人事コラム
企業内大学(アカデミー)

新卒採用企業必見の教育体系づくり

新入社員が活躍し、定着するために必要な教育体系設計のポイントを押さえる

SCROLL

体系的な教育により、新入社員の
「採用・育成・活躍・定着」の善循環が可能に

企業が抱えている課題

弊社では、社員が成果を上げ、イキイキと働くために企業がとるべき善循環は、「採用・育成・活躍・定着」のサイクルであると考えている。採用した人材を育成し、社内で活躍する仕組みを確立することで、定着率の高い会社(人が辞めない会社)となり、次なる採用力につながる。最終的には、人が集まる会社へとアップデートが可能となる。
しかし、多くの企業では、この善循環を実現できていない状態であることが多い。

・採用はしたがその後の育成は現場に任せっきりになっている
・研修はしているのになぜか活躍しない
・活躍した人材が転職してしまった

このような声をよく企業の人事担当者から聞く。これは、「採用・育成・活躍・定着」の善循環がうまく回らず、それぞれのフェーズを分離してしまっている状態である。
また、社員がより長く「定着」することが目的になっている企業においては、「活躍」の前に「定着」する社員が増え、最終的に成果を上げない長期在籍社員が存在する状態も多く存在する。これは、「採用・育成・定着・活躍」というように、サイクルの順番が入れ替わってしまっているために発生する。

特にこのような課題は新入社員を継続的に採用している企業に多いと考えられる。少子高齢化が進み、労働力人口が減少する見込みである日本では、多くの経営資源を投入して実施している新卒採用において、この人材が如何に社内で成長し、成果を上げるかが重要となる。しかし、実際は"3年離職率"といわれるように、活躍する前に離職する新入社員が多い現状となっている。実際に、弊社には新卒入社後の若手社員の育成に関するお問合せは増加しており、業種・規模問わず悩まれている企業は多いと考えられる。

新入社員の教育における重要ポイント

新入社員の教育において重要となるポイントは3点ある。
1つ目は、目指す方向性を明確に示すこと。
「自分は会社から何を求めているのかわからない」という言葉を新入社員の方から聞く。これは、新入社員に対し、どうなってもらいたいか、という「あるべき人材像」や「習得すべきスキル・ノウハウ」が明確になっていないためである。そうなった場合、どういうことが起きるか。新入社員は会社が求めている方向とは違った方向へ進んだり、一人で求められていることより到底上を目指して挫折したりしてしまう。自身ではそれに気づかず、周囲の先輩や上司を見て体感的に実行してしまうのである。そうならないために、具体的な方法は後述するが、企業が新入社員に目指すべき方向性(求める役割やスキル)を明確に示し、そこに導くことが必要となる。

2つ目は、計画的に、体系的に、継続して支援すること。
様々な企業の新入社員・若手社員にインタビューをしていると、「研修同士のつながりが分からない」「研修をやってもその場限りで終わってしまう」という声がよく挙がって来る。研修の内容自体がふさわしくない可能性はあるが、支援の仕方が不十分なために起きていることが多い。教育を単発で終わらすのではなく、長期育成計画の一部として各研修を位置づけ、年間計画に基づいて計画的に実施することが重要である。また、研修と研修の間のフォローや、研修の前後での継続的な支援が必要となる。ブレンドラーニングをうまく活用し、オンラインとリアルのそれぞれの強みを生かした研修・支援を実行することが1つの手段として考えられる。(オンライン:いつでもどこでも観る事ができ、講義受講に最適。リアル:ディスカッションなどの意見交流に最適。)

3つ目は、メンターの導入と育成をすること。
メンターとは、必ずしも実務には直結しない精神面でのケアを含めた、幅広い支援を行うことを目的として、主に若手社員が担当する役割を指す。OJTやトレーナーのように実務の指導とは異なり、新入社員の"心のよりどころ"となる可能性が高い。メンターと指導担当者を兼ねている企業や、別に設けている企業があるが、重要なのは新入社員にとって「常に気にかけてくれ、何かあった時に何でも相談できる相手がいる」ことである。
また、もう1点メンターを設けるにあたり重要となるのは、メンターへの育成も行うことである。メンターになるということは若手社員の成長につながり、新入社員にとっても自身の数年後をイメージしやすくなる。しかし、一方でメンターの資質やスキルによって大きく質が変化する。そのため、このメンターに対しても育成をしっかり体系的に行う必要がある。

具体的な教育体系の作成方法

最後に、具体的な教育体系の作成ステップについて、ポイントを記載する。

1.経営システムと教育体系を関連付ける

経営理念やビジョン・方針から、人事制度や教育制度まで、1つの軸を通すことである。つまり、経営理念やビジョン・方針を踏まえた人事理念やその実現に向けた人材育成方針を定め、それに基づいた教育体系を策定して実行する全体の仕組みを整えるということである。そうすることで、教育体系を活用した人材育成が、結果的に経営方針の達成につながるようになる。

2.あるべき人材像を設計する

年数や階層別に「あるべき人材像」を設計する。特に新入社員や若手社員の育成に注力する場合、1年~5年までは各年設定し、その後は7年目、10年目のように設計することが多い。それぞれのステップ感を明確にし、1年間でどのような姿になることが求められているのかを示す。そうすることで、企業の方向性や各自のレベルにあった方向を目指すことが可能となる。また、これは育成する側の目安にもなり、お互いに目線を合わせた状態で教育を進めることができる。

3.スキルの棚卸を行う

上記のあるべき人材像になるために、どの対象にどのようなスキルが必要なのか、スキルの棚卸を行う。この際、階層別、職種別、テーマ別に網羅的にスキルを分類し、体系化を行う必要がある。

4.研修内容を絞る

教育体系やあるべき人材像の実現に向け、棚卸したスキルから本当に必要なスキルを絞り、研修内容を設定する。

5.学びの方法を設計する

各研修内容の学び方や支援の仕方を決定する。例えば、OJT/OFF-JT、社内研修/社外研修、オンライン/リアル/ハイブリッドなど、各研修において、最も効果的であると考えられる学び方を決定する。そのうえで、研修の前後や研修と研修の間でのフォローの仕方まで決定し、継続的に支援できるような運用を検討することが大切になる。

6.年間スケジュールに落とす

決定した研修内容を教育体系に流しこみ、その長期計画から各年度のスケジュールを設計する。その後、スケジュールに沿いながら、運用を開始することが可能となる。

上記のようなステップでポイントを抑えながら教育体系を設計することで、新卒採用企業の「採用・育成・活躍・定着」の善循環は実現に近づく。さらなる企業成長につなげるために、改めて自社にあった教育体系を検討いただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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