人事課題解決ノウハウ

企業内大学導入・運営成功事例 株式会社プログレス「Progress Academy」

本コラムは、人事系専門誌 「月刊人事マネジメント」2023年3月号に寄稿した内容です。

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ベテランと若手が一体となり教え学び合う風土を実現

技能伝承の仕組み「Progress Academy」設立

技能伝承の仕組み「Progress Academy」設立

今回は、アルミ、亜鉛、マグネダイカスト製品および金型、治工具の製造・販売を展開している、㈱プログレスの「ProgressAcademy」をご紹介します。

同社は1954年に神奈川県川崎市にて創業され、カメラ部品を中心とする精密、薄肉ダイカストの生産を開始されました。カメラ全盛期は、一眼レフカメラのアルミボディ国内シェア80%を実現。
その後、後工程に至るまで一貫生産を目的に、山梨県都留市に本社を移転しました。カメラ部品の製造で培われた薄肉・高精度の技術力を強みとし、現在では自動車部品を主力としながら、産業機器、情報機器、家電部品等に至るまで、幅広い分野において大ロットから小ロットまで製品を供給し、着実に成長発展を成し遂げています。


年月が経つにつれ、同社が直面した経営課題が「技術伝承」です。前述の通り、同社の強みは薄肉・高精度の技術力であり、ベテラン人材の経験や知識、技能を次代のメンバーへ伝承する必要に迫られていました。
しかし、今まで人材を育成するための社内の仕組みはなく、ベテラン人材の背中を見て覚える、技術を盗むといった方法が主流でした。また、ベテラン人材と若手人材とのジェネレーションギャップがあったことから、うまくコミュニケーションを図ることすら難しい状況でした。

そこで同社の代表取締役社長・西村央氏は、設備投資が一巡したこともあり、人材に対する投資の模索を始めました。教育体系を設計できる会社、研修を実施できる会社、動画を製作できる会社などから情報を収集し、様々な人材育成の方法を検討するなか、企業内に大学を設立する「企業内大学」に注目。教育体系からコンテンツ製作に至るまで一気通貫でサポートが可能であり、コンセプトである「教え学び合う風土づくり」に共感し「Progress Academy」設立を決意されました。

あるべき姿・必要な技術をベテランと若手が議論

あるべき姿・必要な技術をベテランと若手が議論

「Progress Academy」設立を実現するためには、ベテラン人材と若手人材との融合が必要不可欠でした。よって、確かな技術力を保有している取締役クラスと次代のリーダーを担う若手人材の混成チームでプロジェクトを組成しました。スタート当初は、ベテラン人材が熱意を持ってプロジェクトをうまくリードしてくれましたが、若手人材が話を聞くに留まり、なかなか主体性を発揮できない状況でした。
しかし、プログレスの技術者として必要とされる技術の棚卸しから徐々に耳を傾けるようになり、コンテンツやカリキュラム設計では自分から名乗り出るなど、ベテラン人材とうまく噛み合うようになりました。西村社長もこの光景を見て、徐々に手応えを感じていました。


プロジェクトが進むにつれて、企業内大学のコンセプトや学部構成(各セクション)が確立していきました。特に苦労されたのは各学部のあるべき姿と必要となる技術の棚卸しであり、知識・技術の粒度・レベル感にはこだわりました。ベテラン人材はとことん細部に至るまで「こうあるべきだ」と熱意を持って語りかけ、若手人材も耳を傾けつつ、臆することなく議論を重ねました。ここにかなりの時間を費やすことになりましたが、結果として各学部の習得すべき知識・技術の棚卸しが完了し、まずは初年度に学ぶべき項目が決定しました。
今後はこの学ぶべき項目(シラバス)に従い、年間教育スケジュールを立てて、クラス別に社内勉強会を展開していく予定です。もちろん、講師はベテラン人材が中心となり、これを若手人材が学ぶというものです。
また、工場内でのオペレーション上、使用する設備関連については、紙でのマニュアルではなく、動画を撮影し、いつでもどこでも閲覧できる取り組みも同時にスタートさせました(図表1)。

図表1 「Progress Academy」クラスBの年間シラバス

「Progress Academy」クラスBの年間シラバス
業務とつなぐ単位制で立体的に運用

業務とつなぐ単位制で立体的に運用

年間教育スケジュールと動画を組み合わせることで、立体的に教え学び合う仕組みが構築されました。今後はこれを確実に運用することが重要です。運用していくうえでのポイントは、 1人ひとりの成長実感、キャリア開発の可視化です。
「Progress Academy」の最大の特徴は、「大学」同様に単位制を設けていることです。Academyの受講促進もさることながら、社内のプロジェクト活動や提案制度、講師出講、資格取得などにも単位を設けて、育成機会のみならず、業務とつなげて、立体的な成長実感を促しています(図表2)。

図表2 単位内訳

単位内訳
「Progress Academy」の今後

「Progress Academy」の今後

西村社長は、「Progress Academy」開講時の社員へのメッセージにて、「会社員の最低限の幸せは会社が続くことである」(先代から会社を引き継ぐ際に言われた言葉)と語っています。会社を存続させていくためには、「お客様、社員、協力会社、金融機関」が重要であり、なかでも自ら道を決め、高めることができるのは「社員」だとして、自分たちを高めることができれば、お客様に必要とされ、協力会社へも仕事を出すことができ、銀行からも必要とされるという善循環を描かれています。
「Progress Academy」というプラットフォームを活用し、「教え合い、学び合う」文化を築き上げることで、1人ひとりが成長し、持続的に成長を成し遂げる企業へと変革されることでしょう。

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