人事コラム
企業内大学(アカデミー)

経験学習サイクルを活かした教育体系で組織活性化の実現を

経験、内省、教訓、実践の反復から生まれる、個人と組織の成長

SCROLL

教育機会の提供ではなく、
効果を出すための教育体系をトータルデザインする

経験学習の正しい理解

経験学習の正しい理解

人間は過去の経験を成長へつなげられる生き物である。言い方を変えば、経験の量や幅をコントロールすることで、 個々が描くありたい姿へ成長していくための道を作ることができる。
企業人においては、業務の経験を通した学びが、個々の成長にもっとも大きく影響する。自身に課せられた業務を遂行する上で、必要な知識を取得し、実施した行動によって経験値を積んでいくのである。
しかし、ただ経験を積むだけの反復的動作だけでは成長への促進剤とはならない。実行したことに対する振り返りと、学びを咀嚼し教訓に変えることが必要なのである。このサイクルを繰り返すことが真の成長へ繋がるのである。
単純に業務の一部を割り当てる、作業をさせるだけではなく、業務を通した成長の姿をデザインし、それに必要な工程の管理をすることが不可欠なのである。

経験学習サイクルを活用した成長支援の仕組みづくり

経験学習サイクルを活用した成長支援の仕組みづくり

次に、経験学習を活用した個々の成長を促す仕組みづくりについて触れる。
ここでは、主な取り組みすべき内容について3点記載する。

 

1.指導者のマインドセット
タナベコンサルティングでは、リーダーに必要な機能の一つとして部下育成機能を謳っている。部下を育成する責任と自覚を持ち、実践により自身の後継者となる人間を少なくとも3名排出することがミッションの一つである。
つまり、「人は育つ」という思想ではなく、「人を育てる」という観点で支援をするマインドづくりが必要である。
自身はどのような経験の元、今日まで成長を果たしてきたのかを整理し、その成功体験をもとに部下への業務割り当て、権限移譲を実施していくことで、学びを得る場を提供することが必要なのである。

 

2.効果的なタイミングと効果的な経験の理解
経験を積ませる重要性はこれまでに説いてきたが、加えて、そのタイミングも非常に重要な要素である。
効果的なタイミングとは成長を促す時期であり、効果的な経験とは成長段階に応じた経験である。
例えば、数年後にマネジメント業務の遂行やリーダーシップの発揮を期待する社員に対しては、マネジメントの知識を伝えるだけでなく、その学びを部下や後輩に対して実践していくことが必要である。先行して知識だけを伝えても、実践の場を提供できなければ経験のサイクルは回すことができず、成長の効果は期待できない。また学びを得た日から一定の期間が経過したのちに、実践の場が訪れたとしても、学びの記憶は薄れていると共に、実践の意識やモチベーションも低下しており、期待できる効果は得られにくい。
アウトプットのタイミング、モチベーションの状況を踏まえた教育機会の提供が求められる。

 

3.人事制度と連関性のある教育体系の構築
上記で述べた通り、効果的なタイミングでの経験学習が必要となり、仕組化するのであれば、人事制度と教育体系の構築だけではなく、本人・上司(指導者)・人事(教育体系設計者)の連携体制の構築が必要不可欠である。
教育体系を構築している多くの企業では、成長段階と教育テーマの連関性は意識されて構築されている。階層別研修がそれに該当する。一方、研修後、実践の場をどのように設定するかまで落とし込まれていないことが多い。つまり、やりっぱなしの研修に陥ってしまっていることが多くある。繰り返しになるが、成長促進には経験学習のサイクルを回すことが必要である。
解消していくには、三者間でどのような内容の教育が提供されるのか、それを実践する場としてどのような業務を本人に設定し、権限移譲すべきかを共有していくことが必要である。もちろん、教育の目的や目指すべくゴールを明確に示す必要があることは言うまでもない。
なお、タナベコンサルティングが提供するスクールでは三者間の育成体制を特に重視している。OFF-JTの教育ののちには、学んだことを実践する計画を具体的に明文化させる。そして、自社に戻ったのちは、その内容を上司と共有のもと実践する。一定期間終了後は、本人へ振り返りをさせるとともに、その結果に対する上司からのアドバイス、成長支援のコーチングを実施していただく。まさに学びで終わらない経験学習サイクルの仕組みである。

組織活性につながる教育体系とは

組織活性につながる教育体系とは

最後に、これらの教育体系を構築し、実装させることで組織活性化につなげる施策について言及していく。
組織が活性化する状態とは、社員一人一人が働き甲斐を感じ、社員全員が共通の目標をもって、モチベーション高い状態で業務を行えていることをいう。
では、いかにしてその状態を醸成していくか。それは、普段からの上司と部下のコミュニケーションのあり方と、それを支える人材育成の仕組みが重要となる。


コミュニケーションのあり方とは、先述の通り指導者のマインドが重要である。「人を育てる」の考えのもとどのように支援するかを考える。教育体系化する中では、指導者としてのマインド教育に加え、1 on 1ミーティングのスキルを磨く、効果的なフィードバックの方法を学ぶことも、プログラムには必要となるだろう。


また、人材育成の仕組みとは、これも先述の通り成長段階に応じた適切なタイミングと適切な業務経験の提供ができる教育体系の構築であるが、そこにエンゲージメントスコアのモニタリングを是非加えていただきたい。
これがさす意味は、会社が思案した教育プログラムの実施考課を業務成果としてのみモニタリングするのではなく、教育された社員のモチベーションやマインドに与える影響をしっかりと把握する必要があるということである。事実として、エンゲージメントが高い組織と低い組織との比較データとして1年後の営業利益率の差が3倍程度にも差異があったという実証結果も出ている。エンゲージメントマネジメントの必要性を理解し、その取り組みを行っていくことは組織活性、企業成長へ繋がる重要施策なのである。

以上より、組織活性に繋げる教育体系を支える仕組みとして、プログラムの選定だけではなく、普段の上司部下のコミュニケーション、客観的に社員のモチベーションをモニタリングする機能の付与が必要であり、かつその結果を関係者へフィードバックしながらさらに教育システムをアップデートする、組織としての経験学習サイクルへの取り組みも必要なのである。


今一度、自社の教育体系を振り返り、教育機会を提供するための仕組みに留まっていないかを確認し、必要に応じて総合的な人材開発のための教育制度へアップデートされたい。

この課題を解決したコンサルタント

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タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
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