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次世代を担うリーダー人材の育成に注力

(学)西野学園

幼稚園や専門学校などを展開する西野学園が、2020年に創業55周年を迎える。
ベビーブームの到来で、幼児教育を行う施設が必要とされていた1965年、現理事長・前鼻英蔵氏の父に当たる前鼻時彦氏が、
西野桜幼稚園(札幌市)を開園したのが同学園の始まりだ。

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取材先様のお役職は、取材当時のもの、タナベ経営社員の役職は、2020年現在のもの

2020年で創業55周年「生きるための力」を醸成

「生きるための力」の醸成に一貫して取り組んできた西野学園。近年は「わかる授業」を追求し、教授法の見直しを図ってきた 幼稚園や専門学校などを展開する西野学園が、2020年に創業55周年を迎える。ベビーブームの到来で、幼児教育を行う施設が必要とされていた1965年、現理事長・前鼻英蔵氏の父に当たる前鼻時彦氏が、西野桜幼稚園(札幌市)を開園したのが同学園の始まりだ。その後、調理師高等専修学校の開校を経て、1982年に医療系専門学校へ進出。現在は札幌、函館を拠点に、医療福祉専門学校4校、幼稚園2園、学童保育1カ所を運営する。

創業以来、同学園は学生の「生きるための力」の醸成に一貫して取り組んできた。専門学校では2007年以降、「教育の質の向上」に向けて改革を実施。「わかる授業」を理念に掲げ、学生の立場に立った授業を行うために教授法の見直しを続けてきた。

一方、幼稚園は近年、定員オーバーが続いている。子育て世代の住むマンション、進学校への進学率が高い中学校と隣接するエリア特性に加え、自律・自立や集中力を養う「モンテッソーリ教育」を求める入園希望者の増加が主な要因だ。そのため両園とも全面改築を行い、2019年、2020年と相次いでクラスを増設。2園で合計約600人(従来比150人増)の園児受け入れ体制を整える。

そんな西野学園では今、職員の構成が従来から一変している。というのも、先代の時代から勤めた人材が続々と定年を迎えており、現在は勤続年数10年未満の職員が全体の6割を占める。

さらに、医師や看護師中心だった病院や医療の在り方にも疑問を感じ、「患者中心の医療を実現させたい」思いが募っていったという。

「将来を見据えたとき、これからの西野学園を担うリーダー人材を育て、組織力を向上させることが不可欠。特に中間管理職の成長は組織の地力であり、彼ら・彼女らを育てなければ、企業の成長はない」(前鼻氏)

人事制度改革を実行"新しい風"が吹きやすい組織へ

西野学園 理事長
前鼻 英蔵氏
こうした危機感から西野学園では今、次世代を担うリーダー人材(経営人材)育成への取り組みを進めている。

具体的には、従来の年功序列を改め、能力に応じて学科長などの職位を付与する人事制度へ変更。これにより、教育スキルと、社会人としてのビジネススキルの観点で職員を評価し、昇格(職位)を決める仕組みを整えた。

「一定以上の能力があれば、誰でも学科長を務めることができるようにしました。さらに、学科長は2年の任期制へ変更。こうした改革で閉塞感やマンネリを打破し、新しい風が吹きやすい組織に変革するのが目的です」と前鼻氏。

さらに、2015年からは中間管理職層を対象に、リーダー研修を実施。学科全体をマネジメントし、メンバーのモチベーションを高める、いわば学科長に必要とされるスキルを学ぶ研修だ。

前鼻氏は「入学する学生は毎年違う。教員も自分の能力をどんどん磨き続けて変化し、向上する必要がある」「教育に終わりはない。自分たち次第で学生は変わるという意識を持ってほしい」と、職員の意識改革の必要性を語る。

人事制度改定や人材育成研修に加え、チームで仕事をする意識を醸成するため、2016年には「N,sシート委員会」を立ち上げた。委員会は、対象を在校生、教職員、卒業生・地域連携の3つに分け、さらにソフト・ハード面に区分した6つの分科会で構成。入職3年以上の職員を組織横断的に配置し、3年間でPDCAを2回以上回す3カ年事業として取り組んでいる。

委員会の目的は、セクショナリズムを排除し、チーム医療に貢献できる人材を育成すること。「部門の壁を超えて仕事をする癖を身に付けてほしい。組織全体で情報を共有しながら、職員が主体性を持って業務をスムーズに行えるようになってほしい」(前鼻氏)

研修や人材育成策の成果は、確実に表れ始めている。

例えば近年、函館や新札幌(札幌市厚別区)で開催した「西野マルシェ」は、教職員が自ら企画・運営し、やり遂げたイベントの好事例と言えよう。小学生たちに医療の仕事を体験してもらいながら、西野学園や医療業界について知ってもらう取り組みである。

また、N,sシート委員会では年2回、同窓会誌を発行し、卒業生同士の交流やネットワークづくりを促してきた。さらに、55周年を迎える2020年には大規模な同窓会を企画。こうした取り組みのかいもあり、卒業生同士の交流は少しずつ活発化している。

社会的重要性の高まる専門学校の役割

「専門学校では職業人教育を通じ、社会で活躍する人材を多数育成し、地域の重要な人材を供給していることを周知したい。学校側は、『こういう人材を育成してほしい』という産業界のニーズに柔軟に学校が対応していくことが不可欠です」と前鼻氏。

社会の変化に応じて、教育も変化する必要があることは言うまでもない。日本の労働生産性を高めるカギも、教育が握ると言えよう。人生100年時代を迎える中、職業人教育を受けられる専門学校は、社会人の学び直しを考える上でも有力な選択肢だろう。ますます社会的重要性の高まる西野学園の今後が期待される。

タナベ コンサルタントEYE

学校業界は、変化に弱い業界である。世の中の変化に気付きながらも一歩を踏み出せず、行動できない学校は多いのが実態と言える。

そうした中、先進的な取り組みを実施し、全国専門学校のリーダー的存在になっているのが西野学園だ。具体的には、組織戦略改革の一環として、硬直しがちな学校組織にメスを入れ、学校業界には導入が難しいといわれた人事評価制度の展開や、管理職の教職員に向けたマネジメント教育を実施し、成果を上げている。

企業が即戦力人材を求める今、職業人を育てる専門学校が担う役割はますます大きくなる。今後の西野学園の活躍に期待したい。

会社プロフィール

会社名
(学)西野学園
所在地
〒060-0004 北海道札幌市中央区北4条西19-1-3
創業
1965年dd>
代表者
理事長 前鼻 英蔵
売上高
31億1982万円(2018年5月期)
教職員数
192名(2018年12月現在、パート含む)
URL
https://nishino-g.ac.jp/

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