可視化されたオープンな場で、お互いに賞賛や感謝の言葉と少額のインセンティブを送り合うこともでき、仕事を前向きに取り組むための環境整備として導入を検討する企業が増えている。

■育成

育成における潮流は、個々の社員に必要なスキルや理解度を分析し、個々に合わせた学習コンテンツを提示する「アダプティブラーニング」の考え方である。この仕組みを導入するためには、まず自社で必要とされる知識やスキルの全体像が明確である必要があるため、第一段階として「スキルマップ」を作成し改めて自社に必要なスキルの全体像を明確にする企業が増えている。
一方で、マーケットや経営環境が急速に変化していく現代において、常に新しい技術やDXに適応し続けることが必要であることを背景に、「リスキリング」が注目を浴びている。「リスキリング」とはIT技術の導入や新規事業の立ち上げなど、全く新しい業務へ社員を配置転換するために、スキルチェンジを行うことを目的としている。

トレンド人事施策を導入する際のポイント

トレンド人事施策を導入する際のポイント

上記に挙げたトレンド施策の導入を通じて社会のニーズに応えることで、組織の生産性向上や人材獲得の競争優位性確保、社員のエンゲージメント向上に繋がることが期待できる。一方で、トレンド施策の導入は一部社員の反発や財務体質の悪化を招き、運用に失敗するケースも少なくない。

タナベコンサルティングでは、制度構築を行うクライアントに「制度3割・運用7割」を繰り返し提言している。つまり、トレンドありきで制度を構築するのではなく、自社の風土をどのように変えていきたいのかを先に打ち出し、その方向性と適応する制度を導入していくことが重要である。且つ、自社で確実に運用できるよう柔軟にアレンジする必要があることも念頭に入れたい。

また、企業と社員が信頼関係を構築し相互に成長し合える関係を築く、すなわち社員エンゲージメントを高めていくこと目的とするならば、制度と併せて社員の声を吸い上げる仕組みや社内コミュニケーションの在り方を見直すことも必要である。

自社がトレンド施策を導入する目的は何か?またどのような施策がマッチするのか?社員が現代らしく個性を大事にしながらイキイキと働くことができる職場環境を創造していくために、ぜひご参考にしていただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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