人事コンサルティング事例
企業内大学(アカデミー)

「患者様中心主義」の医療を目指して創業
ナカジマアカデミーで企業理念が浸透
<後編>

株式会社ナカジマ薬局

ナカジマグループでは一人一人のスキルを上げる教育方針を掲げ、独自の教育プログラムを充実させている。
全店舗から薬剤師を集め、各店舗の発表や特別講演を実施する社内学術研究会、疾患別勉強会などはその一例だ。

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取材先様のお役職は、取材当時のもの、タナベ経営社員の役職は、2020年現在のもの

「3年で薬局長を育てる」ナカジマアカデミー始動

動画だと場所や時間を選ばず
繰り返し視聴できる
ナカジマグループでは一人一人のスキルを上げる教育方針を掲げ、独自の教育プログラムを充実させている。全店舗から薬剤師を集め、各店舗の発表や特別講演を実施する社内学術研究会、疾患別勉強会などはその一例だ。

そうした中、タナベ経営から企業内大学(アカデミー)設立の提案を受けた。そこで検討と準備を重ね、2017年10月から「ナカジマアカデミー」を開校したのだった。

ナカジマアカデミーは、「3年で薬局長を育てる」ことを目標に、入社1~3年目の社員を主対象に実施(他にも各階層ごとに視聴カリキュラムを設定)。受講することで「患者様中心主義」を体得し、薬局長として活躍できるようにカリキュラムを体系化している。

研修は、集合研修(リアル)とWeb動画による研修(デジタル)で構成される。集合研修は階層ごとに分かれ、チームワーク・コーチング・問題解決(アドバンスコース)、薬局長の役割と責任・クレーム対応ケーススタディー(リーダーシップコース)などを行う。

一方、動画研修では企業理念や創業物語、グループが目指すものについて収録した講義を、パソコンやタブレット端末で視聴。動画本数は45本に及ぶ。

動画だと、時間や場所を選ばず効率的に受講できる。何度も繰り返し視聴でき、指導者によるばらつきも生じない。また、業務中に視聴しやすいよう、全ての動画を10分以内に収めている。

中島久司社長は「企業規模が拡大する中、経営理念や経営者としての思いを全社員にどう伝え、浸透させればよいのか悩んでいた」と打ち明けるが、そうした懸念は動画にすることで解消されたという。

新入社員や中途入社社員の教育ツールとしても効果は高い。「自分の勤める会社だが、初めて知ったこともあった」「社長の熱い思いが聞けて感動した」など、動画は社員からも好評で、会社への愛着を深める機会にもなっている。

社員の受講状況の進捗を管理できる点も大きなメリットになる。管理画面を見ると、誰がどこまで学んでいるかがひと目で分かり、「学習状況の見える化」が図れるのだ。

受講する側だけではなく、教える側の教育にもつながるという。アカデミーの講師は社員が務めるが、講師社員は話す内容を事前に考えてレジュメを作り、練習をして動画収録に臨む。こうした経験を通じて、人前で話すスキルが身に付き、自分の知識を整理する機会にもなる。

アカデミーを通じ、「患者様中心主義」という企業理念は、社員一人一人へ今まで以上に浸透しつつある。一方、「動画で伝え切れない部分について、直接話して伝えたい、社員の質問や疑問に答えたい思いが強まった」と中島社長。そのため、2018年は中島社長が自ら店舗を回り、社員と対話する機会を増やすという。

また、今後は管理者になった後の薬剤師の教育カリキュラムの充実や、薬剤師以外の職種へのアカデミー受講対象拡大などを実施したい考えだという。

「人材、店舗のレベルを上げオンリーワンの存在へ

調剤薬局業界を取り巻く現状は厳しい。医薬分業の普及に伴う市場の成熟、医療費削減政策などによる収益減、大手や異業種参入による競争激化、慢性的な薬剤師不足や後継者難などの逆風にさらされ、全国に約5万8000店舗ある薬局は今後、淘汰が進んでいくとみられている。

さらに、将来はロボットやAI(人工知能)による医薬品調剤の普及も予測される。機械が調剤を行う時代になったとき、「薬剤師は人にしかできないことをやるべき」と中島社長。

その1つが在宅調剤だ。今後は高齢化が進み、施設に入れない高齢者の増加が予測される。一方、自宅で最期を迎えたいという高齢者は多く、在宅医療のニーズはますます高まっていくだろう。

こうした中、ナカジマ薬局は薬剤師が在宅訪問し、薬を届ける在宅調剤に取り組んでいる。医療・介護スタッフと連携し、患者の自宅で薬の効果・副作用の説明、残薬の確認・管理支援などを行いながら、在宅医療をサポートしているのだ。

また、「未病」への取り組みにも力を入れる。患者の症状に合わせた栄養補助食品の提案、生活改善指導、医療機関の紹介、地域での健康講座実施など、病院へ行く前段階での情報提供やアドバイスに努める。

患者中心の取り組みを重ね、新たな取り組みに挑戦するナカジマグループ。中島社長は、こう続ける。「当社にはお金よりももっと大事な、"いい人材"がいる。患者さんに寄り添える"いい人材"をより多く育て、1店舗ごとのレベルを上げることで、それぞれの地域でオンリーワンの存在になっていきたい」

タナベ コンサルタントEYE

タナベ経営 経営コンサルティング本部 北海道支社長 笠島 雅人(左)
タナベ経営 経営コンサルティング本部 チーフコンサルタント 堀部 諒太(右)

ナカジマグループは、「患者様中心主義」を経営理念に掲げ、常に業界の一歩先を行く取り組みを行っている。また、2017年にはナカジマアカデミーを設立。「一人一人の成長が患者様中心主義の実践、ナカジマグループの成長へとつながる」という信念の下、次世代を見据えた人材育成に注力。教育の機会を広げ、会社全体で学ぶ風土づくりを推進しているのだ。人材成長を軸に、さらなる進化を遂げようとしているナカジマグループの今後が楽しみである。

会社プロフィール

会社名
株式会社ナカジマ薬局
所在地
〒060-0010 北海道札幌市中央区北10条西24-2-15
TEL
011-633-2345
創業
1977年
資本金
3000万円
売上高
155億円(グループ全体、2016年9月期)
従業員数
576人(グループ全体、2018年3月現在)
事業内容
保険調剤薬局、医薬品小売販売事業、在宅支援事業
URL
http://www.nakajima-phar.co.jp/

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 66
  • 200 業種
  • 17,000 社以上