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まだ間に合う!2024問題に対する緊急対応

ピンチをチャンスと捉え、これからの企業創りを

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猶予期間は残り約1年!
改めて建設業界・物流業界に起こりうる問題とその対策を考える

2024年問題とは

2024年問題とは、働き方改革関連法の施行に伴い、2024年4月1日以降に生じる諸問題を表している。
建設業界や物流業界においては、これまで慢性的な長時間労働が黙認されていたのに対し、いよいよ時間外労働時間に上限が設けられる。労働環境の良化へ繋がる一方で、企業・労働者双方において多くの問題も引き起こしかねないのである。
例えば、業務時間の短縮は、業務量の減少にも大きく影響するだろう。企業にとっては、売上・利益の減少にも大きく影響する。また、納期にも影響が及ぶだろう。依頼する側もこれまで以上に発注から納品までのリードタイムが長くなり、スピード感を持った事業展開に影響を及ぼす。
また、労働者にとっても収入減少の問題が発生する。収入を魅力に同業界に所属していたのであれば、これを原因とした離職にも繋がりかねない。ただでさえ、人材採用に苦戦している業界で大量離職が発生するとなれば、企業にとっても、その企業に関連する企業・人にとってもともに大きな問題に繋がるだろう。

法改正まで残り約1年。対策を講じてきた企業もある中で、未だ打ち手を見いだせていない企業も多く残る。

「働き方改革」とは

ここで、改めて働き方改革について少し触れ、整理しておきたい。
働き方改革とは、労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会の実現を目的としており、主に以下の3点について処置が講じられた。

1.長時間労働の是正
(1)時間外労働の上限規制:原則、上限月45時間、年360時間
※労使間で合意の場合、年720時間、2~6ヶ月平均80時間以内、月100時間以内など
(2)勤務間インターバル制度の普及促進:勤務終了から翌日の出社まで一定時間以上の休息時間を設ける(努力義務)
(3)有給休暇の取得義務:10日以上の有給休暇が付与された労働者に対して、年5日間の有給休暇取得を義務化

2.多様で柔軟な働き方の実現
(1)フレックスタイム制の拡充:労働時間の清算期間が1ヶ月から3ヶ月に延長
(2)高度プロフェッショナル制度の創設:一定要件を満たす高度な専門知識を要する業務に従事する場合、労働基準法の規定に縛られない自由な働き方を承認

3.雇用形態にかかわらない公正な待遇
(1)不合理な待遇差の禁止:同一労働同一賃金の観点より、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の待遇差を是正

なお、大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月に既に施行されているが、建設事業、トラックやタクシーなどの自動車運転業務、医師といった業種・業務においては、業務特性上、長時間労働になりやすく、長時間労働の是正には時間がかかると判断され、運用猶予期間が5年設けられており、2024年4月1日より施行されこととなっている。

物流業界に与える影響

改めて、2024年問題に話を戻す。
本コラムでは、物流業界に与える影響について改めて考えてみる。

物流を主な事業とする企業において、発生が予想されている代表的な問題は以下の2点である。

1.売上・利益の減少

労働時間の短縮が、輸送距離や輸送時間に影響し、1日当たりの輸送量は減少することが大いに予想されている。そうなれば、おのずと売上・利益の減少に繋がるだろう。もちろん、その分の値上げ対応が可能であれば回避できるが、他社の動向にも合わせなければ、余計に顧客離れに繋がる可能性もある。
さらに、2023年4月1日以降、中小企業においても月60時間超の時間外残業については割増賃金率が引き上げられる。人件費増加により、さらに利益が圧迫される懸念がある。

2.ドライバー人手不足の加速

先にも述べたように、労働時間の上限規制は、労働時間の短縮に繋がり、結果として収入の減少にも繋がるだろう。労働者にとっては大きな問題である。事実、2020年に厚生労働省が行った調査結果では、約2割のトラック輸送事業者が上限規制に触れる見込みであり、収入減となる可能性を秘めている。これより、より良い条件で就労できる環境へと転職する人も増加するだろう。
人手に関する問題は、他にも多く存在する。厚生労働省のデータによると、2021年における運輸業・郵便業の欠員率は3.5%と他のほとんどの業種より高い水準である。有効求人倍率も全職業平均の2倍であり、人手不足な上に、人材の確保に困難な状態だ。さらには、トラック運転手の平均年齢も他の産業平均と比較して高く、高齢化が深刻化している。
上記に加え、EC需要も増加しており、今後抜本的な輸送改革が行われなければ、人手不足は加速し、サービス品質の低下にも繋がることが懸念される。

具体的な対応策

法改正まで残り約1年と迫った今、早急に取り組むべき対策を以下に数点記載する。

1.事業対策

(1)長距離長時間輸送対策
①中継輸送:中継拠点を設け、一つの工程を複数名で取り組む輸送(長距離から中距離輸送へ)
②モーダルシフト:鉄道や船舶を利用した環境にも配慮した物流へのシフト

(2)手待ち時間対策
①動態管理システムによる輸送ルートの最適化:配送ルート、走行時間、荷待ち時間をデータ化し、配送効率を向上

2.雇用対策

(1)賃金制度の再構築
①事業の業態に応じた制度再設計:輸送距離や車輛車種など、事業環境に応じた賃金制度の再設計を実施
(歩合給型、標準時間型、固定給型など)
②時間外手当未払防止施策:労働時間の適正管理と事故賠償金天引き制度の廃止など
※制度改定にあたり、どの程度の労務費増加が発生するかに加え、売上高労務費比率、労働分配率をシミュレーションし、労使共に最適な賃金制度を構築していくことが必要
(2)トータルリワードの活用:金銭的報酬と非金銭的報酬(休暇制度の拡充、教育機会の提供、チャレンジ制度)を織り交ぜた報酬制度の構築
(3)エンゲージメントの見える化:パルスサーベイを用いた組織エンゲージメント・仕事エンゲージメントの見える化と結果を用いた1 on 1ミーティングによるコミュニケーションの強化
(4)多様な働き方の実現:副業・兼業人材、ギグワーカーの活用による短距離輸送対策(十分な教育はもちろん必要)

冒頭でも述べた通り、2024問題は働き方改革がもたらした新たな問題ではあるが、本来は多様な働き方の実現が目的なのである。これまでの当たり前を、これからの当たり前にどのように変化させるかについて、改めて「どのような企業として、社会に貢献していきたいか」そのパーパス(存在意義)を大切に、その思想を元としてこれからの企業づくりや労働環境づくりに努めていただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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