人事課題解決ノウハウ

シニア専門人材が活躍する制度構築のポイント

シニア専門人材の積極的な登用による組織活性化

SCROLL

まずはシニア専門人材の働きがいのある職場環境づくりを行い、人材不足解消へと繋げる

労働者構成の変化に伴うシニア人材の重要性

企業規模問わず年々人材不足(求めているスキルを保有する人材が足りていない)感が高まっている背景には、少子高齢化に伴う生産年齢人口(15歳~64歳)の減少と老年人口(65歳以上)の増加が原因であると考えられる。実際に2010年の生産年齢人口割合63.8%、老年齢人口割合23.0%であったが、2021年では生産年齢人口割合59.4%、老年齢人口28.9%となっている。つまり、定年前(64歳以下)の働ける人材が減少しており、定年後(65歳以上)の人材が増加している。これは今だけでの話ではなく、老年齢人口は今後も増加する見込みであり、総務省が示すデータによると総人口の減少と相まって2036年には老年齢人口は33.3%となり、国民の3分の1が65歳以上の者となる。このような社会的な背景においてこれからも必要な人材を雇用し続ける為には、65歳以上のシニア人材を戦力として捉えていく事は必然である。
その中でも本コラムでは専門能力を保有している65歳以上の人材(以下シニア専門人材)にスポット当て、職場環境を創り上げるポイントについて説明する。

これからのシニア専門人材の働き方に対する制度構築のポイント

2021年4月1日より65歳までの雇用確保を義務付ける法律が施行された。そのことにより、社会的責任を果す事を目的とした「福祉的雇用」の色合いが強い制度となっているケースが多く見受けられる。今後ますます60歳以上の社員の占める割合が高まっていく中で、福祉的雇用を続けていけば生産性の低下を招く可能性が非常に高いと考えられる。更に年齢を理由に一律に賃金の引下げは、同一労働同一賃金の観点から更に厳しくなると考えられる。
そこでタナベコンサルティングでは、シニア専門人材に期待する職務内容や役割を処遇とセットで明確に定め、その要件に合致する人材をあてはめていく役割軸(ジョブ型)にした制度を推奨している。特に専門知識や能力を保有している人材に対しては、専門性の高さ、これまでの経験、求める成果に応じて柔軟に処遇を決定する仕組みが多様化するシニア層の働き方にもマッチし易いと考える。

シニア専門人材が活躍する制度運用の3つのポイント

ある一定の制度はあるものの最適な運用が叶えられていないケースも多い。ここでは、シニア専門人材が健康的にイキイキ働き続ける事ができる制度運用のポイントについて触れていきたい。

①役割(ジョブ)の定め方

シニア専門人材であるからこそ60歳以降の働き方や価値の発揮方法については自主的に定め上司との面談を通じて最終的に決定するスタイルを推奨する。その際に必ず会社(上司)から求める成果についても伝える必要がある。成果については可能な限り具体的に伝える事がシニア専門人材の仕事における目標を持ってもらう為にも重要である。

②上司の関わり方

シニア人材の仕事への関わり方は多様化するため、これまで以上のマネジメント力が求められる。まずは部下として受け持つシニア人材のキャリアや能力を知り、シニア人材への期待を明確にしておくことが重要である。40年以上の社会経験あり、自負とプライドがある中で安易な仕事だけを任せる事は大きなモチベーション低下に繋がる(本人が希望する場合は別)。先輩社員として敬いつつも上司として求める事や意見をはっきり伝えていく事が重要である。

③健康管理などの支援体制

シニア専門人材に活躍してもらう土台となるのが健康管理である。定期健診はもちろんながら会社側から健康状態について定期的にヒアリングする場を設けるなど、シニア人材が継続的に活躍できる職場づくりにおいては法令で定められている事以上の健康管理の支援が望ましい。他にも就業時間の見直しやメンタルヘルスケアを行う事も検討いただきたい。

さいごに

従来の制度と比較すると多くの場合、シニア制度の見直しにより人件費増える傾向にあると考えられる。人件費と生産性の観点から、社員一人ひとりの経験やスキルに応じて役割を決定し、正しく役割を発揮し貢献したものに対して、貢献に応じて処遇を決定する仕組みを構築する事が重要である。シニア専門人材のモチベーションとパフォーマンスの視点から制度構築を行って頂く事が、結果的に専門人材が集まる組織へと繋がり、人材不足の解消だけではなく様々な専門性が積み上がる組織へと成長する。

この課題を解決したコンサルタント

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