人事課題解決ノウハウ

企業内大学導入・運営成功事例
株式会社サンコウ・トータル・サービス「STS Academy」

本コラムは、人事系専門誌 「月刊人事マネジメント」2022年11月号に寄稿した内容です。

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教育ツールを体系化し人材育成を'ブランディング'

教育ツールを体系化し人材育成を"ブランディング"

今回は、貨物警備のパイオニアであり、関東エリアを中心に警備事業を展開している株式会社サンコウ・トータル・サービス(以下、STS)の「STS Academy」をご紹介します。
同社は1998年の創業以来、成田国際空港で爆発物検査や施設警備を担当し、日本の玄関口を守ってきました。グローバル基準の警備検査技術を有する警備のプロフェッショナルを多数輩出。国内外で警備の重要性が増すなか急成長を遂げています。

教育ツールを体系化し「Academy」を設立

教育ツールを体系化し「Academy」を設立

同社が創業20数年余りでここまでの成長に至った要因の1つに、徹底した社員教育が挙げられます。警備業は社会の安全を守るうえで欠かせない業種の1つであるため、研修の内容・実施時間等が警備業法で厳しく定められています。
STSではこうした基本に加え、国内の警備企業と差別化を図るべくTSA(米国運輸保安庁)と連携した教育プログラムを共有することで、国際基準の警備技術を身に付ける土壌を整備してきました。


最先端の教育システムを有するSTSが企業内大学である「STSAcademy」を設立した目的は2つあります。


1つは、既存の教育ツールをすべて体系化し、STSオリジナルの人材育成カリキュラムを"ブランディング"すること。


そしてもう1つは、急成長している企業の未来を見据え、新卒社員に対して将来の経営幹部としての素養とSTSで働くうえで大切にしてほしい価値観を入社直後から1年間かけて徹底的に教育すること。この2つを実践することで、採用→育成→活躍→定着のサイクルを回し、今後の事業拡大に向けてさらに人材の層を厚くする狙いがありました。

新入社員が安心して技術を身に付けられる

新入社員が安心して技術を身に付けられる

「STS Academy」の最大の特徴は、警備経験がゼロの人でも安心して技術を身に付けられる教育システムです。警備業法で定める「警備員教育(新任/現任教育)」(未経験者への新任教育は20時間以上、現職の警備員は年度ごとに現任教育を10時間以上)はもちろん、加えて6日間の資格取得対策を実施しています。
資格取得対策では担当講師が付き、学科と実技を徹底的に反復するため、国家資格である「空港保安警備業務検定」の合格率は非常に高い実績を上げています。


また、TSAと連携した教育プログラムにより、ベテラン社員も自身の技術に磨きをかけることが可能となっています。昨今ではK-9(警備犬)ハンドラーの育成カリキュラムを構築し、訓練の準備を進めるなど、新たな警備手法や技術を取り入れた教育カリキュラムを展開しています。
これらのオリジナルな教育体系をビジュアライズすることで、社員の学習意欲を向上させるとともに、未経験者でも安心して警備業務に応募できるよう、人材育成のブランディングを進めています(図表1)。


表1

出所:タナベコンサルティングにて作成


新入社員の自主性を育む

新入社員の自主性を育む

「STS Academy」では、特に新卒社員の入社後1年間の教育に力を入れており、月1回の勉強会を通じてSTSの価値観と社会人としていち早く活躍できる素養を身に付けるためのプログラムを設計しています。勉強会ではインプットがメインですが、OJTによるアウトプットのさせ方や、依頼業務の内容にも工夫を取り入れています。


まず、入社後半年は業務を2週間ごとに区切って管理と現場(警備)を繰り返しローテーションし、会社の仕組みや事業内容の全体像を理解してもらえるようなOJTを行っています。
加えて、全社のマニュアル作成や採用活動における業務、お客様との重要な会議への参加など、経営に直結する業務にも関与し、会社の課題や解決策を立案・実行してもらうことによって、当事者意識を醸成しています。
この取り組みが、新卒社員の急成長を実現している大きな要因であるといえます。

ホスピタリティ・サービスで全員主役の経営を目指す

ホスピタリティ・サービスで全員主役の経営を目指す

STSで働く社員の強みは、技術力に留まりません。1人ひとりが自身の業務を「社会の安心・安全を実現するホスピタリティ・セキュリティ・サービス」であると捉え、ホスピタリティ精神を持ってお客様や業務に向き合っているため、顧客が顧客を呼ぶ善循環な関係構築を実現しています。


警備業と聞くと「強さ」「厳格さ」がイメージされやすいのですが、STSが目指しているのは「温かさ」「気配り」を持って社会を見守ることであり、きめ細やかなコミュニケーションによって信用力を高めることが重要だと認識されています。


これまでは社長の目と声が届く範囲で、1人ひとりとコミュニケーションを取りながら社長の想いを伝えてきましたが、これから事業の拡大、採用人数の増量を目指すにあたり、改めてミッションと行動指針を明確にしました(図表2)。


表2

出所:タナベコンサルティングにて作成


決定したミッション・行動指針はオフィスや社員の手帳への掲載、または会議やAcademy勉強会のなかで全社員に共有してきました。


STSは、全社員が「日本の安全を守っている」という誇りを抱き、全員主役の経営で会社を成長させていくことを目指しています。その実現に向け、ミッションを体現する主体性の高いプロフェッショナル人材を1人でも多く育成していくことが今後の目標です。

TCG REVIEW 企業内大学
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