人事課題解決ノウハウ

企業内大学導入・運営成功事例 タイヘイ株式会社「リーダーシップアカデミー」

本コラムは、人事系専門誌 「月刊人事マネジメント」2023年3月号に寄稿した内容です。

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成長の課題は理念浸透とリーダーの育成

成長の課題は理念浸透とリーダーの育成

今回は、「食」に関わる製造・加工・販売から印刷、金融等に至るまで、幅広く事業を展開しているタイヘイ(株)の「リーダーシップアカデミー」をご紹介します。

同社は明治13年、千葉県で創業、醤油の製造からスタートしました。ここからの歴史はチャレンジの連続で、多様化する人々の生活や時代環境の変化、そして大切なお客様からのご要望などに応え続けるために、常に新しいことに挑戦し日々努力を重ねてきました。現在では、食品事業(調味料)、食材事業(食材宅配)、フード事業(魚肉・冷凍食品)、フレッシュデリカ事業(カット野菜)といった「食」の領域から、印刷事業(印刷・広告代理店)、信販事業(金融)を含めた6つの事業部を展開し、グループ関連企業は約80社、グループ売上は3、000億円を超える発展を遂げています。

成長の軌跡から読み取れる同社の特徴は、多角的な事業の展開です。企業を取り巻く経営環境はより一層変化のスピードが増し、そのなかで勝ち続けるためには、同社もそのスピードに合わせて成長し続けなければならないと捉えています。成長スピードを加速させるための経営戦略として取り組まれているのが、新市場・新事業への参入やM&Aによる事業の多角化(コングロマリット化)です。「卵を1つの籠に盛るな」という格言にならい、1つの業種・業態にこだわることなく、会社の成長・発展のため、そして日々変化するお客様のご要望に応えるため、ひいてはグループの安定と成長のために、経営理念の実践に加え、これまで永く受け継がれてきた質実剛健の社風を守りながら、さらなる事業拡大を目指しています。

多角化展開や新市場・新事業への参入により事業拡大を目指す同社ですが、大きく2つの課題に直面していました。1つ目は、同社が大切にしている経営理念の浸透や質実剛健という社風の醸成です。グループ会社や拠点が拡大するとともに、従業員も増加。それによる理念や社風の希薄化が懸念されていました。2つ目はグループ会社や新事業を牽引するリーダーの輩出です。グループ会社や新事業、拠点の数が増えても、これらを牽引するリーダーがいなければ停滞してしまうといった懸念が生じていました。

そこで同社は、上記課題を解決すべく、理念浸透・リーダー輩出を目的とした次世代経営者育成研修とリーダーシップ研修会を2015年よりスタートさせました。

次世代経営者育成研修とリーダーシップ研修会の概要

同社のリーダーを創出する仕組みは、大きく2つのカリキュラムで構成されています。(図表1)。

リーダーを創出する仕組み

次世代経営者育成研修 1つ目は次世代経営者育成研修で、将来企業経営を担える人材を輩出するための仕組みです。内容は経営理念の理解を深めるところから、マーケティング、事業戦略、組織戦略、マネジメントシステム、収益・財務戦略、そしてこれらを踏まえて最終的には自社・自事業部の中期経営計画の設計に至るまで、経営者として具備すべきスキルを高めるものです(図表2)。苦手意識の強い決算書の見方や経営分析も段階的に学んでいきます。


2つ目はリーダーシップ研修会です。これは、現在のリーダー層の強化に加え、グループ全体における将来の幹部候補者の発掘・発見の仕組みとして運用しています。内容はリーダーシップ、部下育成、問題解決、コミュニケーション、コンプライアンス、計数管理に至るまで、リーダーとして具備すべきスキルを習得させることを目的としています(図表3)。

リーダーシップ研修会

これら2つの研修は、2023年で9年目(次世代経営者育成研修2回、リーダーシップ研修会7回)。参加者は20名限定、スクール形式で運用され、1日×10ヵ月連続、集合型で実施しています。

リーダーシップ研修の3つの特徴

本研修の3つの特徴

本研修の特徴は以下3点です。

(1)振り返りテストの実施によって研修の理解度を図るとともに、受講姿勢を定量的に図る仕組みとして導入。テスト内容は、経営理念や今期方針、前回レジュメ内容、時事問題、計数問題といった構成。

(2)受講報告書を作成し、学んだこと、職場で実践することを整理し、次回までの取り組みの成果と課題をまとめ、上司に確認してもらったものを研修当日に発表。研修を進めながらも、実務で成果を出せる設計とした。

(3)スキルアップ講座には、過去の次世代経営者育成研修、リーダー研修の優秀者(モデル人材)を抜擢し、テーマに合った内容をその会社での経験・実績を踏まえて発表してもらう。講義はテーマに応じた着眼点やトレンドの話が中心。スキルアップ講座を加えることにより、メンバーがジブンゴトとして捉えられるよう工夫した。

リーダー育成「研修」から「カルチャー」の醸成へ

リーダー育成「研修」から「カルチャー」の醸成へ

本研修スタート時は、役員・事業部長からの推薦を経て、研修の参加者を意思決定していました。その後、従業員から「研修に参加したい」との声が挙がるようになり、現在では、役員・事業部長からの推薦に加え、手を挙げた従業員もリストに加えて人選を進めています。参画意識を高める取り組みのポイントは2つあります。

(1)社内報などを活用したインナーブランディング施策を展開すること(認知:従業員に知ってもらう)。

(2)研修参加者の社内での活躍(共感:昇格・昇進)。

これらが起因となり、研修への参画意識が高まっています。また、研修を通じて、実際にグループ会社の経営者や幹部陣も輩出されていることから、単なる「研修」に留まらず、リーダーが自然と輩出される「企業文化(カルチャー)」が醸成されつつあります。

皆さまも従業員に対して理解と共感を得る取り組みを行うことで、参画意識を高める「文化」作りへ挑戦されてはいかがでしょう。

この課題を解決したコンサルタント

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