人事コラム
企業内大学(アカデミー)

タレントマネジメントシステム導入における実務的課題とは
~課題解決に向けた具体的アクション~

戦略人事における頼もしい武器「タレントマネジメントシステム」を正しく活用するために必要な準備とは

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自社の人事データにおける現状を見極め、
課題とゴールを見据えてシステム導入を進めること

タレントマネジメント導入の3つの実務的課題

タレントマネジメント導入の3つの実務的課題

本稿前編では、タレントマネジメントとは何か、およびデータ管理とデータ活用の違いを解説しました。本稿後編では、マネジメントシステム導入における3つの実務的課題


①「そもそもシステムに入力するデータが社内にない」
②「システムからほしいデータが出ない」
③「正しい分析結果が出てこない」


を説明しました。後編では3つの実務的課題の解決に向けた具体的アクションを解説します。

課題①「そもそもシステムに入力するデータが社内にない」

課題①「そもそもシステムに入力するデータが社内にない」

まずは1つ目の実務的課題は「そもそもシステムに入力するデータが社内にない」ことです。
タレントマネジメントシステムの導入により実現できることの1つに、社内の人事データの分析が容易にできるようになるというものがありますが、分析するためにはその基となる人事データが必要であり、それがないことにはいくらタレントマネジメントシステムを導入したとしても、人事データ分析を行うことはできません。
何を当たり前のことを言っているのだ、と感じる方もいるかと思いますが、実際にこの課題にぶつかり、タレントマネジメントシステムの導入をペンディングしたという企業は少なくありません。


この課題の解決のポイントは、まず社内のデータ保有状況の確認をすることです。
以下の表は基幹人事データ(氏名、生年月日、性別等の基本的な人材情報)を除く、主な人事データをまとめたものとなります。タレントマネジメントシステムの導入を検討する場合、まずはこれらのデータが社内で保有できているかどうかを確認してください。


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図表1

出所:グローウィン・パートナーズにて作成


また、データの更新頻度の確認も必要です。
たとえデータを保有していたとしても、更新頻度があまりに少なく、古いデータしか保有できていない場合、そのデータによる分析は有効なものとはなりえない可能性が高いです。
もし社内に十分な人事データを保有できていない、もしくは保有しているデータの更新頻度が少ない場合、タレントマネジメントの導入検討の前に、まずは社内のデータ収集を進めましょう。

課題②「システムからほしいデータが出ない」の解決のポイント

課題②「システムからほしいデータが出ない」の解決のポイント

2つ目の実務的課題「システムからほしいデータが出ない」はタレントマネジメントシステム導入後に生じる課題です。
タレントマネジメントシステムを導入後の理想イメージとしては、以下図の左側(理想)のように、各システムからHRデータプールへ自動で情報更新され、そのHRデータプールにてデータ統合を行い、退職率、採用内定率、後任候補者といったほしいデータをいつでもシステムで確認できる状態をイメージされる方も多いかと思います。


しかし、現実は以下図の右側(現実)のように、人事データや勤怠データ以外のデータは紙で保管されていたり、そもそもデータの所在が不明だったりする状態から、人事部内のExcel職人と言われる人材がデータ統合し、報告資料を作成しているというケースが大半です。
そのため、タレントマネジメントシステムを導入したのに、システムからほしいデータがタイムリーに出てこないということが発生することがあります。


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図表2

出所:グローウィン・パートナーズにて作成


この課題の解決のポイントは2点あり、


1点目はシステム導入前に社内の人事領域における課題とその解決のために必要な分析内容やデータ活用例を明確にすることです。
タレントマネジメントシステム導入と同時に、全てのデータをタイムリーにシステムから抽出できるようにすることは困難なため、社内の課題とその解決のためにタレントマネジメントシステムで実現したいことを整理したうえで、タレントマネジメントシステムの構成を検討することが大切です。
それにより、本当に必要なデータはシステムからタイムリーに出力できるタレントマネジメントシステムを導入するができます。


2点目はシステム導入前にタレントマネジメントシステムの投資対効果を算定しておくことです。前述の通り、タレントマネジメントシステムを導入したとしても、人の手によるデータ処理が発生することが一般的です。
そのため、以下図のように現在のシステムで発生しているデータ処理にかかる工数と新システム導入後のデータ処理工数を算出のうえ、現在のシステムと新システムで発生するコスト(人件費・システム保守費用・システム費用)を算出し、新システムの導入によって得られる投資対効果を見極めることが重要となります。


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図表3

出所:グローウィン・パートナーズにて作成


課題③「正しい分析結果が出てこない」の解決のポイント

課題③「正しい分析結果が出てこない」の解決のポイント

3つ目の実務的課題「正しい分析結果が出てこない」も、2つ目の課題同様、タレントマネジメントシステムの導入後に発生する課題です。
タレントマネジメントシステムを導入し、システムへ社内で保有している人事データを取り込むことさえできれば、あとは各種分析結果がシステムから正しく出てくると考えている方が多いかと思います。
しかし、ここにも理想と現実のギャップが潜んでいるために実務的課題が生じます。


3つ目の実務的課題の要因は2点あり、1点目はシステムに取り込むための元となるデータの前処理が正確に実施されないために、取り込んだとしてもエラーばかり発生し、正しい分析結果が出てこないというものです。
エラーは、西暦と和暦の混在、漢字氏名とカタカナ氏名の混在、同じ人が複数の従業員番号を持っている等、様々な理由で発生します。


この場合、解決のポイントは社内の保持データのカタログを作成することです。
データカタログとは、以下の図のように、保持しているデータ(従業員マスタ、勤怠データ等)の保持期間、データ最終粒度、更新タイミング・頻度、保有システム等を一覧にまとめるとともに、保持データ内の各カラム(従業員番号、従業員名、生年月日等)の表示形式をまとめたものです。
保持データカタログを用意し、社内のデータの規格を統一することで、表示形式によるエラーは回避しやすくなります。
また、複数データを結合して分析する際は、保持期間の重複をチェックすることでデータの前処理の準備をスムーズにすることができます。


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図表4

出所:グローウィン・パートナーズにて作成


2点目の要因は、システムから出力される分析内容とグラフの組み合わせが適切でなく、分析結果が分かりづらいというものです。
分析内容とグラフの組み合わせが不適切な例としては、時系列で見たいデータが折れ線グラフではなく、棒グラフで表示される等が挙げられます。


この場合の解決のポイントは、システム導入前に可能な限り具体的な要件定義を作成することです。以下の図は要件定義のイメージ図になります。
集計方法やアウトプットイメージ、作成プロセスや作成担当者まで決定することができれば、システムから出力される分析結果が分かりづらい、何かイメージと違うということは、回避することができるでしょう。


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図表5

出所:グローウィン・パートナーズにて作成

さいごに

ここまでにタレントマネジメントシステムを導入する際に発生する3つの実務的課題と、その解決のポイントを解説してきました。
最後に、実務的課題の解決のポイントをまとめると、


①システム検討やタレントマネジメントシステム導入検討に入る前に社内のデータの保有状況をチェックすること
②人事領域で解決したい課題を明確にし、投資対効果を算定すること
③本当に情報がアウトプットできるのか、前処理工程を含めて検討すること


となります。ポイントを押さえ、ぜひとも戦略人事や経営判断に資するタレントマネジメントシステムの導入に繋げていきましょう。

経営方針・組織の変革と連関させた人事戦略の構築ポイントを解説
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この課題を解決したコンサルタント

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