人事コラム
人材採用

他社と差別化するインターンシップの効果的な募集方法とは?

~参加者募集におけるポイントについて解説~

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インターンシップ実施の目的を明確にし、
広報から内容設計まで柔軟に検討すべきである

インターンシップとは

「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(文部科学省・厚生労働省・経済産業省による「三省合意」)においては、インターンシップは、「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこと」と定義されている。


いわゆるインターンシップと呼ぶものは、旧来より、所属学校のキャリアセンターを経由し、参加することで単位が取得できる職業観を育てる取り組みを指すことが多かった。インターンシップと採用活動は分離して取り扱うべきという前提条件での実施となる。 この取り組み自体は学生にとって意義深いものではあるが、企業側においては、社会貢献活動の要素が強くなり、受け入れの工数に見合った成果が得られないケースが多いことから、割り切って受け入れる、もしくは実施に後ろ向きな企業が増えているという実態があった。


新卒採用スケジュールが大学3年生の3月解禁になった2016年卒から、早期広報手段としての短期型インターンシップ(最短1日間の内容)の実施で、学校のキャリアセンターを経由することなく、企業へ直接応募する形も取られるようになってきた。 こちらも前提としては、インターンシップと採用活動は切り離すべきという考え方であるが、実態としては応募に繋げるための早期広報手段としての実施が横行しており、青田買いを助長し、採用スケジュールを形骸化させている指摘の声が増えている。


このような状態の中で、2025年卒の採用活動からは、就業体験要件(開催日数や実施内容の基準)を満たすインターンシップに限り、得られた学生情報については、その情報を採用活動開始後に活用可能となる。 実質的に、新卒の採用活動が通年化し、大学3年生の夏休みのタイミングを狙った採用活動が当たり前化すると予測できる。


このため、採用活動において、インターンシップの実施は前提条件となり、早期接点としていかに参加者を集めていくかが、人材確保の成否を分けると言える。

インターンシップを実施する目的とメリット

この章では、改めてインターンシップ実施の目的やメリットを整理する。


<企業側から見た目的や実施メリット>
1.採用解禁前から早期接触ができる
2.自社理解を高めることができる
3.学生の評価を時間をかけてできることで見極めがしやすくなる(活躍人材を見抜くことができる可能性が高まる)


<学生側から見た参加目的やメリット>
1.企業や仕事理解が深まり、企業を慎重に見極めることができる
2.社風を肌で感じることができる 3.自己成長に繋がる


上記のようなメリットがある一方で、デメリットもあり、企業側においては、以下が考えられる。
1.準備・受け入れの工数がかかる
2.準備・取り組み度によって志望度を下げることもある
3.現場社員の協力を仰ぐ場合には受け入れの対応力によるところがある


学生側のデメリットは少ないが、以下が想定される。
1.就職活動期間において1社の拘束時間が長くなる
2.労力も含め、参加できる社数には限界があり、参加先の見極め次第では予想していた学びの機会が得られない可能性がある


上記を事前に理解し、自社にとって実施すべきか検討すべきであるが、準備と対策を講じることにより、デメリットを軽減する、もしくは、なくすこともできるため、基本的には実施を前提とした採用活動計画を立てることをお勧めする。

インターンシップの効果的な募集方法

それでは、実施をする際に、どのように参加者を集めると効果的であるか整理していく。
前提として確認すべきは、量を求めるのか、質を求めるのかである。


まずは、量を求める場合であるが、これはインターンシップを初めて実施する企業、数の確保に苦戦する職種、初期広報として認知度を高める目的で実施するなどの状況が当てはまる。
この場合は、インターンシップの実施を広く周知する必要があるため、インターンシップ募集サイト掲載、集客を目的とした大規模イベントへの出展、SNSでの広範囲への広告
などが選択肢となる。実施内容においても、日数を少なくし、業界や仕事理解を中心としてもので設計し、参加ハードルをできる限り下げたい。参加者に対しては、自社志望度を更に引き上げるために、期間を長くし、内容も実務に沿ったものを準備した上で、参加を促し、その後の採用に繋げていきたい。


次に、質を求める場合であるが、これはすでにインターンシップから成果を得ている企業、ある程度の参加数が見込める職種、対応できるマンパワーが限られる などの状況が該当する。
この場合は、求める人物を設定し、ターゲットに絞った集客活動を実施する必要があり、ダイレクトリクルーティングができるサイトの活用、ターゲット学校に対するアプローチ、OB社員がいればその社員を経由した参加呼びかけ、人材紹介に近い参加者の送客サービスの利用などが検討できる。実施内容においてもできる範囲で、内容を濃いものにする必要があり、ターゲット人材の特性を踏まえ、興味を示すであろうコンテンツを用意する。


このようにインターンシップの目的と参加数見込みを踏まえ、募集方法や実施内容を柔軟に検討し、取り組むべきである。

インターンシップ募集におけるポイント(留意点)

募集方法をご説明したが、その際に押さえておくべきポイント(留意点)を2点お伝えする。


1点目は、他社との差別化である。インターンシップの実施内容は、学生にも体験できるレベルを用意するという制約条件があるため、体験内容自体は他社と似通ってしまう傾向にある。そのようになると大手企業や名前の知った企業が有利になる。そのため、実施内容に可能な限り自社でないと体験できないようなコンテンツを盛り込むことを検討したい。技術系であれば、普段触れることのできない機器や珍しい技術を体感できる、営業系であれば、興味を引くような場所に赴くことができる などが考えられる。加えて、自社のインターンシップに参加することで「得られる学び」は何かを明確に伝え、広報する。感度の高い学生は、学びの環境を探すためにインターンシップを活用しており、自己成長を繋がる職場を求めている。ぜひこの点を明確にして、アピールすべきである。


2点目は、実施時における実務的な内容であるが、損害時の対応・ケガへの対応・学生用インターンシップ保険対応を事前に検討しておく必要がある。特に長期のインターンシップを実施する場合には、現場での実地体験をする機会も増え、当然トラブルが発生するリスクも高まる。学校経由での参加の場合は、学校側で対応していることが多いが、企業に直接応募する形では、企業側がこのリスクヘッジをしていく必要がある。体験時に対応できる体制の整備も含め、リスクが懸念される内容は含む場合は、慎重に実施をしたい。


さいごに、インターンシップは採用活動の一部となり、学びのある実施内容の提供など、上手く活用すれば、企業の知名度に関係なく、求める人材を集めることができる採用手法である。工数面を懸念し、実施に踏み切れない企業もまだまだ多いが、貴重な広報機会をみすみす逃していると言っても過言ではない。自由度のあるインターンシップにて、自社の仕事の魅力や風土を伝え、自社のファンづくりに取り組んでいただきたい。

この課題を解決したコンサルタント

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