人事コラム
人的資本経営

経営戦略と人事戦略を繋ぐには?

~経営戦略と人事戦略を連動させるポイントを解説!~

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人事部門の在り方を再定義し、経営戦略実現に向けた人事戦略を構築する

経営戦略と人事戦略の関係

「人事機能が弱い」「戦略人事になりきれない」「人事部さんがもっと現場の課題を解決してくれないと...」
これらは、先日訪問した中堅企業の経営者・事業部長から聴いた話である。詳しく話を聴くと、もちろん人事担当者のスキルアップや行動力は求めていく必要はあると感じたが、筆者が感じた違和感は「"人事"が他人事であること」である。
経営戦略から導き出される事業戦略は社員に浸透しており、若手社員にヒアリングした際も詳細まで把握されている様子であった。しかし、一方で人事戦略についての認識は幹部・中堅ともに認識が薄く、「人事部=HR周りの何でも屋」の印象が強かった。

分析を進めていくうちに、同企業の根幹にある課題は、「経営層と人事部門の距離感(連携不足)」であった。
人事部門が経営層に近いほど、戦略人事は実現されており、経営戦略と人事戦略の連動性も高い。また、人事部門と経営層の連携が十分にできていなければ、人事部の組織体制の不十分さが垣間見えることは想像できる。

「人材版伊藤レポート2.0」では、経営戦略と人材戦略を連動させることが主テーマとして公開されている。経営環境が急速に変化する中で、持続的に企業価値を向上させるには、経営戦略と連動した人材戦略(人事戦略)を策定し、実行することが不可欠であるとしている。また、CHROの設置と選任により、人事部の経営関与度を高め、人事テーマは全社的な経営課題であることを認識する必要性が示されている。

経営戦略と繋げる、効果的な人事戦略の策定方法

人事戦略とは、自社のミッションやビジョンを実現するための戦略であり、主に、採用・適応・育成・活躍・定着・アルムナイの最適化を実現していく戦略プロセスを指す。そして、人事戦略は経営方針や経営戦略、事業戦略と密に連動しており、経営戦略から求められる人物を分析・設定し、成果を発揮できるようにすることが目的である。

人事戦略を策定する大きなSTEPは以下の3点である。


①経営戦略・事業戦略から求められる人物像を設定

人事戦略は、人を資源とし活躍させることで、経営戦略の実現を支えるものである。
経営戦略・事業戦略なくしては設計できない。戦略の実現に向けて、全社・事業部・部門...が求める人材を整理することが必要である。


②中期人事戦略を策定

人事戦略は、短期視点のみならず、3~5年単位で検討することをお勧めしている。
戦略を検討するうえでの切り口は、「採用・適応・育成・活躍・定着・アルムナイ」である。
中期ビジョンや中期経営計画と同様に、単年度ごとに振り返りながらブラッシュアップしていく。


③現行制度・ルールの見直し

現在使用している制度やルールが、中期人事戦略に沿っているか、妨げていないか検討する。
短期的に見直しが可能な課題と、中長期にわたる課題は切り分けて整備することがお勧めである。


しかし、上記で示した企業例であれば、そもそも人事部がどうあるべきか、人事機能をどう整えるかを整理することから始める必要があるといえる。人事の役割や位置づけを再定義し、経営に関与する人事の組織体制をつくった上で、人事戦略策定の3STEPに取り掛かることが、成功への近道であるだろう。

経営戦略と人事戦略を繋ぎ、推進するためのポイント

人事戦略は経営戦略と連動し、全社で進めていくものであるが、一方で人事が主導すべき施策と事業部門が主導すべき施策は切り分けて考える必要がある。人事部門が主導するのは、全社横断型のHR(人材)にかかわるテーマであり、ある事業部の人材課題に密に向き合うことが本質ではない。
人事は、これまでの労務管理中心のオペレーション人事から脱却し、経営に大して価値発揮するパートナーとなることが求められる。
事業部は、冒頭の企業例のように人事任せの人事戦略に便乗するのではなく、現場の観点から企業・事業価値を高める人材について検討・議論し、積極的に関わっていく必要がある。

経営戦略と事業戦略・人事戦略を連動させ、新たに連係していくことは容易ではない。人事はこれまで通りの業務ではなく、戦略人事の機能を求められ、事業部は人材マネジメントについて真に向き合う必要がある。そのため、各部門の在り方や、役割の必要性を広く周知させることに加え、人事部と事業部・経営層との交流を活性化させることが必要不可欠である。

人事が経営に深く参画するメリットは大きい。
ぜひとも、自社のビジョン・方針・計画と連動した人事戦略を検討いただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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