人事コラム
人的資本経営

『人的資本経営』の実装ポイント

『人生100年時代突入』社員自身が自身で生きてゆく力、そしてそれらを可能性と共に支える力を発信する

SCROLL

『充実した人生を送ることは、社員個人の努力次第』
という考え方は通用しない

『人的資本情報開示』とは

『人的資本情報開示』とは

少子高齢化や人生100年時代の到来により、企業には事業環境の変化に対応しながら持続的に企業価値を高めていく力が求められています。人的資本情報開示とは、企業が自社の人的資本に関する情報を公開することを言います。では、人的資本とは何を指すのでしょうか?それらは、企業における働く社員を指し、社員のスキル、発揮している能力、経験、またはどのような経験を積むことができるのか、教育体系、実際のトレーニング、健康管理、健康促進策、福利厚生、キャリア開発、雇用条件、給与体系などを含みます。
なぜ、この様な内容を開示することになっているのでしょうか?ひとつには『人生100年時代の到来』が挙げられます。もはや雇用する企業として、プライベートの充実は個々の努力義務とは言えない環境と言えます。働く環境をより良くし、プライベートの充実を促し、また仕事=価値発揮に向き合っていただく、この様な善循環を環境、仕組み、ルールで実装し、実践しているかどうかを自ら証明する必要があります。
『人生100年時代』といかに向き合うのか?これは国家の課題でもあり、国も積極的に推進している国家施策です。その様な中、『わが社は社員に逆のことを求めている』ということでは、新たな社員が来てくれないだけではなく、取引先との信頼関係も維持できなくなります。取引先とわが社の社員は『生の声』でつながっていると考えるべきでしょう。
今回のテーマとは異なりますが、この背景ゆえ、『私たちはこれまで以上に生産をあげ、労働環境改善のための成長投資を可能にする収益を上げる必要がある』との経営課題に直結するテーマでもあります。

『人的資本データ』は、わが社の

『人的資本データ』は、わが社の"将来発展データ"の根拠となる

タナベコンサルティングのコンサルティングでは、クライアント企業の人材と幹部陣から、将来の成長課題を分析することがあります。その一部をご紹介すると、現在の人員構成、役割と責任及びそこに対する向き合い方とマネジメント、採用~育成~活躍~定着を促進する教育体系の有無及び計画立案と実践度合い、昇進昇格(降格)基準の明確化と実施状況、将来に向けて打っている手、これらを事実ベースで押さえながら現在の業績への関与具合と将来の成長性を分析し、クライアント様とディスカッションを重ねます。
一昔前は、これらの内容は社員の皆様でさえも"ブラックボックス化"された内容でした。管理職が知っている程度だったでしょう。今となっては考えにくい実態です。
今後を見据えれば、現在より年間休日の推奨取得日数が少なくなること、一日当たりの労働時間が長くなること、残業規制時間が緩和されること、これらはないでしょう。この観点から一層の生産性向上が急務です。『10年は修行、カバン持ち』との考え方や教育体系は世の中に受け入れられませんし、このような時間軸では必ずや市場から周回遅れになり、選ばれない企業になります。
『私が御社にお世話になるとしたら、私はどうなりますか?』この質問に回答できますでしょうか?きっと、"イラッと"された方もいらっしゃるでしょう。しかしながら、社会から『お手並み拝見』されていると考え、上記の実装を検討し、実行される方が建設的で前衛的な考えと言えます。

『人的資本経営』実装に向けての取り組み

『人的資本経営』実装に向けての取り組み

企業が人的資本情報を開示することで求められている役割は、社会に及ぼす影響、社員の働き方や幸福度への配慮、その結果、どれほどの社会的価値を創出することにつながる取り組みをしているかを発信することが期待されています。
情報開示は、持続可能性や社会的責任に関する報告書、ESGレポート、企業責任報告書、サステナビリティ報告書などに含まれます。


『人的資本経営』の実装と推進について、福利厚生の充実や職場環境改善と同義と捉えている現場を散見するため、注意したいところです。福利厚生の充実や職場環境改善はその一部であり、すべてではありません。
まずは『人的資本経営』の実装のために、『人的資本経営』の全体像を描きましょう。そして全体像を幹部や社員の皆様と共有していただきたいと考えます。理由は、他社と比較して"ないものねだり"を起こさせないためです。現場と物理的距離がある会議室の中だけでこれらを議論してしまうと、数値結果だけに焦点が当たってしまい、『そこに振り向けるだけの予算がとれるのか?』『減収減益にも関わらず、何を言っているんだ?』等の意見に傾倒してしまい、論点がズレた議論に終始してしまいます。
『人的資本経営』の実装は、将来に向けた会社のあり方をデザインし直すことがスタートです。社員、取引先から支持される企業になるためには、現在の環境変化に対応してゆくことが建設的な考えです。現在の環境変化は『社員が、自身の人生100年時代をよりよく生きるための応援を、企業が能動的に行うことが求められている』という背景です。


人的資本の現在値を開示してゆくことは、経営陣だけの役割と責任ではありません。社員と共に推進するべきことです。
一部ですが、先述した内容に加え、開示が求められている内容を下記にお示しします。


社員の多様性並びに包摂性・インクルージョン・社員の健康と安全に関する情報・社員が企業の目的や価値観に共感しているかどうかに関する情報・社員のエンゲージメントやモチベーションに関する情報・協業及びアライアンス先との活動を行うための環境や文化に関する情報、等があります。


これらを推進するために、予算と実行プロセスを明確にすることが必要であり、KPIの設定、分子、分母を明確にし、改善ステップを明示することです。そして振り返りの場を設定し、経営陣にアラームがなる仕組みを設計することが有効です。
能動的に推進している企業は、社内に対して啓蒙と牽制を行っています。デジタル化した社内報やアナウンスを活用し、企業を上げて取り組む流れを構築しています。本レポートが人的資本経営の実装を考えるきっかけになれば幸いです。

この課題を解決したコンサルタント

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