人事コラム
エンゲージメント

人的資本経営を実現するためのエンゲージメント戦略とは

~人材価値と企業価値を最大化するために取り組む価値あるエンゲージメント戦略に迫る!~

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「エンゲージメント戦略」はすべての戦略の土台となるKFS(重要成功要因)である。

人的資本経営とエンゲージメントの関係性

人的資本経営とは、人材を資源(コスト)と見なすのではなく、資産(価値)として捉え、「人材価値を最大限に高めた結果、企業価値を高めていく経営モデル」のことである。
※本サイトにおいては折に触れて人的資本経営について取り上げているため詳細は割愛


この人的資本経営を国際基準の指針としてまとめたものがISO30414であり、国内企業が実践できる内容を報告書にとりまとめたモノが人材版伊藤レポート2.0(経済産業省)である。


人的資本経営に関する情報が錯綜する中、各社はISO30414や人材版伊藤レポート2.0を足掛かりに、あらゆる施策に乗り出しつつあるが、何か一つに絞って取り組むのであれば、筆者は迷わず「エンゲージメント」と向き合うことを推奨する。


その理由は、エンゲージメントが「組織と個人の繋がりの中で育まれる自発的な関係性」を指し、社員一人ひとりが能動的にこの関係性を育んでいくことで、人材価値を最大限に高め、その結果、企業価値を高めていくことに繋がるためである。


ゆえに、「エンゲージメント」を単なるアセスメント(検査ツール)ES(社員満足度)調査の代用品として、捉えるのではなく、各社の持続的成長を実現するための「最重要経営テーマ」として捉えることが重要であり、これらの考え方を総して、筆者は「エンゲージメント戦略」と呼んでいる。

エンゲージメントを自社の重要戦略テーマとして捉える。

自社の中長期ビジョンや単年度の方針(全社方針または部門方針)の中に、「エンゲージメント戦略」は明確に言語化され、具体策まで落とし込まれているだろうか。


NO. 代表的な戦略(抜粋) NO. 代表的な戦略(抜粋)
攻め 1 ビジネスモデル戦略 守り 1 組織戦略
2 新規事業戦略 2 経営システム戦略
3 開発戦略 3 人事戦略
4 マーケティング戦略 4 財務戦略
5 ブランディング戦略 5 DX戦略
6 オープンイノベーション戦略 6 エンゲージメント戦略

図表1


図表1に攻めと守りの二軸から、代表的な戦略を一部抜粋して記載してみたが、ビジネスモデル戦略やマーケティング戦略、組織戦略や人事戦略、財務戦略と同じレイヤー(同じ位置づけ)で各社における「エンゲージメント戦略」の落とし込みを検討頂きたい。


具体的には、仕事エンゲージメントと組織エンゲージメントの観点からアプローチすることが効果的である。


仕事エンゲージメントとは「仕事と個人の関係性」を指し、職務内容や各職種に対するやりがい・熱意を指す。
一方、組織エンゲージメントは「組織と個人の関係性」を指し、組織に対する愛着心や理念やビジョンに対する共感度合い、心理的安全性に対する認識度合いを指す。


当然と言えば当然であるが、ビジネスモデルと向き合うのも、マーケティングを実践するのも組織戦略や人事戦略を落とし込むのもすべては「人」であり、「人」の動機が能動的であるか受動的であるか、「人」の価値を最大限に発揮するための環境が整っているのか、それとも劣悪な環境なのかで大きく成果は変わると言い切れる。


言い換えれば、「エンゲージメント戦略」はすべての戦略の土台となるKFS(重要成功要因)であることを理解いただけるだろう。

エンゲージメント戦略の実践における留意点

さいごに、エンゲージメント戦略の実践における留意点を紹介しておきたい。
それは、自社のエンゲージメント戦略を経営層(ボードメンバー)や管理職のみで考えることの無いようにである。


可能な限り、あらゆる階層の人材を横断的に取り込み、自由闊達な対話や健全な議論の中から、自社にとって最適な戦略オプションを意思決定頂きたい。


本コラムが人的資本経営の実装に向けた一助になれば幸いである。

この課題を解決したコンサルタント

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