人事コラム
人事制度

育児休業制度とは?メリットから活用のポイントを解説

男性の育児休業取得の推進により、企業・従業員の成長を目指す

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単に取得を推奨するだけではなく、取得を阻害する原因がどこにあるのかを掴んだ上で働きやすい職場作りに繋げていただきたい。

育児休業制度とは

育児休業制度とは、育児・介護休業法(「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)に基づく、子どもを育てるために仕事を休業できる制度である。
厚生労働省の調査によると約7割の女性が第一子出産後も復職し就業継続している。また妊娠・出産を機に退職した理由では「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立さの難しさで辞めた」という理由が全体の41.5%を占めており、妊娠・出産後も就業を希望する女性が増えている事がうかがえる。
一方で日本の夫の家事・育児関連時間は1時間程度であり、国際的にみると低水準である。同じ調査では夫の家事・育児時間が長いほど、妻の継続就業割合が高く、第2子以降の出産割合も高い傾向であるが、男性の育児休暇の取得は令和元年度で7.48%に留まっている。
つまり妊娠・出産後も継続的に働きたい女性は増えており、男性の家事・育児関連の時間が長くなれば女性は出産後も継続的に就業することができ、出生率も高くなる見込みがあるということが言える。
近年SDGsの「ジェンダー平等を実現しよう」という、誰もが働きやすい環境づくりの観点からも、男性の積極的な家事・育児参加が求められている。

育児休業制度改定の内容について

男性の積極的な育児参加や誰もが働き続けることのできる社会の実現に向け、育児・介護休業法が令和3年6月に改正され、令和4年4月より段階的に施行されている。改正の内容は以下の通りである。

1.男性の育児休業取得の促進(産後パパ育休制度)
子の出生後8週間以内に4週間まで休業することができる制度である。
(1)休業は2週間前までに申し出る。(改正前:1カ月前までの申し出より短縮) (2)分割して2回まで取得可能である。
(3)労使協定を締結し、事前に調整した上で休業中に就業することも可能である。

2.育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び、個別の周知・意向確認の義務付け
(1)育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境を整備すること。
(2)妊娠・出産(本人又は配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知及び休業の取得意向確認を義務づけること。
3.育児休業の分割取得
育児休業(1の休業を除く。)について、分割して2回まで取得することを可能とする。

4.育児休業制度に関する取得状況公表の義務付け 労働者数が1,000人超の事業主に対し、育児休業の取得状況の公表が義務付けされた。

5.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
有期雇用労働者の育児休業及び介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」であるという要件が廃止された。

6.育児休業給付に関する規定の整備
(1)1及び3の改正を踏まえ、育児休業給付についても所要の規定を整備すること。
(2)被保険者期間に関する特例を設ける。(受給要件を満たさなくなるケース解消のため)

育児休業制度のメリットと取得率向上ポイント

1.育児休業制度のメリット
次に企業が育児休業制度に関して、積極的に推進することのメリットについて考えていきたい。

(1)企業のイメージアップによる人材採用
育児休業制度を推進することにより、働きやすい環境づくりに力を入れている会社として企業のイメージアップにつながる。特に近年のテレワークや副業、週4日勤務など働き方の多様化が進む中、育児休暇制度の推進は会社選びの1つのポイントとなる。

(2)社員のエンゲージメントアップによる人材定着率の向上
会社が積極的に育児休暇を推進することによって、仕事に対するモチベーションや社内でのコミュニケーションも広がり組織が活性化する。環境を整えることにより、この会社で働き続けたいとエンゲージメントを高めることができる。また育児休暇があることにより、産後も安心して働き続けることができ、人材の定着率も向上する。

2.育児休業の取得率向上ポイント
育児休業制度の浸透を通して、企業をさらに成長させるために重要な3つのポイントについて説明したい。

(1)業務フロー・分担の見直しを進める
社員が育児休暇制度を取得する際には、長期間休業が発生することになるため、既存社員への負担を減らすことが重要である。育児休業の推進と平行して、業務の棚卸しを行い、社員でカバーする仕事と、効率化やDXなどを活用し、組織として仕事が進む体制作りが求められる。育児休暇制度など働き方の多様化に合わせて、仕事の進め方を見直しするきっかけとしたい。

(2)自社の制度を見つめなおす
育児休業制度を取得することにより不利益がないよう社内規定を整える必要がある。法律の改定を、自社の制度を見つめなおすきっかけにしていただきたい。会社のビジョンに向けて人材に対する考え方や評価制度など振り返っていただき、制度改定の説明会など、会社の考え方を従業員に伝える場を作ることにより、会社の理念や人事ポリシーを理解する機会としていただきたい。

(3)企業風土の醸成を目指す
育児休業制度の推進には、従業員が安心して育児休暇を取得することができ、社内でも歓迎される風土が望ましい。タナベコンサルティングでは制度2割・運用8割と考えている。制度を導入するだけではなく、取得しやすいよう社内への周知・研修、相談窓口や復帰支援体制など会社として取得しやすい風土づくりを目指したい。

さいごに

本コラムでは、男性に育児休業取得におけるポイントやメリットについて解説したが、まだまだ周知が行き届いていない事が実情である。とは言え、単に取得を推奨するような部分最適に陥ってはならない。自社の人員構成や組織風土に応じて何から手をつけるべきなのかを整理し、組織単位で検討していく事が取得しやすい環境づくりに繋がる。
例えば業務量は適切か、取得時のフォローアップ体制は十分か、復帰後スムーズに職場に馴染めるかなど、育児休業取得を阻害する原因はどこにあるのかを掴んだ上で、本質的な働きやすい職場作りに繋げていただきたい。

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