人事コラム
サクセッションプラン

人事・組織戦略必須のサクセッションプラン

サクセッションプランこそがトップマネジメントにおける重要テーマ

SCROLL

皆様の会社の後継者育成計画を明確にしましょう。

サクセッションプランが必要とされる背景

サクセッションプランが必要とされる背景

サクセッションプランとは、後継者育成計画のことを示し、ポイントについては大きく下記の2点があります。
(1)将来のCEOまたは、重要なポジションの交代を見据えて、後継者候補を育成し、CEOとして必要な資質を備えさせる。
(2)後継者として最も適切な人材を選出する一連の中長期的な取組みを行う。
これらがポイントとなります。

後継者育成は、企業規模に関係なく、企業が持続的成長をしていくため、後継者育成は、重要な経営課題の一つだと言えます。
更に、サクセッションプランは、上場企業に対して強く要請されており、コーポレートガバナンス・コードつまり企業統治指針により、対応が必要となっています。
コーポレートガバナンスとは「企業統治」のことであり、つまり、コーポレートガバナンス・コードとは、上場企業が行う企業統治においてガイドラインとして参照すべき行動規範を示したルールのことを言います。

2015年6月より施行されたコーポレートガバナンス・コード"補充原則 4−1③"に取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。
と記載されていますのでぜひご確認いただければと思います。

一方で、経済産業省の発表によると70歳以上の経営者が245万人、その半分の127万社が後継者未定であり、10年間で60万社が黒字廃業の危機にあるとも言われています。 また、東京商工リサーチが公表したレポートによると、後継者不足を起因とする「後継者難倒産件数」は2021年には381件と前年比2.8%増、過去最多の件数を記録しています。
タナベ経営においても、ファーストコールカンパニー、つまり、時代を超えて100年先も一番に選ばれる企業になるための5つの条件の5つ目の項目として、"事業承継の経営技術"を挙げています。
まさに、企業が持続的成長を実現していくために、サクセッションプランは、解決しなければならない経営課題と言えます。次にサクセッションプラン詳細について記述します。

サクセッションプランについての詳細

サクセッションプランについての詳細

1.サクセッションプランと教育との違いについて

通常の人材育成とサクセッションプランでは、育成に関する「視野」や「分野」が異なります。タナベ経営においても、 後継経営者スクールなど後継者をトレーニングするカリキュラムがあり、スクールの中では、"全社的視点""中長期的視点""経営者視点"の3つの視点で考えることができるように学んでいただきます。
サクセッションプランでは、後継者育成を目的に、経営方針・経営戦略を踏まえた「より長期的視野に立った育成」として、各部門を経験させるジョブローテーションなども行います。

また、通常の人材育成では、ある一部門の中で専門性を高めることを目指すことに対して、サクセッションプランは 「全社横断的に経営層としての期待レベルに達するよう、全分野において育成していく」という違いがあります。
ジョブローテーションも全社的視点で物事が考える事ができる一つであり、まさに、視野と分野において、通常の人材育成とは異なってきます。

2.策定すべきポイント

策定すべきポイントは、4点になります。

①中長期的な事業の方向性・自社の企業理念・価値観の確認であります。
タナベ経営においても、理念・ミッション・ビジョン・中期計画・年度方針・個人の行動計画は、一本筋を通す必要があり、経営のバックボーンつまり経営の背骨と位置付けています。
経営層にはリーダーとして社員を束ね、社を率いていくという役割が求められます。そのためには、自社が伸ばしていきたい事業、継続して行っていく事業を遂行していくにあたり、中長期的なビジネスの方向性・自社の企業理念・価値観の確認が前提として必要になります。

二つ目のステップは、②CEO・役員に関する求める役員像つまり人材要件の明確化です。
各社によって当然、求める役員像は変わってきます。
中長期のビジネスの方向性、自社の企業理念・価値観によって、次期社長・役員にとって想定される課題を明確にします。
その上で、次期社長・役員が今後の経営課題を達成するために必要な経験・能力・資質などを整理し、求められる役員像を描きます。ポジション別やポジションに関係なく共通の人材要件を設定します。
大阪に本社をおく、A社では、「変革志向の強さ」、「お客様の喜びを追求する姿勢」、「組織を動かす迅速な決断と実行」「グループの将来ビジョンを描く」など役員に求められる7つの人材像を明確に定めています。
指名委員会や役員が7つの「求められる人材像」を具体的に共有し、評価・育成指標を明確化させることで、中立的な育成・選抜を実現しています。

