人事コラム
人材育成

ケイパビリティを自社の新たな戦略テーマに

昨今の急速なDX化(デジタル化)やグローバル化に伴い、一過性の強みから、安定的・中長期的に自社の競争優位に寄与するケイパビリティに注目が集まりつつあります。本コラムでは、ケイパビリティ向上に向けた人事施策のご紹介します。

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はじめに(ケイパビリティとは)

はじめに(ケイパビリティとは)

ケイパビリティ(capability)とは、一般的に「才能・能力・スキル・ポテンシャル」といった意味合いを持つ言葉であり、HRの世界では、組織的な能力=「組織で育まれた自社固有の持ち味を集結させて遂行する力」と表現することが多い。

コアコンピタンスが自社の商品・技術・サービスに関する固有技術(テクノロジー)であるのに対して、ケイパビリティは、組織(部門)横断で向き合うプロジェクト体制(マトリックス組織)やバリューチェーン(価値創造を行う一連の流れ)の各プロセスより育まれる点に違いがあり、他社に模倣されづらい特徴を持つ。

昨今の急速なDX化(デジタル化)やグローバル化に伴い、一過性の強みから、安定的・中長期的に自社の競争優位に寄与するケイパビリティに注目が集まりつつある。

本稿では、そんなケイパビリティを高める人事施策について紹介していきたい。

ケイパビリティ向上に向けた人材育成

ケイパビリティ向上に向けた人材育成

ケイパビリティ向上に向けた一つ目の施策は人材育成である。
キーワードは「学習機会の提供」であり、社員一人ひとりが能動的に教育や研修等と向き合う仕組みが必要不可欠であるため、教育や研修が単に会社(上)から与えられたモノと認識してしまうと効果は激減する。
ゆえに、選択式(EX:与えられた研修から選ぶ)・立候補式(EX:自ら挙手して参加する)・選抜式(EX:同等級内から絞り込む)など、自律性を促す仕掛けが重要となる。

また学習テーマとしておススメなのが、ケイパビリティの向上に直結する概念化スキル(コンセプチュアルスキル)の習得である。 ※概念化スキル(コンセプチュアルスキル)とは、複雑な事象を概念化することにより物事の本質を把握する能力を指す。

さまざまな出来事や課題に直面したときに、その事象に共通するポイントや本質的な課題を素早く見抜き、正しい判断へと導ける力を高めた社員を増やすことが結果的にケイパビリティの向上に直結することを押さえておきたい。

ケイパビリティ向上に向けた人事制度

ケイパビリティ向上に向けた人事制度

ケイパビリティ向上に向けた二つ目の施策は人事制度である。
キーワードは「ローテーション人事」であり、特に効果的なのは「管理職以上の配置転換」と「部門を超えたダイアローグ」の実施である。

筆者がコンサルティングしている大阪のA社では、2年に1度のサイクルで管理職(管理監督者)は自身が担当する事業部を異動する仕組み(マイナー変更あり)を取っており、管理職が積み重ねてきた経験や成果を事業部横断で展開できる仕組みを取っている。
結果的に、メンバーは管理職の経験や実績より取捨選択しながら、バランスの取れた知識やスキルを習得することができるよう意識が醸成されるようになっている。

また、筆者が担当している大阪のB社では、2か月に1回(偶数月)、部門を超えた管理職と一般職間で対話(ダイアローグ)をする機会を設けており、この時間、原則管理職は「聴くに始まり、聴くに終わる」を軸に一人ひとりのメンバーと向き合うことを仕組み化している。

この取り組みは管理職・一般職の双方に効果があり、日常の組織・チームとは違った視点からの情報に触れることで、視野を広げる狙いがある。

ケイパビリティ向上に向けた組織カルチャー

ケイパビリティ向上に向けた組織カルチャー

ケイパビリティ向上に向けた三つ目の施策は組織カルチャーである。
キーワードは「エンゲージメント」であり、組織全体で育んでいく「全体性」、「一体感」、「自律的相互関係」がポイントとなる。

部門・職種・階層を超えて、会社(組織)と社員が相互のつながりの中でこれらの関係性を育むためには、

(1)仕事エンゲージメント
(2)組織エンゲージメント
(3)カルチャー

の3つの切り口に対して、それぞれアプローチしていくことをおススメしたい。

※詳しくは以下のコラムをご覧いただきたい。

さいごに

繰り返しになるが、ケイパビリティ(組織で育まれた自社固有の持ち味を集結させて遂行する力)は、自社の商品(製品)や技術・サービスと違い、目に見えづらい領域であり、希少性が高く、模倣性が困難であるからこそ、追求していく意味ある戦略テーマであると考える。
これを機に自社の競争優位性を高めていただければ幸いである。

この課題を解決したコンサルタント

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