求める人材像が明確になれば、三つ目のステップは、③選抜プロセスに移ります。
選抜・選解任プロセスにおいては、まず、全体像の設計を行います。
コーポレートガバナンス・コードでは、サクセッションプランの管理監督をする組織を挙げています。
後継者の育成関しては「取締役会」を、幹部候補者の絞り込みや指名に関しては「報酬・指名の諮問委員会」の設置が記載されています。取締役会、指名諮問委員会、報酬・指名の諮問委員会などを設置し、各機関の役割やメンバー構成を設定します。
関西圏にあるB社では、取締役会は、サクセッションプランのプロセス全体が適切に機能しているかを監督する役割としています。 また、指名諮問委員会は、サクセッションプランの運用(選抜・育成)、取締役会への経営幹部の選解任案の提示する役割を担っています。
その他には、社長が指名した人材で形成されている委員会「社長指名諮問委員会」を設けている企業もあります。
具体的には、緊急事態が生じた場合の継承プランおよび後継者計画つまり、サクセッションプランの審議、社長CEOの評価、次年度の社長CEO指名などが社長指名諮問委員会の仕事となっています。委員長は社外取締役、委員の過半数も社外取締役として独立性を高め、社長選びのシーンで公正に機能させる企業も中にはあります。 委員会の目的は、「社長候補者の決定に対する透明性・客観性・適時性を高め、取締役会の監督機能の強化を図る」ことと言えます。
また、評価指標、基準、評価計算等の検討と同時に、選抜・選解任基準の検討を行います。また、緊急時におけるCEO代行順位決定の手順についても策定します。

最後の4つ目のステップは、④育成計画の策定になります。
対象者ごとの個別育成計画のプロセスの策定を行います。策定するにあたり

a.経営者としての視座を高める
b.多様な価値観・広い視野を持つ
c.役員として最低限持つべき知識の獲得
など育成プロセスを策定します。

役員育成方針の策定が終われば、候補者の現状の能力保有度を把握した上で、研修プログラムの検討を行います。 研修プログラムについては、個別育成型と集合教育型にわけてカリキュラムを策定します。
C社では、また、人財の定義を今すぐに後任となれる人財、1~3年で後任として育成する人財、3~5年で後任として育成する人財の3つに分けてサクセションプランを実施しています。 いますぐ後任になれる人財は候補者を1名必須で挙げます。 また、1~3年後に活躍する人財には、現業務のほか育成プログラムを通して能力開発にあたります。 3~5年後に活躍できるポテンシャルを持った人財には、育成プログラムと業務のローテーションを組むことで能力開発に臨みます。 サクセションプラン対象者には、サクセション・プランフォームを作成し、基本使命、求められるスキル、求められる経験といった内容を把握します。また、それぞれの課題達成度は、コーチング、360度多面評価、フィードバックといった手法で本人に還元されます。還元された遂行度の評価で「気づき」を促していく仕組みを作っています。
D社では、人材プールを、CEO、取締役・執行役員・事業部長などの重要ポスト、経営幹部候補者の選抜・育成、将来のポテンシャル人材の発掘・育成の4階層に分けて育成を行っています。
タナベ経営においても、次期役員育成支援メニューとしてジュニアボードコンサルと言ったメニューがあります。
ジュニアボードとは、次期経営幹部候補など次世代を担うメンバーを青年役員として任命し、彼らに経営全般について、 またビジョンについてなど、役員と同じように問題を討議し、そこで生まれたアイデアを役員会に意見具申させ、良い点を取り入れていこうとするものです。
一般的には、自社の中長期ビジョン・中長期計画の策定をミッションに、実施するのが経営的視点を身に着ける効果的なテーマと言えます。

最後になりますが、サクセッションプランに基づく長期にわたる人材育成計画の策定・運用は、単に経営層の後継者選びにとどまるものではありません。
サクセッションプランの取組は、自社の経営理念を明確化し、将来を担う人材をより多く育てることができ、企業価値を高め、結果として社会貢献へとつながります。今後も注目が高まる重要な手法と言えます。
各企業それぞれ業種、規模が、さまざまとは思いますが、是非、トップマネジメントの重要な経営課題として再考いただければと考えています。

この課題を解決したコンサルタント

ABOUT TANABE CONSULTINGタナベコンサルティンググループとは

タナベコンサルティンググループは「日本には企業を救う仕事が必要だ」という志を掲げた1957年の創業以来
66年間で大企業から中堅企業まで約200業種、17,000社以上に経営コンサルティングを実施してまいりました。
企業を救い、元気にする。私たちが皆さまに提供する価値と貫き通す流儀をお伝えします。

コンサルティング実績

  • 創業 66
  • 200 業種
  • 17,000 社以上